数学、ときどき統計、ところによりIT

理論と実践の狭間で漂流する数学趣味人の記録

ひずみテンソル

今回は物体の変形を表現するひずみテンソルについて見ていきたいと思います。

ユークリッド空間

初めに解析の舞台となるユークリッド空間の正確な定義を与えます。

定義 E を集合、V線型空間とする。次の条件を満たす写像の族 {τv:EE|vV} が与えられているとき、組 (E,V) を、基礎集合をE、同伴線型空間Vとするアフィン空間と呼ぶ。

  1. 任意の u,vV に対して τuτv=τu+v,
  2. 任意の P,QE に対してただ1つの vV が存在して Q=τv(P) が成り立つ。Q=τv(P) は通常、Q=P+v または v=PQ と表す。

V内積線型空間のとき、アフィン空間 (E,V)ユークリッド空間と呼ぶ。

 

ひずみテンソルの定義

(E,V) を3次元ユークリッド空間とし、V内積(,)V とします。ME の開部分集合とし、f:ME を変位を表す写像とします。さらに u:MVu(P):=Pf(P) で定義し、これを変位ベクトルと呼びます。さらに変位ベクトル uM 上で微分可能とします。つまり各 PMV 上の線型写像 (du)PLin(V,V) が存在して

u(Q)=u(P)+(du)P(PQ)+o(PQV)

が成り立つとします。さらに議論を単純にするために uC 級とします。このとき f(Q)=Q+u(Q)=(P+PQ)+(u(P)+(du)P(PQ)+o(PQV))=f(P)+PQ+(du)P(PQ)+o(PQV)なので

f(P)f(Q)=PQ+(du)P(PQ)+o(PQV)

となります。

定義(剛体運動) 任意の P, Q, RM に対して

(f(P)f(Q), f(P)f(R))V=(PQ,PR)V

が成り立つとき、f:ME を剛体運動という。

 

ここでは剛体運動ではない変位から生じる変形を考えます。(f(P)f(Q),f(P)f(R))V(PQ,PR)V=(PQ,(du)P(PR))V+((du)P(PQ),PR)V+((du)P(PQ),(du)P(PR))V+o(PQV2)+o(PQVPRV)+o(PRV2)であることに注意して以下の量を定義します。

定義 次で定義される E(P), EGL(P) をそれぞれ  PM における微小ひずみ、Green-Lagrangeひずみと呼ぶ。

E(P)(PQ,PR):=12{(PQ,(du)P(PR))V+((du)P(PQ),PR)V}=(PQ,(du)P+(du)P2PR)V,EGL(P)(PQ,PR):=12{(PQ,(du)P(PR))V+((du)P(PQ),PR)V+((du)P(PQ),(du)P(PR))V}=(PQ,(du)P+(du)P+(du)P(du)P2PR)V

 

注意 E, EGLC(M,(V)2) は対称な 2 階の共変テンソル場であることが直ちに分かります*1。また上記の定義は特定の座標に依存しない定義式になっています。

 

ひずみテンソルの座標表示

ここで(一般的な書籍で見られる)直交座標系を使った表記との関係を見ることにします。

PM における直交座標系を (x1,x2,x3)V の基底を {(/xi)P|i=1,2,3} とします*2。このとき (du)P((/xi)P)uxi 方向の偏微分係数と言います。

今、ui:MR1

ui(P):=((xi)P,u(P))V,PM

とすると(du)P((xi)P)=limh01h(u(P+h(xi)P)u(P))=k=13limh0uk(P+h(xi)P)uk(P)h(xk)P=k=13ukxi(P)(xk)Pとなります。よって

((xi)P,(du)P((xj)P))V=k=13ukxj(P)δik=uixj(P).

このことから PM の近傍で微小ひずみ EC(M,(V)2) について

E(P)((xi)P,(xj)P)=12(uixj(P)+ujxi(P))

が成り立ちます。よって {(/xi)P|i=1,2,3} に対する双対基底を {(dxi)P|i=1,2,3} とすると

E(P)=i,j=1312(uixj(P)+ujxi(P))(dxi)P(dxj)P

と書くことが出来ます。

*1:なお VV の双対空間を表します。

*2:微分幾何学の記号を援用します。