衰弱の座礁クジラ「見捨てられない」 救出巡り論争も ドイツ

沖合にえい航するための巨大な水槽に誘導されるザトウクジラの「ティミー」=独北部ペール島付近で2026年4月28日、NonstopNews/Schwarck・ロイター
沖合にえい航するための巨大な水槽に誘導されるザトウクジラの「ティミー」=独北部ペール島付近で2026年4月28日、NonstopNews/Schwarck・ロイター

 ドイツ北部の沿岸部で約1カ月前から座礁していたザトウクジラが28日、民間ボランティアが結成した「救助隊」によって助け出され、外洋へ向けて出発した。このクジラは病気とみられ、各地で座礁を繰り返したため地元メディアで大々的に報じられ、国民の間では人気者となっていた。一方で、人の手による「救出作戦」の是非を巡っては論争も起きていた。

 救出されたのは若いオスのザトウクジラで、体長は約10メートル。3月23日にバルト海に面した北部ティンメンドルファーシュトランドの浅瀬で座礁しているのが見つかった。自力で海に戻ったとみられるが、31日には北部ペール島近くでも座礁し、ほとんど動けなくなっていた。

 最初に現れた場所の地名にちなんで「ティミー」と呼ばれるようになり、多くの国民の関心を集めた。4月7日には専門家がティミーの健康状態を調べ、「衰弱しているのでそっとしておいた方がいい」との所見を述べたが、「見捨てられない」と抗議デモが発生。泳いで近づこうとする人も相次ぐなど、ちょっとした社会問題にもなった。やがて援助を申し出る資産家も現れ、ボランティアによる救助隊が結成された。

 救助隊は、録音したクジラの声を流して誘導したり、体の下にエアクッションを入れて引っ張ったりしようとしたが、いずれも失敗。そこで、難破船を運ぶ時に使う巨大な水槽にティミーを入れて、船でえい航する方法が発案された。

座礁したザトウクジラ「ティミー」を水槽に誘導するため海に入るボランティアら=独北部ペール島付近で2026年4月28日、NonstopNews/Schwarck・ロイター
座礁したザトウクジラ「ティミー」を水槽に誘導するため海に入るボランティアら=独北部ペール島付近で2026年4月28日、NonstopNews/Schwarck・ロイター

 28日には消防用のホースをティミーの体に巻き付けて引っ張り、水槽に誘導することに成功。船が水槽をえい航して北海に向けて出発すると、見物に集まった人たちから歓声が上がった。州政府もティミー救出を祝い、現地に記念碑を建てると発表した。

 だが、国際捕鯨委員会(IWC)の専門家は29日、独大衆紙ビルトに対し、「クジラにとって負担が大きすぎる」と「救出作戦」を批判した。沖合に戻しても「長くは生きられない」との見方もあり、救助隊の活動に対する疑問も投げかけられた。ティミーは数日のうちに北海で放す方針で、ザトウクジラの群れに合流することが期待されている。【ベルリン五十嵐朋子】

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