Pドル勢「あの女(鈴木羽那)ァ、どう思う?」
ファッションPドルだらけの中本物みたいな女が来たらしい
そんなに怖いか?新時代が……!!
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283プロの玄関へと向かう上り階段。その隣、いつの間にか増えていたという下り階段の先…
そこには悪の秘密結社があるとかないとか亡滅の地下帝国があるとかないとか花の桃源郷が広がってるとかないとか
1つ確かな事としては時々地下の階段の奥からヒソヒソとした話し声が聞こえるのだとか……
「あ、あはは……もうオワリダヨ…」
そんな地下の一室で甘奈は虚ろな瞳に消え入りそうな声を枯らしていた。
『―――ねぇ、ほら隣座って♪』
『―――プロデューサーいつか岡山に来てよ〜』
部屋の奥の壁に映されたプロジェクターからはつい先日新たなユニットとしてデビューする事となったコメティック、そのメンバーの1人鈴木羽那が映っている。……1人の男性と共に……しかもかなり距離が近いときている。
「やはり、此度の議題というのは…この女の事でございましたか…」
袖口から今にも鯉口をチラつかせるかのような厳かな声で凛世が事態の深刻さを語る。
「うんにゃ、清純で?方言で?透明感あって?スタイル良くて?距離も近くて?それでそれでー???」
「やめなよ三峰〜、色々な色てんこ盛りで真っ黒だって話でしょ〜?……てゆーかこれかなりクロだよね〜」
コメティックとはよく言ったものだ。
絶対純白領域と銘打った売り文句の対極にある彼女を睨めつけるよう三峰と摩美々も画面を睨んだ。
「ちょっと、透明感って私たちの事ですか?」
キャラが被ってるという流れ弾に円香は冷たい瞳を画面そのままに2人へ含みのある問いを放つ。
その隣では「てかこの会議いつぶりだっけ」と流れ弾に当たったのも気づかない透も見える。
「…やだなー、言葉の綾だから〜。こっちだって恋鐘に霧子、三峰と被ってるんだし〜。お互い様でしょ〜」
「…?え、ちょっと待ってよ、まみみん。こがたんが方言女子で思いっきり被ってるのもわかる、きりりんも純白ってとこでまぁ理解、……え、私は??カブッテナイヨ?」
「なにー?三峰、今や全員にメガネ付与出来るようになったんだから1番被るのは三峰でしょ〜」
「アーー!!?言った!言っちゃったね!?まみみん!もう許さないからね!?そんな事言ったらまみみんだって―――」
「ほわっ……み、皆集まってるね」
ユニット間どころかユニット内での同士討ちにヒートアップしかける室内。
熱気を沈めたのは283の最初のアイドル、その詩篇の一翼、そんな彼女の軽やかな口癖だった。
「あ、真乃ちゃんやほー」
「ほわ、透ちゃん♪」
集まったそれぞれのユニットの面々の中彼女に気のない軽い挨拶をかわせたのは透のみであった。
それは別に仲が良くないとか、各々に確執があるとか、同じ人を狙う間柄であるとかそういう話ではなく―――
―――それで?その人が “そう” なんだね
彼女が今回の件で1番の炎を滾らせているであろうからだ。
「ほわ、じゃあ、まずは概要から行こうかな…千雪さんお願いできますか?」
「うん、任せて〜。今回の議題は鈴木那羽ちゃん、皆知ってると思うけど最近できたコメティックの一員です。年齢18、身長は158、体重49、上から84.58.82で出身は岡山、てんびん座のO型、10月2日生ま―――」
「もういいっすよ、そんな知ってる事は」
千雪の説明を部屋の奥からクルクルと椅子ごと回りながら出てきたあさひが遮る。
「あら、ストレイライトからはあさひちゃんが来たの?冬優子ちゃんは?」
「プロデューサーさんのとこ直接文句言いに行ったっす、だから今回は私が代わりにこっち来たっすよ」
文句を言いに行く…という建前で絡みに行く。
何とも冬優子の考えそうな事だが「そんな手が…」等と一部の面々はその卑しき策謀に眉を顰める。
