オタクのためのギャル入門
前回、『非リア・非モテは何故ギャルへのリスペクトが無いのに都合よく消費したがるのか。』という記事を書いたところ、大変大きな反響をいただきました。
ただ、いくらオタク層に『雑誌を読め』『本物のギャルを研究して解像度を高めろ』と言ったところで、そもそもファッションそのものに対する興味や関心が薄ければ難しいのだろう、とも思います。
そこで今回は、『ここを押さえておけばギャルイラストの解像度が上がる』という具体例を細かく解説しつつ、平成を代表する主要ギャルの系統を紹介した上で、それぞれのギャルをもっと知るためにおすすめの雑誌媒体も紹介したいと思います。
※あまり細かく書きすぎると覚えきれないと思うので、今回は最低限覚えておくべきポイントに絞ります。
● 平成を代表する主要ギャル系統
ギャルという言葉は80年代のバブル期に生まれ、当初は若い世代の女性を総称して呼ぶ言葉でした。おじさん的に言えば“ピチピチのねーちゃん”みたいな意味です。もちろん、今そんな言い方をしたら普通にセクハラですし、語源そのままの感覚で使っているのはもうおじいちゃん世代です。
90年代に入ると、おじさんのように麻雀やタバコをたしなむOL世代を指す『オヤジギャル』という言葉も生まれます。
しかし、ある歌姫の登場とブレイクによって、ギャルの定義は大きく塗り替えられました。
歌手・安室奈美恵の登場によって、多くの若い女性が彼女のファッションを真似し始めます。いわゆる『アムラー』の登場です。
髪色は黒から茶へと移り変わり、サーフ系ファッションや厚底ブーツに身を包む女の子たちが一気に増えました。
90年代はまだ、自まつげをマスカラで
バサバサに見せる方向が強かった。
でも2000年以降の高校生ギャルを描くなら、
つけまで目元の主張を強めに描いてあげてね。
そして、それとほぼ同時期に生まれたのが『コギャル』です。制服スカートのウエストを折ってミニにし、ルーズソックスを履き、アルバローザのショッパーやラブボートのミラー、ハイビスカスのアクセサリーなどが定番アイテムになったのもこの頃でした。
女子高生を中心としたコギャルは、またたく間にギャルブームを巻き起こす火付け役となりました。
その後、ついにみんながよく知るギャル、すなわちガングロやヤマンバが登場します。
ガングロは日焼けを強めたギャルで、今で言う『黒ギャル』に近い、色の黒い子たちの総称でした。
一方でヤマンバは、そこからさらにメイクもヘアスタイルも派手になり、ギャルサー文化とも強く結びついていきます。ギャルサーは非常に厳しい縦社会で、鉄の掟が存在し、日サロ通いが週3回義務づけられているサークルもありました。ミーツ(ミーティング)を念入りに行い、パラパラの全国大会であるキャンパスサミットに向けてパラ練(パラパラの練習)に励むなど、ファッション、ダンス、規律、そのすべてにおいてストイックにギャル文化を築いてきたのです。
そしてヤマンバをさらに派手にし、黒ギャルの最終形態とも呼べるのがマンバです。マンバはヤマンバよりさらに肌が黒く、アイメイクも濃く、つけまつ毛とアイライナーの強さも相まって、目が開いているのかどうかさえ判別しづらいほどでした。
とはいえ、ギャルはガングロのような黒ギャルばかりではありません。
2000年代に入ると、歌姫・浜崎あゆみのブレイクによって、美白肌とブリーチしたブロンドヘアを美徳とする白ギャルも一気に増えました。
とくに浜崎あゆみのパブリックイメージであるヒョウ柄や、『evolution』のミュージックビデオでつけていたフォックスファーのしっぽチャームは、白ギャル・黒ギャルを問わずギャルカルチャーの中で大流行しました。
その後、2006年に雑誌『小悪魔ageha』が創刊されると、キャバ嬢ルックの盛り髪を特徴とする、通称『age嬢』が登場します。メイクも服もセクシーな“小悪魔系”が主流となる時代の到来です。
