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売れると思った漫画が打ち切られるまでの流れ

前置き


コミティアに来てくれた方ありがとうございました!
まーじーで楽しかったです。初参加の感想をエッセイ漫画で描いている途中です。よかったら後日アップしますのでそちらも読んでください~!


私はふだん漫画原作者として活動しているんですが
note上では、商業漫画のことには触れないようにしてきました。
理由は今やっている商業作品が女性向けのラブコメなんですが、それが自分にとってだいぶ異質だったといいますか……
普段は青年誌向けの作品を制作しており、サイバーパンクの趣味ともかけ離れすぎているので
noteの記事を読んでくれた人が混乱してしまわないように、ここではあえて触れないようにしてきました。


で、その商業作品が打ち切られてしまいました。

正確には今月号のゼノンという雑誌で最終回が載って終わりの予定です。
ただコメントで応援してくれたり、何通もファンレターもいただいて、結末を楽しみにしてくれていたファンの方もいたんです。それが1番申し訳が立たなくて、しんどいです正直。

そこで今回は、おもに読者の方に向けての申し開き…という訳ではないですが、今回の連載について思ったことをつらつらと書いていきます。別に漫画を読んでなくてもこの記事を読めるようにはなってます、多分。

エンタメ的に、打ち切り作家の断末魔でも聞かせてやろうかと思ったんですが、今回は謝罪の意味も込めてそこそこマジメに語りました。

連載立ち上げ時はしんどさしか感じてなかった


今回の連載作品『ハイスぺ婚にもほどがある』(以下ハイスぺ婚)は、編集部から「こういう企画を立ち上げたのでやりませんか」という打診から始まりました。
話によると、既にその企画が連載することは決まっているとのこと!
それでストーリーを描ける原作者を探していたらしく、なかなかに珍しいパターンでした。
すでに連載が決まっている企画なんて、さぞ面白いんだろうと期待を膨らませ、私はその企画に飛びつきました。
そして編集部の書いた企画書を読みました。

愕然とするほどつまらなかったです。

例えるなら「かぐや様は告らせたい」という漫画の企画(面白さ)を説明するとき、「生徒会の男女がきゅんきゅんする漫画」とか言われても「ハァ?」ってなるじゃないですか。
そんな感じの企画書でした。

ただ企画書にあった「偉人×恋愛リアリティーショー」っていうコンセプトは分かりやすくてすごくいいアイディアだなと思いました。そこで私はコンセプトだけを残して、それ以外を全部無視して漫画を作ることにしました。


このハイスぺ婚、マジで準備が大変で連載開始までに1年半かかりました。
歴史も偉人も恋リアも全く詳しくないので「偉人を誰にするか?」というところから始まり、共感性羞恥に耐えながら「バチェラー」「バチェロレッテ」を視聴し、偉人一人当たり本を2、3冊読み、キャラクターに落とし込む作業で1年近く。

編集部が「偉人は日本人を多めにしましょう」と言ってきたくせに、なんとかキャラクターを用意したら今度は「連載会議に出したら、編集長から日本人多すぎと言われたので減らしてください」とか言われて。一人キャラ作るのに本を何冊読まなきゃいけないと思ってんだコノヤローってね。
しかもここまで無給ですからね。貴様らの膵臓を食べたい。


んでストレス値が限界をむかえながらネームとキャラがやっっっと形になってきたところで、作画担当の先生が決まったんです。ななお先生。驚くほど絵ってか漫画が上手くて、地獄の中で初めて希望を見出しました。

特に嬉しいなと思ったのは、キャラデザやネームをななお先生自身の解釈に落とし込んでくれること。だからキャラデザも初期案とは結構ちがうし、ネームも改良してくれる。
「私が考えたキャラデザやネームにちゃんと向き合ってくれている!」とか思って、本当に嬉しかったです。

担当編集の反応も、ななお先生が絵にしてくれた時から分かりやすく態度が変わりました。この連載…売れるんじゃね⁉みたいな期待感が高まったといいますか。
私もそう思いましたね。いける!いけるぞ!と追い風を感じていました。