「羽那ちゃんがどうだとかはあーだこーだは知らないっす。大切なのは私たちがどうするかってことっすよね?」
そう、あさひの言う通りだった。
突如として来訪したこの超新星に対しどうするか、それが今回の核であった。
「こっちは向こうの事HP以上の事知らないっすけど向こうもそれは同じっす、だからこんなオイタをするんす」
「そうね……でもどうしたらいいかしら…」
皆が一同に面を下げる中、スッと静かに挙手をしたのは円香だった。
「向こうをこっちに取り込めばいい」
円香の一声に周りの面々は目を大きくさせ驚く。
「WHAT、円香ちゃん?」
「え、樋口、それ何も変わんなくない?」
「むしろ〜、敵が明確に増えるって事だよね〜?それー」
毒を以て毒を制す。
この集まりの性質はそれぞれが知るところ、周知の事であるが…鈴木羽那という毒すら取り込むというなら彼女は制限の範囲において好き勝手のできる免罪符を得ると言う事と同義ですらある。
あれよこれよと関係の崩壊を恐れ行ったり来たりを繰り返す中、素直に距離を詰められる彼女にとってそれがどれほどのアドバンテージなのか。
議会は白熱する中そんな意見も多く出された。
「……違う。取り込むのは、あくまでコメティックだけ」
「え、樋口、それ何も変わんなくなi」
「うるさい、浅倉……」
それ何も変わんなくない?botと化した透を無視して円香は続ける。
「鍵になるのは斑鳩さん。新興でできたユニット、ソロだったけど過去にはユニット経験もある。年下には結構面倒見がいい一面もあるらしいし業界的にも経験者だからかなり気を使うはず…そこであの人の事を女たらしとかミスタースケコマシとか教えて警戒心を煽る。元から邪険な感じもあるし、そうすれば鈴木さんがあの人に色を出しても斑鳩さんがカバーする形になる、はず…」
円香のだす案に議会は数刻の静寂。その後おお〜っ!と歓声と拍手が出ると称賛の声が続いた。議会の指針が確かな方向を手にしたのだ。
「……なるほどっすね〜。つまり羽那ちゃんにいつかの透ちゃん役、ルカちゃんにいつかの円香ちゃんの役をやらせるんすね!!めーあんっすね!」
合ってるは合ってるがそれだけに円香はあさひのまとめに苦い顔で口の端を歪ませた。
だが現実的にこの作戦の成功のイメージは想像に難くなく、決議の結果この案を承諾する形となった。
。
。
。
「で、なんだよ」
善は急げと言うらしい。
地下室での怪しげな集会、果たして彼女らが善なのかはさておき急いでいるのは目に見えるほどだ。
ルカはそんな地下室にあれよこれよと連れてこられ何処か不満げだった。
「えっと、ほわ……その…ユニット、どんな感じなのかなって……」
「あ?……それこんなとこで聞く話か??」
「ぴぇ……」
インナーに入った金色、鋭い眼光に多数のピアス。バチバチな見た目も相まってか議会代表も簡単に小糸化する。
「あの人のこと気にかけていた方がいいって伝えておきたくて」
「お、仲良しこよしグループじゃねぇか。……あの人?って、ああプロデューサーの事か…」
「うん、プロデューサー、スケコマシなんだってさ、やばいよ」
小糸化した真乃を円香と透がカバーするとルカは何となくだが話がのめたらしい。
が、ニヒルに笑うとルカは彼女らの言葉に唾を吐く。
「はっ、それでわざわざ。……ホントどうしようもねぇな」
「斑鳩さん、凛世は…少々鈴木さんはお転婆が過ぎる様に思います。…秘すれば花、という言葉も―――」
「じゃあ墓場まで秘してろよ。墓前に備えてやるよ」
「………………💢」
鋭すぎるキレのカウンターを食らった凛世は固まった笑顔のままゆっくりと袖口に手を入れたが慌てた周りに抑えられた。
鯉口どころか拳銃でも飛び出してきそうな動作だ。これが本当の和洋折衷……いや違うかもしれない。
「まぁ…別に勝手だけどそもそもだって話だよ」