この頃から黒ギャルは徐々に減少し、世間的には白ギャルの方が目立つようになります。しかし比較対象が薄れたことで、『白ギャル』という言葉自体は以前ほど強く意識されなくなっていきました。
また、ロリィタ的要素の強い『Jesus Diamante(ジーザスディアマンテ)』がギャル文化と結びついて人気を呼び、通称『姫ギャル』も登場しました。姫ギャルはこの当時、ギャルでありながら、バンギャや現在で言う地雷系とも地続きのファッションとして捉えられていた存在です。
そのほか、覚えておきたいギャルとしては以下のようなものがあります。
パギャル
中途半端で完成度が低く、ギャルになりきれていない自称ギャル。めちゃくちゃ嫌われていました。
汚ギャル
今で言う風呂キャンセル界隈に近く、パンツを何日も替えない、不衛生、部屋が汚いなどの特徴を持つギャル。
お姉ギャル
ギャルサーが二十歳で卒業となるサークルが多かったこともあり、ギャルの系譜を継ぎながら、大人の色気を備えたステップアップ型のお姉さんギャル。
まだまだありますが、とりあえず今回はこの辺で。
● ギャル語
ギャル独特の言い回しや、ギャルのあいだだけで通じる共通言語を、まとめてギャル語と呼びます。
たとえば平成ギャル語なら、
・パねぇ → ハンパない
・ファッキン → ファーストキッチン(ミーティングに使う)
・GKY → ごっつ空気読めない
・PKO → パンツ食い込んでおります
・KKK → かなり香水臭い
令和ギャル語なら、
・KP → 乾杯
・あせあせ → 慌てて汗をかいている様子
・ぴえんヶ丘どすこい之助 → ちょっとした悲しみ、嬉しさ、嬉し泣きなどを表す言い回し
(これはちなみに“ぴえん”が流行った時期の言葉で、今はもう流行っていません)
などがあります。
● パラパラ
ユーロビートやトランスミュージックに合わせて、両サイドにステップを踏みながら、手の動きを中心に見せるダンスがパラパラやトラパラです。
ちなみに、パラパラは基本的に真顔で踊ります。ヘラヘラして踊ると、先輩ギャルから『何笑ってんの?』とどつかれていた世界です。
しかし2004年頃から、ヤマンバギャルをはじめギャルサーへの新規入会者が減少したことをきっかけに、avex主催のパラパラダンス大会で、元パラパラオールスターズのメンバーでもある審査員のsatoko先生が、審査基準に『笑顔で踊る』という項目を追加しました。
これは、ギャルに対する親しみやすさを深めてイメージチェンジを図り、新たにギャルになりたいと思う子を増やすための試み、つまり文化を絶やさないための措置です。
これにより、現在のように笑顔でパラパラを踊るスタイルも許容されるようになりました。
● ギャルマインドについて
『ギャルマインド』という言葉の初出は2010年です。
電通の『ギャルラボ』が『日経トレンディネット』の連載で、『見た目はギャルではない女子にもギャルマインドがある』と書いたのが始まりでした。
要するに、これはギャルカルチャーの内部から自然に生まれた言葉ではなく、外部が分類のために後づけしたマーケティング言語です。
広告代理店が打ち出した言葉なので、現役ギャルや平成当時のギャル文化を知る人間、あるいは真剣にギャルカルチャーと向き合っているZ世代が、この『ギャルマインド』という言葉に違和感を覚えるのも当然です。
できるなら使わない方がいいし、『見た目が追いついていなくてもマインドさえあればギャル』みたいな雑な情報を広めないでほしい。
ギャルはビジュアルに命をかけてきた文化なのだから。
そして、「常にポジティブでいるのがギャル」などという間違ったイメージまで背負わせないでほしい。
ギャルだって悩むし、病むし、傷つくし、時には涙も流す、一人の人間です。
どうか『ギャルマインド』なんて外部の言葉で、ギャルから人間らしい感情を奪わないでください。
● デコる・盛るのDIY精神
平成ギャルは、どんなにかわいくないものでも、自分たちで上からかわいくデコる、盛るというDIY精神によって、力技で“かわいい”に塗り替えてきました。
