いや艦これリアイベ、おっさんしかいねえじゃん
幸福な家庭はどれも似たようなものだが、不幸な家庭はみなその様を異にしている。
トルストイの一節から始めてみたけれど、何の話かというと「先月、艦これの佐世保リアイベに参加してきたよ」という話だ。
僕なりに楽しい思い出はいっぱいあるし、貴重な体験もできた。ただ、今回は特にそれについて語るつもりはない。そういった感想は既にたくさんの人が述べているし、noteだけで見ても何人もそうした記事を投稿している。今僕が書いたところでそれらと似たようなものが生み出されるだけだ。
であるならば、ここでは僕の ”不幸な家庭” を述懐してみたいと思う。先日の佐世保、特にアルカス佐世保で行われたライブでの体験談を軸に、最近のリアイベに感じている何かについて言葉にしてみたい。
幸せな体験談よりもそっちの方がおそらく幾分か有意義だろうからというのが一つ、この思いをそろそろどこかで吐き出しておきたいという気分になったのがもう一つの理由だ。
それでは以下に書き下していきたい。
1.僕は平成生まれ平成育ちなので
今回行われた佐世保鎮守府コラボ。その目玉の一つは恒例のライブイベントだ。佐世保だとアルカス佐世保で毎回行われていて、声優のトークや1MYBによる艦これ楽曲の演奏などが楽しめる。
さらに、艦これのイベントで特徴的なのはスペシャルゲストの存在だ。運営が独断でチョイスした、艦これとはほとんど関係ないような有名人がステージに登場する。
今回のスペシャルゲストはなんと、たいらいさお氏だ。
これ、同じこと感じた人は流石に僕以外にもいると思うし、かといってその感想は大っぴらには言いづらいことだろう。僕はそんな少数派の意見を勝手に代表して、ここできっぱりと明言したいと思う。
誰やねん。
たいらいさおって誰だよ。聞いたことねえよ。ググってみたら1980年代くらいの曲がいっぱい出てきた。まだ生まれてねえよ。
まあそうは言ったものの、世代じゃないからと言って批判するつもりはない。実際に聞いてみると凄く良い曲だった、というのはままあるからだ。あくまでファーストインプレッションとして前述のような感想を抱えながらも、佐世保ライブに参加した。
初日のライブには昼戦と夜戦の2回あって、僕は両方参加した。たいらさんは各回2,3曲ずつ、それぞれ違う持ち歌を披露されていた。つまり、僕はたいらさんの曲を都合4~6曲聞いたことになる。これも言いづらいことではあるのだけど、気をしっかり持って表明していこうと思う。
マ~ジで違いが分からん。
どの曲もだいたい一緒。同じような曲ばかり。上で曲数がうろ覚えだったのはまさにそれが理由で、どれも似たり寄ったりに感じられたので何を聞いたのかほとんど記憶に残っていないのだ。今Wikipediaを見ながら思い出すと、多分イデオンとかダイオージャとかブライガーは聞いた気がする(で、その3つって何が違うの?)
誤解してほしくないのだが、ここでは別にたいらさんのアーティスト性を批判しているつもりはない。歌い手側の問題ではなく、そもそもあの時代のロボットアニメの曲が全部似たり寄ったり(に感じられる)なのが原因だ。ブラスっぽい音のイントロから始まってサビでロボットの名前が出てきて最後にシャウトする、みたいな。どれも似たような音と似たような歌詞で構成されている。
もしピンとこない人がいるのであれば、例えばこちらの曲を聞いてみてほしい。
曲も歌詞も、まさに僕ら世代の感じる「あっ、なんか昭和のロボアニメっぽい!」だけで構成されている。平成以降にこうした昭和ロボアニソンがパロディされるくらいには、あの時代のロボアニソンには共通した特徴が強く認識されていて、それが個々の曲の識別を難しくしている。
もっと上の世代にも理解してもらえるとするなら、演歌なんかもそうだ。加賀岬を聞いて「演歌っぽいな」と感じるように、演歌っぽい曲調と演歌っぽい歌い方というのがある。その認識の中でそれぞれの演歌歌手の曲を聴いても「演歌だなあ」以上の感動は得られないんじゃないかと思う。年末に家族みんなで紅白を観てる時に演歌が流れてる時間帯のあの空気だ。艦これライブのスペシャルゲストの時間は、僕らにとって紅白で演歌が流れてる時間と同じなのだ。
……いや、スペシャルゲストの全てがそうだというわけじゃない。反例を挙げるなら、2019年佐世保の時の広瀬香美さんだ。