「……どういう意味」
凛世達の殺気に満ちた雰囲気にルカはため息を零すとその圧に勝るとも劣らない声で話を続ける。
「アイツがお前らをアイドル以上にも以下にも見ることはねぇって話だよ、こんな集まり作ったって傷の舐め合いにもならねぇだろ。誰かアイツとヤッたってのか?何処まで進んだかって?どうせずっと停滞状態なんだろ?そもそもが勘違いなんだよ」
「か、勘違いじゃないもんっ!甘奈、本気で……!」
「本気で?やって?何処までいったんだ?お前ぐらいの歳じゃ少し上の社会人が嫌に魅力的に見えるだの恋だのはザラだってんだよ」
「……へ〜。斑鳩さんって〜けいけんほーふなんですね〜」
「なんだお前、ファッションは気が合いそうだけどどうせ処女だろ。気取るなら内側からやれよ」
「…っ!べ、別によくないですかー?」
「はっ、ガキ同士なら初めては〜っとかぬるい風ふかせるんだろうが、アイツぐらいならそんなの面倒に思うかもな」
「ぇ、まじ?やば……」
「樋口どーしよ、私まだ処女なんだけど」
「し……知らないから……」
「ほらな?お前らどうせ本気じゃねぇんだよ。幼なじみだかなんだか知らねぇけど、1年やってなんも進まない関係なんて勘違い、女同士でイチャイチャしてたらいーんじゃねーの?……ほら、エゴサとかしたことあるか?精々そっちに供給してろよ」
「……っ!」
「勘違いすんな、別にイジワル言うつもりじゃねぇしな。でもここまで長く膠着すんなら1回白紙にして考えるのもアリだってことだよ」
「アイツとの関係が壊れるとか、ユニでの関係がこじれるとか、そんなのが怖いとか言ってるとこから察しろよ。お前ら無意識に天秤に乗せてんだよ、アイツか、それ以外かで。それで今何もやれてねぇなら勘違いじゃなくてなんだってんだ?あ?」
ルカの言葉は鈍いナイフのように各々の心へ突き刺さった。否定できなかったのだ。
この前こんな事があったとか、あんな事があったとか、ポジショニングだけは得意にそれ以上は怖いと動かない彼女らは恋に恋するだけだと論され返せずにいた。
「じゃーこの後レッスンだから」と呼び出したのはこちら側、それなのに言う事だけはズケズケと言ったままルカは去っていった。
「……ど、どうする?」
「どうするって……三峰はPたんの事……」
煮え切らない関係を、片想いを安定と、勘違いというルカの言葉はそれぞれに違った傷をつけていった。
。
。
。
彼女らの集会から開放されたルカは周りを注意深く確認しスマホをとると慣れた手つきで割れた画面をなぞる。
何度かメッセージを送り既読がついたことを確認するとそれを耳に当てた。
「おう、はるきか?…羽那もそこにいるって?……ああ、予想通り向こうから話ふっかけてきた」
『―――?!―――?』
「ああ、まぁお子ちゃまにはキツい事言ったかもしれねぇからしばらくアッチは動き鈍くなんだろ」
「おう。…ん?ああ、勘違い〜とかだって言ったかな、確か」
「いや、間違った話でもないだろ。恋だの愛だのは全部勘違いだろ。…アイドルの魅せる夢とかそんなんも全部」
「でもよ、勘違いし続けんだよ。オッサンの印刷されたペラ紙に価値を付けて金だって言うみたいに、勘違いし続けたもんが本物になんだよ」
『―――?―――〜♪』
「……ああ、そうだな」
「これで新ユニと新人2人、アイツはこっちに付きっきりだろ。そして距離を測り兼ねる向こうの連中、この間に―――」
「『私たちがプロデューサーをもらう』」
電話の向こうでダブるはるきと羽那の声にルカは笑みを浮かべ確かな勝利の絵図を思い描きその欲望を言葉にする。
「ああ、アイツは私らのもんだ」
彼女達は…特に円香は何よりも己を知るべきだったのだ。自分の気持ちがどうだかだとか、その恋を本物と勘違いし続けるかどうかだとか、それ以上に……
ミイラ取りがミイラに、なんて円香が誰よりも知った事実なのだから。
めっちゃ好き(語彙力)