インタビュー

第23回悩んでるだけじゃ始まらないよ! 千賀光莉、あんなと踏み出す一歩

聞き手・照井琢見
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 連載「キュアット解決!」では、放送中のアニメ「名探偵プリキュア!」(ABCテレビ・テレビ朝日系、日曜朝8時30分)のキャストが月に1度、思いを語ります。

 4月末は、明智あんな、そしてキュアアンサーを演じる千賀光莉さんが再び登場。新年度が始まって1カ月、新天地で頑張っている人も多いのでは。「たんプリ」の現場で先輩声優の背中を見て奮闘する千賀さんが心がけていることを、たっぷりうかがいました。

     ◇

株式会社ファントム?

 新しい場所では、まず一緒になる仲間一人ひとりが、どんな性格をしているのかを把握することから始めます。子どものころは、最初からグイグイ行きすぎることもあったので、大人になってからは気をつけているんです。

 あんなちゃんも、子どものころの私と似たところがあって、グイグイとコミュニケーションを取るタイプだと思います。

 第1話で1999年にタイムスリップして、出会ったばかりの小林みくるちゃんにも、垣根なく声をかけていました。推理に行き詰まって落ち込んでいるところに、「悩んでるだけじゃ始まらないよ!」と言ってしまえる。相手の悩みを飛び越えて、その手を取ることができる子ですよね。

 私は、コミュニケーションを重ねるなかで、その人がどんな考えをお持ちで、どんな雰囲気で、そしてどんな頻度で会話するのが好きな人かな、と見極めたいと思っています。

 「たんプリ」の現場にいらっしゃるのは、私にとっては皆さん初対面の方であり、憧れの先輩方でもありました。「まずは失礼のないようにしよう」という思いが、頭にありました。

 キュアアルカナ・シャドウ役の東山奈央さんは、和気あいあいとおしゃべりするのがお好きな方。キュアミスティック役の本渡楓さんは落ち着いていて、おひとりで静かに集中されている時もある。

 ……という感じで探ってみましたが、いざお話ししてみると、おふたりとも優しくて、「どんどん話して」という感じでした。そんな過程を経て、皆さんと打ち解けていけたように思います。

 この現場では、みんなが会話に交ざれるような雰囲気を作ってくださる方がたくさんいらっしゃいます。

 最近は、ウソノワールを演じる日野聡さんを中心に、「株式会社ファントム」の話で盛り上がっています。

 名探偵プリキュアと対峙(たいじ)する、ウソノワール率いる「怪盗団ファントム」のことなのですが、収録ブースの中で私たちは勝手に、「ファントムは実は株式会社だった」という設定を作って、おしゃべりしています。

 例えば、ウソノワールは社長で、ニジーやゴウエモンは外回りの社員。失敗を重ねたニジーが、奈落へと沈められようとする場面がありましたが、それも私たちの間では「外回りが大変そうだから、向いている部署へ異動になったんだね」と(笑)。実はウソノワール社長の配慮だったという話になっています。

 出演者もスタッフの皆さんも楽しんで作っている。そんな和気あいあいとした雰囲気は、見てくださる皆さんにも伝わっているのではないかな、と思っています。

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先輩の技術は短い音節に宿る

 現場の空気をどう作るか。どんな振る舞いや姿勢で臨むか――。先輩方の姿を間近で見ることができる、1回1回の収録が、私にとっては大切な学びの場になっています。

 一人ひとり個性豊かで、決めるところでちゃんと決めてくれる先輩方です。

 第11話に登場した、宝生美術館の宝生ちなみオーナーを演じる恒松あゆみさんのお芝居は、本当にインパクトがありました。

 美術館の階段を下りて、あんなたちに近づく場面。台本に特に指示はありませんでしたが、恒松さんが「スタスタスタスタ……」とアドリブでしゃべっていました。

 宝生オーナーが近づいてくる圧を「スタスタ」と口に出して表現する。なににも縛られない自由さで、こんな発想は私には出てこなかったと思って、感銘を受けました。「この域までいかないといけないんだ」と感じたんです。

 このアドリブだけではなくて、驚きのリアクションの一言だけでも、恒松さんが演じると迫力が違う。クスッと笑ってしまうような工夫がされていて、すごかったです。

 声優としては、セリフが長ければ長いほど、感情が込めやすくて、表現の幅が広がります。言葉を立てられる箇所が増えるからです。

 逆に言うと、音節が短ければ短いほど、前後の息遣いなどで工夫を凝らすしかない。そこには技術が必要だと感じます。

 第11話で、キュアアルカナ・シャドウの変身シーンも初めて披露されました。

 キュアアンサーとキュアミスティックの変身よりも、セリフはすごく少ないですが、東山さんは短いフレーズを落ち着いたトーンで決めていくんです。

 「シャッフル」「リバース」という言葉が、ぞわぞわするぐらい、いい決まり方で。声だけではなくて、そこに混ざる息遣いも含めて、東山さんの技術が詰まっているんだろうな、と思って感動しました。

