警視正が4年間「フキハラ」で部下“委縮” 「パワハラに当たり得る」弁護士が指摘も…“注意処分”で済んだワケ
フキハラの法的責任
暴言や暴力といった直接的な“攻撃”であれば、被害者は民事訴訟で慰謝料等の損害賠償を求めることもできるだろう。しかし不機嫌な態度や表情は、法的に責任を追及することも容易ではないと松井弁護士は話す。 「損害賠償請求をするとなれば、フキハラの事実を裁判所に認めてもらう必要がありますから、動画や音声など、多くの人がこれは損害賠償の対象になると感じるような証拠が必要です。しかし先にも述べたようにフキハラの判断は、その場にいなかった第三者にはとても難しいものです。 仮に証拠によってフキハラが認められたとしても、典型的なパワハラ事案よりも慰謝料は少額になるでしょうから、費用倒れになってしまう可能性も大いにあります」 他方で、職場の環境改善が目的であれば、弁護士が助けになれることもあると松井弁護士は続ける。 「依頼者がフキハラでストレスを感じているのであれば、弁護士が代理人となり、会社側へ加害者への指導を求める書面を送るなど、職場環境を正常化させるためのお手伝いはできると思います。その場合は、フキハラの有無を裏付けるために、裁判で必要とされるほどの厳格な証拠は必要ありません」
フキハラが招く組織のリスク
当然だが、処分が軽いからといって、フキハラは許容される行為ではない。 誰もが安心して発言や質問ができる状態を「心理的安全性」と呼ぶが、フキハラはこの状態を壊し得る。 部下が「上司の機嫌を損ねたくない」「相談しにくい」と感じるようになれば、重大なミスやトラブルの共有が遅れ、結果として組織全体が致命的なダメージを受けることにもなりかねない。 松井弁護士は一社会人の視点から、職場における「機嫌」の重要性をこう強調した。 「たしかに職場でニコニコしていなければならないという義務はありません。しかし当たり前の話ですが、自分の機嫌の良し悪しで、他人に対する態度を変えるべきではありません。仕事をしている以上、体調管理と同様に機嫌を整えるのも大切です」
弁護士JPニュース編集部