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この絵をみて期待しないほうがおかしいだろっていう。


それに……、自分の中で「絶対売れる!」と確信したことがもう一つありました。

『ハイスぺ婚』のテーマは、「愛とは相手を知ろうとすること」


『ハイスぺ婚』のテーマは、「愛とは相手を知ろうとすること」です。
恋愛経験に乏しく、恋愛漫画もあまり通ってこなかった私ですが、なんとかこのテーマを絞り出しました。
このテーマにした理由は二つ。

一つ目は、偉人に関する本を読みこむにつれて「偉人」に対する私たちのイメージが、だいぶ勝手なものだったんだなと気付いたこと。
歴史に名を残した人物たちはみんな、私たちと同じように、苦悩や葛藤を抱えていました。けれど、私自身もかつては名前と業績だけで彼らを知ったつもりになっていました。
それって、もし本人からすれば、まぁ~~~~失礼な話ですよね。

だから漫画の中で、偉人たちの“人としての側面”――つまり、誰にも言えない悩みや過去に触れていく構成にしました。相手を理解しようとする過程そのものが、愛情を育てる物語になると思ったんですね。

もう一つの理由は、私自身の経験です。
私は10代の頃に母を亡くし、父とは15年以上絶縁状態。
両親のことを、極端な言い方で説明すると、私の学校の成績しか関心がないような人たちでした。
両親は私が漫画家に内心憧れていたことも、今漫画家として描いていることも夢にも思っていないでしょう。(理想的な子どもであることを押し付けられるような経験は、私に限らず多くの方が経験していそうですが。)
両親とのコミュニケーションのあまりの取れなさに、誤解の多さに、なんか色々諦めまくっている子ども時代でした。

そんな感じで周りに理解されないことが当たり前だったためか、今でも私は誰かとコミュニケーションをとることを早々に諦めてしまうクセがあり、この前も夫に怒られました。今はそうならないように、意識的に生活しています。
だからこそ「愛=理解しようとすること」は、私にとって本当に描きやすいテーマでした。

当時の私の感覚が伝わるでしょうか。
要するに、漫画の題材に対して、偉人に対する誤解と、私個人の経験がガップリ噛み合う感覚があったんです。全部が線になってつながる感覚といいますか。
そしてさらに加わるななお先生の美麗作画。
正直うまくいかないなんてありえないと思いました。
大きなチャンスはもう目の前であり、近い未来の池袋はハイスぺ婚のグッズで埋め尽くされることになるだろうとほくそ笑みました。


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「愛=相手を知ろうとすること」というテーマは、昔読んだ小説から借りてきています。


打ち切り


結果ですが、はい、ふつーに打ち切りとなりましたとも。

もう発狂です。当時は
「無給で働いた私の1年半を返せよ!!!なあおい!!!!いいよなお前らは毎月毎月給料出て!!!どうせ仕事帰りに吉祥寺でお洒落な家具買ってんだろ!!?ボーナスまで待つかローンにするか悩んじゃったりしてんだろうおおおおおん!!!!」みたいな感じでした。
八つ当たりしてすみません。編集部は夜遅くまで働いてるらしいので家具買ってる暇はないと思います。

さらに最悪なのは、残り3話で絶対に畳みきれない設定ということ。
物語は「バチェラー」のような構造で、13人の偉人がちょっとずつ脱落していって最終的に一人が選ばれるという話なのですが、まだ残り9人いる。
もうね、無理だろと。
それでも満身創痍になりながら、担当編集にも手伝ってもらいながら最後はなんとかまとめられたんじゃないかなと思います。

打ち切りの原因はいろいろ考えたりしましたが、まぁ「ニーズ」の一言に尽きるよなぁ~と思いますね。
記事では「いける!売れる!」とか書いてましたがそれはクオリティに限った話で、ニーズ的には最初から「大丈夫か…?」と不安ではありました。
「北斗の拳」「シティハンター」が主軸の雑誌ゼノンで、女性向け逆ハーレムものをやるとか…正気っすか?と。
まぁ、ゼノンとしては女性読者を増やしたいらしいので、我々が鉄砲玉になったってところですかね。即死だったけども。