 妖精のポチタンもまだ赤ちゃん。セリフはほぼ「ポチ」だけです。それなのに加藤英美里さんが発する「ポチ」の一言からは、あらゆる感情が伝わってきます。先輩が演じているのに「かわいい~」とつい言ってしまいます。

 短いフレーズと言えば、怪盗団ファントムが召喚するハンニンダー役の武蔵真之介さんもすごいです。毎回、ハンニンダーの見た目からインスピレーションを受けて、声を考えるそうです。

 登場シーンでは「ハンニンダー!」と名乗るのですが、裏声でビブラートがかかっている回があったり、「madmoiselle(マドモアゼル)」のようなイントネーションで名乗る回があったりと、毎回ニュアンスが違います。

 子どものころからプリキュアシリーズを見ていたのに、モンスターの声を毎話同じ人が担当されているとは知らなくて……。今回「たんプリ」に関わって初めて、専任の方がいらっしゃると知りました。今までの方もきっと、毎話ですごく工夫をされていたから、気がつかなかったのかもしれません。

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最も衝撃を受けたのは

 そんな先輩方を見れば見るほど、自分との技術の差を痛感して、悔しくなる瞬間も、たくさんあります。もっとうまくなりたい。もっとできるだろう、と思います。

 第1話での、本渡さんのお芝居には一番衝撃を受けました。演じる小林みくるちゃんのキャラクターが生き生きとしているんです。一言一言の表現に深みがあって、遊びがあって、みくるちゃんの人間味がすごく感じられる。

 「名探偵を目指す頭のよく働く子」だけではなくて、みんながみくるちゃんを好きになる要素が、本渡さんのお芝居によって生まれていると感じたんです。私にはまだまだ足りない点です。

 私の第1話のお芝居は、いま見返すと、その場を成立させることでいっぱいいっぱいだったな、と感じます。もっと色々な感情をのせられたな、こんな息づかいができたな、と悔しさが募ります。

 もちろん、自分として精いっぱいの表現をしているつもりですが、「あんなちゃん」として見てもらいたいのに、千賀光莉が出てしまったような感じがして。

 放送はリアルタイムで見ていますが、回を重ねるごとに、「だんだん、あんなちゃんになってきているかな」とは思います。それでも毎回、「表現しきれなかった」と思う部分はあって、悩みながら収録に臨んでいます。

 悩んでいる私を慰めてくれる言葉がありまして、それが第1話であんなちゃんが、みくるちゃんにかけるセリフです。

 「悩んでるだけじゃ始まらないよ! 一歩踏み出せば、答えはついてくる! 一歩の勇気が答えになる、だよ!」

 あんなちゃんを演じる上でのモットーになっています。

 悩んでいても、毎週収録はあって、新しいあんなちゃんの姿を見せなくちゃいけない。だから、とりあえずやってみる。悩んだら相談してみる。そんな風に考えて、取り組んでいます。

 本渡さんも、東山さんも親身になって相談に乗ってくださいます。スタッフの皆さんも、優しくてあたたかい現場なので、本当に支えていただきながら、あんなちゃんを演じています。

 第1話を収録したときは、私が思い描いた「理想のあんなちゃん」が頭の中にいました。ただ最近は、もっと未知数な魅力があって、それを発揮できる何かがあるんじゃないか、と思い始めています。

 それはきっと、皆さんのお芝居を見て、出てくるキャラクターのいろいろな一面に触れて、自分の中で「たんプリ」の世界が広がっているからだと思います。

 それに、お話が本当に面白いですよね。自分が演じるから、どうしてもひいき目になってしまうのでしょうか。この先、まだまだ描かれていないナゾが明らかになりはじめたら、「すごいことになっちゃうんじゃない?!」と期待をしています。

 私も、もっともっと素敵なあんなちゃんになりたい。あんなちゃんの色々な面を見つめることができるようになったら、本渡さんのように、深みも遊びもある表現をしたいです。

 新人なりにできることはいっぱいあると思うので、もっと成長して皆さんにお芝居をお届けしていきたいです。

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この記事を書いた人
照井琢見
文化部|映画担当
専門・関心分野
エンタメ、性をめぐる常識・偏見

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