それは単なる流行ではなく、ギャルカルチャーそのものの核であり、同時に日本のかわいい文化全体の発展にもつながっていきました。
ケータイも、ノートPCも、ミラーも文房具も、身の回りのあらゆるものを、ストーンデコ、スイーツデコ、ファーやジュエルでゴテゴテに飾り立て、自分の美学に基づいたオンリーワンのアイテムへと生まれ変わらせてきました。
ギャルの精神とは、こうした「どんなものでも自分好みにかわいく生まれ変わらせる」DIY魂の中にあります。
● ギャルを二次元で表現する時に覚えておくべきこと
ここまでギャルの基本的な知識を紹介してきましたが、ここからは、イラストや漫画のキャラクターとしてギャルを描く時に、何を意識すれば解像度が上がるのかを解説したいと思います。
言葉だけだとわかりづらいと思うので、ChatGPTに生成させた図も挟みます。
ギャルはまつ毛が命
何度も言うように、ギャルはまつ毛に強いこだわりがあります。二次元だとまつ毛はデフォルメされたり、省略されたりしがちですが、ギャルを描くなら絶対に削ってはいけません。むしろ少し過剰に、『描きすぎかな……』くらいがちょうどいいです。
唇は主張しない
平成っぽいギャルを意識するなら、唇は極力主張させない方がいい。赤リップなど論外です。
黒ギャルは白〜ベージュ系リップ。
肌の色より薄いくらいがちょうどいいです。
白ギャルはうすピンク系リップ。
肌の色にうっすらピンクが乗るくらい、と覚えておいてください。
髪は巻いた方がいい
ストレートヘアでもギャルとして成立はします。
けれど、ギャルの解像度が低い人は巻いておいた方がいい。間違いなく、その方がギャルらしい可愛さは格段に上がります。
手描きでヒョウ柄を描くコツ
手描きでヒョウ柄を描く時は、不揃いで歪なアルファベットのCのような形をランダムに描き、その中を薄い色で埋めるとヒョウ柄になります。
手描きでゼブラ柄を描くコツ
手描きでゼブラ柄を描く時は、不揃いで歪なアルファベットのVやYを横向きに描くとゼブラ柄になります。
モチーフに困った時は
黒ギャルならハイビスカスやプルメリア。
白ギャルならバラやクラウン。
そう覚えておくと便利です。
ネックレス、ピアス、頭のコサージュなど、あらゆるものに応用できます。
顔まわりに装飾が欲しい時は大ぶりなピアスがおすすめ
先ほどのモチーフを参考に、耳から垂れ下がるタイプの大ぶりなピアスを描いてあげると、一気に華やかになります。デカい輪っかタイプもアリです。
爪は長い方がいい
ギャルといえばネイル。作画コスト的に柄やパーツまで描き込めないなら、せめて色はワンカラーでもいいので、長さだけはしっかり出してほしい。
白ギャルはほどほどに長め、黒ギャルはスーパーロングくらいでちょうどいいです。
● 雑誌でギャルを研究しよう
少しは参考になったでしょうか。
さらに解像度を高めたいなら、やはり当時のギャル雑誌を読むのがいちばん確実です。
白ギャルが知りたい → 白黒混合の『Popteen』がおすすめ。
黒ギャルが知りたい → 『egg』『Ranzuki』がおすすめ。
age嬢・姫ギャルが知りたい → 『小悪魔ageha』『BETTY』がおすすめ。
※BETTYには、伝説の『昇天ペガサスMIX盛り』も載っています。
ヘアスプレーで固め、羽や造花、蔦などで装飾する、
ギャル史に残る伝説的な盛り髪である。
お姉ギャルが知りたい → 『S Cawaii!』『nuts』がおすすめ。
● さいごに
オタクが解像度の高いギャルを描けたら、それは普通にかっこいいし、むしろ今までになかった作品を生むはずです。
せっかく描くなら、雑な空想ではなく、文化への理解と敬意が伝わるギャルを描いてほしい。
漫画やアニメから、ギャル文化への理解を深めた作品が生まれることを期待しています。
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