X投稿の表示回数が1分で激増 「スマホ農場」日本に運営グループか
大量のスマートフォンを並べ、クリックを自動的に繰り返し、SNS上で実態のないフォロワー数や表示回数を生み出す――。「スマホ農場」などと呼ばれる拠点が近年、サイバー攻撃や詐欺犯罪に使われた疑いがあるとして、米国やウクライナ、バルト三国のラトビアなどで相次いで摘発された。「日本にも『農場』はある」。そんな情報を得た取材班が関係先をたどると、国内で運営しているというグループに行き着いた。このグループの一員を名乗る男性が、匿名を条件にメディアの取材に初めて応じた。 【動画】摘発された「スマホ農場」と呼ばれる拠点 1月下旬。取材班はX(旧ツイッター)で出回っている1本の動画を見つけた。 何十台ものスマホがずらりと並び、それぞれの画面で別々の動画が再生されている。海外で稼働している「農場」の内部とみられる映像だった。 日本の捜査当局に取材すると「国内での摘発例は把握していない」という。しかし、私たちが接している情報空間がゆがめられているのではないかという懸念を抱いた。 取材班は、東京・秋葉原の電気街にある電気部品の専門店を巡ったり、中国・深圳にある「農場」の関連部品の卸売業者に接触したりしたが、実態はわからなかった。 ベトナムの「農場」を2020年ごろに現場取材したという海外のジャーナリストや、この分野に詳しい日本人のコンサルタントにも話を聞いたが、いずれも核心にはたどりつけなかった。 手詰まり感が漂う中、ある1本のユーチューブ動画を見つけた。 スマホ農場の仕組みを解説する内容だった。 投稿者は日本で大規模な「農場」を運営しているグループの一員だといい、関連する動画投稿を1月から始めていた。 記者がメールで連絡すると、名前を明かさない条件で話をしてもいいという。朝日新聞東京本社に現れたのは、「18歳で都内の高校3年生」を自称する男性だった。 「SNSのアカウントを教えてください」。そう促され、記者は自身のXアカウントのURLを伝えた。1分もたたないうちに、投稿の表示回数が8千件近く跳ね上がった。 「SNSの数値なら何でもすぐに増やせますよ」 作り出した再生数や表示回数を、人気や信頼、影響力を得たいユーチューバーや一般企業などに売るという。 年間の注文件数は「数千万~数億単位」といい、違法な手段に使われそうな注文は断っているという。 こうした「農場」が作り出すSNS空間について、国立情報学研究所の佐藤一郎教授は警鐘を鳴らす。「私たちが目にしている情報空間はつくられている。SNS以外の信頼のおけるメディアで情報の真偽を確かめる必要がある」
朝日新聞社