こちらも年代的には僕が生まれたかどうかくらいの人ではあるのだが、ゲレンデが溶けるほど恋したいやゲッダンなどはそれでも流石に知っている。(大変失礼ながら名前は全く知らなかったので、いざライブで聞いた時に「これこの人の曲だったの!?」と驚いたのは内緒だ)
どの曲もテレビの懐メロ特集で聞いたことはあったものの、実際に現地で聴いた生歌はテレビとは比較にならないくらいの迫力だったし、今でもたまにカラオケでロマンスの神様を歌うくらいには強く印象に残っている。必ずしも古い世代だからって受けつけないわけではない。
とはいえ、ロボアニソンとなると正直厳しいと思う。上で述べたようにどれもこれも金太郎飴のように同じで心に刺さりづらいからだ。
これはロボアニメファンの人に聞きたいのだけど、結局のところ、ああいったアニソンの良さって原作ありきなんじゃないか?アニメ本編のストーリーがあって、それとアニソンの歌詞が噛み合ってるから良い曲と感じてるんじゃない?実際、あの頃のアニソンは作品との結びつきが強くて、作品名がそのまま曲のタイトルになってたり、作品名や作品に出てくるロボットの名前が歌詞によく出てくるイメージがある。また、作品との繋がりが強いからこそ、曲そのものが似たり寄ったりでも他の曲と差別化ができるのだとも考えられる。
もしそうだとするならば、艦これライブでロボアニソンを聴かせて感動させるのは難しい。だって僕そのアニメ観てねえもん。
かといって、じゃあライブ終わりに原作アニメを観るかというとそれもない。だってそこまでするほどその曲が心のフックに引っ掛かってねえもん。そもそも曲を聴いて興味を持てていないのだからその後に観る訳がない。
率直に言わせてもらうと、昭和のロボットアニメを聴かされたところでその良さは絶対に伝わらないし、何がしたいんだといった感じだ。そういう意味で、艦これライブでロボアニソンを流すのは運営の自己満でしかない。まあ自己満なのは今に始まったことではないので今更とやかく言うつもりはないが、仮にC2機関として掲げる「本当によいもの、素晴らしいものを知ってもらいたい」というスタンスでやっているのだとしたら、流石にトンチンカンな行いであるとは言わせてもらいたい。
2.お前ら本当に艦これ好きなの?
さて、ここまでの話は多分に僕の感性に依拠する話ではあったので、「感じ方は人それぞれ」の一言で一蹴されても仕方ないかなと思っている。
本当に気になっているのはここからだ。
話を先日の佐世保ライブに戻す。
たいらいさおさんがステージに登場し、MCを行う。そしてこれから歌う曲を発表すると、「うおおおおおおおおおおおお!!」と提督達の野太い歓声が上がる。どんでもない熱量だ。両隣の提督などは「えっマジで!?」「生で聴けると思わんかった」と浮足立っている。きっとまあなんか凄いのだろう。知らんけど。
そしていざ、歌唱が始まる。
たいら「悪に染まりし者どもよ~♪」
提督「オーオーオー!!」
たいら「今こそその目でしかと見よ~♪」
提督「ヘイヘイヘイ!!」
たいらさんと提督達の息の合ったコール&レスポンスが始まった。
提督達の声は会場全体から張り上がっている。事前に何か説明があったわけじゃないので、ここにいる提督達のほとんどは元からこの曲を知っていたのだろう。
当然、僕は知らないのでとりあえず静観した。
ちなみに、これと逆のパターンも一度だけ体験したことがある。それは2024年呉のライブの時だ。
この時、スペシャルゲストに和楽器バンドの鈴華ゆう子さんが来てくれていた。
和楽器バンドといえば、最近のアニメのOPでちょくちょく見かけるグループだ。当時だと直近で刃牙のOPを歌っていたのが印象に残っていた。
さらに、今回歌う曲は千本桜。原曲の初音ミクの方ではあるが、僕も一時期ハマっていた程度には好きな曲だった。知っているバンドの知っている曲を聴く。それがまさか艦これのライブで成立するというのは完全に予想外で、ライブの席でいつになくテンションが上がったのを覚えている。
そして、鈴華さんの出番が始まる。
鈴華「日の丸印の二輪車転がし 悪霊退散♪」
僕「あいしーびーえむ」
提督「……」
鈴華「アイツもコイツも皆で集まれ 聖者の行進♪」
僕「わんつーさんし」
提督「……」
鈴華「千本桜~夜に紛れ♪」(ここで客席にマイクを向ける)
提督「……」
これな。
正直、だろうなと思った。君ら千本桜知らんよな。初音ミク聴かんよな。
まあこれは艦これのライブだ。別に知らないからって悪いことじゃない。ただ、この時のライブに参加した人達へ。それが僕らにとっての艦これライブだからな?