それでもなんにせよ、誰だったか言っていた
「漫画がコケたら原作者のせいで、ハネたら作画担当のおかげ」
っていうのは肝に銘じてます。
最後まで物語を描けなかったこと、力が及ばなかったこと。
各方面の皆様に対し、大変申し訳なく思います。

まだ読んでない人で、興味湧いたらちょっと読んでみてください。そこそこ無料で読めます。


それでもいい経験になった


振り返ってみると
今回の連載では応援コメントやお手紙をいただいたりファンアートを描いてくださったりと、少なからずファンの方が反応・応援してくれたのが本当にありがたかったです。
慣れない女性向けの展開に苦しんでいるうちに自尊心が下がっていくんですが、読者のいい反応をみるたびに「やっぱそうだよね!!?私面白い漫画描けてるよね!!!???」みたいに即座に回復してました。
しかもこの前のコミティア、ファンの方が来てくれたんすよ……ついでとかじゃなく、私に会いに来てくれたんですよ……あれは本当にむせび泣いた……
これからも頑張ろうって本当に思えました……!


それからもう一つ。
ハイスぺ婚は自分では絶対に一生思いつくことがない題材の組み合わせでしたが、ちゃんと漫画として描けたのが自信につながりました!
よく「漫画は自分の好きなものを描け」と言いますが、ありゃ嘘です。
最初は興味がなくても、その題材について一生懸命勉強するとだんだん面白くなってくるもんで。

面白いと思えるようになるまでの勉強期間はさすがに苦痛でしたが、逆に言えば「痛み」さえ引き換えにすれば「好き」に匹敵するものを描けるんだなぁと。
「自分の好きなものを描け」は漫画家にとっての言葉の呪いになりかねないし、結局天才にしか許されない話だとも思うので……
今後につながるいい経験をさせてもらったなと思います。

そんなワケで、今回の連載はよくない結果に終わってしまいました。
が、諦めずに次回作も頑張って作っていこうと思います。
変わらぬ応援をどうぞよろしくお願いします!
長文になりましたが、ここまで読んでくれてありがとうございました。



記事として分かりやすくするために、担当編集をスケープゴートにしてボロクソ書いてしまいました。ごめんなさい。本当は優秀な人です。
でも「日本の偉人減らせ」は一生許さねーぞ。

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コメント

4
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nice_gerbil2313

私の好きな絵師さんがこの作品をオススメしていて読んでみたんですけど、とっっっっっっても面白かったです‼️‼️どうしてこんなに偉人に詳しいんだろうと思っていたのですが、先生自身もたくさん調べてキャラクター1人生み出すのに多くの時間をかけていたのですね🥹とても尊敬致します✨✨あんなに…

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susano

いや〜実在の偉人たちをバカにしていると捉えられかねない設定だったので、とにかく彼らへの敬意を示すために必死に勉強しました…。そういう風に褒めていただけて頑張った甲斐がありました!ハイスペ婚を読んでいただき、ありがとうございました!

雑草の植木🪴のプロフィールへのリンク
雑草の植木🪴

ちょうど最終巻を購入しようとして検索したら発見致しました、読者です。 え〜この人数で終わるの!?と驚きでしたがそんな背景があるとは知りませんでした....。 完結おめでとうございます。なおちゃんでしたり、偉人当人でしたり設定でしたり、とても愛を感じた作品でした。 次回作、追います!…

susanoのプロフィールへのリンク
susano

わー漫画も日記も読んでくれたようで、ありがとうございます! 愛を感じたと言ってくれてめちゃくちゃ嬉しかったです。 これからも気持ちを込めて漫画を作っていきます、また読んでやってください!

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売れると思った漫画が打ち切られるまでの流れ|susano
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