閑話休題。話をこの前の佐世保ライブに戻そう。
たいらさんの熱唱を終えてから、今度はもう一人のスペシャルゲストが登場した。艦これ1期OP「海色」で提督ならご存じ、AKINOさんだ。
まずは持ち歌である創聖のアクエリオンのOPを歌う。
AKINO「一万年と二千年前から愛してる~♪」
提督「俺もー!!!!」
これには歌う前のMCでAKINOさんから一言あって、「サビの『愛してる~♪」のところで『俺も!!』と返してほしい」とのことだった。たいらさんの時の興奮冷めやらぬまま、提督達は高いボルテージを維持しつつAKINOさんの熱唱に対して同じくらいの熱量で返していた。
しかもそれだけじゃない。今回は、アクエリオンと海色に加えて、艦これキャラソンの一曲である「暁の水平線へ」まで歌ってくれた。これはもう知ってるとか知らないとかそんな話じゃない。釣られて僕のテンションも否応なく上がる。
だってこれは艦これライブ。言ってしまえばこういうのが聴きたくてここに来たと言っても過言ではないのだから。
AKINOさんが贈る「暁の水平線へ」が始まった。
AKINO「きゅうじゅう~な~なのひ~かり~♪」
提督「……」
AKINO「きゅうじゅう~きゅうのゆ~めー♪」
提督「……」
なんだこいつら。
本来こちら側が合いの手を入れるであろう所、誰も発声していなかった。
さっきまでの勢い、完全に無くなってた。
最後のほう、AKINOさん自分でコーラス部分歌ってた。
もしかして、君ら歌詞知らない?お、初心者提督さんですか?
そういや、2024年FSWでの金剛型86納車式の時だ。
イベントの最後、ゲリラ的に艦娘音頭大会が開催されたのだけど、ステージと音響があまりにも突貫工事で用意されたせいか音頭の途中で音が出なくなるトラブルがあった。そこで、提督達のアカペラで音頭を続けることになったのだが、ここで衝撃の事実が発覚する。
ほとんどの提督が歌詞をうろ覚えでロクに艦娘音頭を歌えなかったのだ。
2年前の富士での記憶が、佐世保で唐突にフラッシュバックした。
千本桜を知らないのはいい。昭和のアニソンで盛り上がったっていい。
でもこの体たらくだけは流石にダサくないか?
別に歌詞を覚えてるから偉いわけじゃないし、覚えてるから愛が深いわけじゃない。意図を勘違いされたくないのでそう前置きしたうえで言わせてもらいますが。
君ら本当に艦これ好きなん?
なんか声優よりも市長やコラボ関係先への声援の方が大きいだとか、ボクカワみたいなのを面白がってるだとか、「提督なのに艦これじゃないところで盛り上がってる異端な俺達w」みたいなノリでキャイキャイ言ってますけども。
一遍自分の足元見たらどうですか?
3.本当に若者が増えているかは分からないけれど……
ちょっと前、最近はリアイベ界隈に若い世代が流入しているという話が話題になっていた。Xのアンケート機能をソースにした調査に細かくマジレスするほど無粋ではないので、私見は本記事のタイトルに据えるだけに留めておくが。いややっぱ1個だけツッコませてほしい。これ20代は「10~20代」「20~30代」どっちに投票すればいいか分かり辛くないか?アンケートの選択肢はMECEが基本だぞ。
一般論として考えるなら、リアイベはライブ・物販等の予算+宿泊費+交通費がかかるので、収入が少ない若年層ほど参加のハードルは高いだろう。あるいは、それなりに移動慣れしてないうちはホテルや飛行機の予約に苦手意識があってもおかしくない。そういう意味でも、社会人経験が長い方が参加しやすさがあるといったことはあると思う。上記のアンケートに答えた10代の人達はあくまでゲームをプレイしているだけでリアイベにまでは参加してない、と解釈するのであれば僕としては納得しうる。
また、個人的な体験から言わせてもらえばリアイベに若年層が全くいないかというとそんなことはない。
あれは昨年の横須賀コラボのことだ。ヴェルニー公演で行われたカレー機関Expressでカレーを食べていると、隣のテーブルに明らかに高校生くらいの子が来てカレーを食べ始めた。それとなしに話しかけてみたところ、彼は今、横浜の高校に通う高校2年生。その日はちょうど終業式だったらしく、学校が終わってすぐ電車に飛び乗って横須賀まで来たとのことだった。
「これからスタンプラリー回るんですよwなんかめっちゃ大変らしいですけどとりあえず今日中に行けるだけ行ってみますw」と話しながら、その高校生は楽しそうに去っていった。
N=1の実例にどこまで意味があるかは置いておいて、事実ベースだけで言えばリアイベに参加する若年層も確かに存在している。
一部の提督達は若者が流入していると喜んでいるし、また一部の人達はそれを見て「そんなわけないだろw」と冷笑しているようだ。僕としては、まともに議論できる客観的なデータが無い以上「若者が増えているかどうかは分からない」というスタンスでいる。
ただ敢えて言うのであれば、若者が流入していると無邪気に主張している人達は一つ、重大な点を見落としているような気がする。それは、
よしんば本当に若者が流入しているとしても、多分君たちが期待しているような未来にはならないんじゃないかということだ。
あの時僕が見た高校生が大人になってから初めてリアイベのライブに参加したとして、自分が好きな艦これはそっちのけでふっっっるい歌謡曲に熱中しているおっさん達の姿を見て何を思うだろうか。
若い人達が今のリアイベに触れた時、そこに生まれるのは共生ではなく住み分けなんじゃないか。
そんな未来予想図を、僕はおぼろげに思い浮かべている。


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