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【山田太郎問題】「国連論破神話」の解体#2:「根拠なき30%」への逆ギレ

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 なお、シリーズの記事一覧は『
【山田太郎問題】序文と記事まとめ』から。

 前回の『【山田太郎問題】「国連特別報告者論破神話」の解体#1:ただの居直り』同様に、今回も「国連特別報告者論破神話」を解体していく。なお、この神話の概要については前回の記事、ならびに会見の文字起こしである『【参考】国連特別報告者マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏の記者会見の書き起こし』を参照のこと。

 今回と次回の記事では、山田太郎が具体的に挙げている、国連特別報告者への「反論」を取り上げ、それらが反論の体を成していない稚拙なものであることを論じる。今回は特に、ブキッキオ氏が日本中(の保守系男)から怒りを買った主な原因である「30%発言」について論じる。

「30%発言」とは

 ここで便宜上「30%発言」と呼称するのは、ブキッキオ氏が会見で行った以下の発言を指す。

例えば、例としては援助交際があります。これはの女子学生の3割は現在援交をやっていると言う風には言われているわけでございますし、最初は非常に罪のない形で始まるわけです。

【参考】国連特別報告者マオド・ド・ブーア=ブキッキオ氏の記者会見の書き起こし

 なお、30%という数字は誤訳であり、実際には13%と発言していたこととなっている。山田太郎は著書の『守り方』などではなぜか誤訳であるはずの「30%」を執拗に取り上げていることと、本論では細かい数字がぶっちゃけ関係しないことから、山田太郎に歩み寄るかたちで「30%発言」と呼称することにした。

 前回の繰り返しになってしまうが、山田太郎はこれに特に強く反応し、国連人権高等弁務官事務所に抗議した。政府も抗議を行い、ブキッキオ氏は誤訳云々以前の問題として発言それ自体の撤回に追い込まれてしまった。以上が「30%発言」の経緯と顛末である。

 なお、発言について、ブキッキオ氏は「オープンソースからの推定値」であると発言しており、詳細は不明だが、おおよそこのくらいだろうという見当があっての発言だろうと推測することはできる。(ブキッキオ氏の声明である『Clarification of the Special Rapporteur on the sale of children, child prostitution and child pornography following her end-of-mission press conference in Japan』参照)

精一杯実態把握に努めた特別報告者と、何もしなかった政府の逆ギレ

 とはいえ、ブキッキオ氏の発言の根拠は信頼性に留保がつくべきものであった。そのことを明らかにし、日本の汚名を雪いだ山田太郎は表現の自由を守る英雄である!バンザイ!

 ……本当にそれでいいのだろうか。

 今回の件で重要なのは、山田太郎や政府はブキッキオ氏の「30%発言」に反発したものの、では実際のところはどうなのかという根拠もまた示せていないということである。

 ブキッキオ氏の発言は確固たる根拠を欠いたものだったかもしれない。一方で、氏が日本での滞在で様々な人々に会い調査をしたことからも明らかなように、全くの当てずっぽうによる発言ではなかったのも事実であろう。政府による公的な実態把握を欠いた状態で、それでも限られたリソースと手がかりから性的搾取の実態を掴もうとした結果出てきた推定値が13%ないしは30%という数字だったのではないだろうか。

 これに比べて、日本の行政や政府は何をしているのだろうか。彼らは日本のセーフティーネットを預かる立場として、困難を抱える人々の実態を把握する責務を負っているはずである。もちろん、女子学生による援助交際の実態把握も含まれる。にもかかわらず、当時の日本はそうした実態把握を行っておらず、また現在も行っていない。

 ブキッキオ氏は日本の外からやってきた人であり、彼女に情報提供をした人々は主に民間である。そうした立場の人々の実態把握が限定的なものであり、信頼性に留保がつくのは当然のことである。そうした立場による制約を揚げ足取りして、国家権力であるにもかかわらず何もしていない人々が偉そうに「根拠はない」などと文句を垂れる資格があるだろうか。これではただの逆ギレである。

 山田太郎は奇妙なことに、著書などでは30%という誤訳の方を取り上げている。これ自体が不誠実な印象操作であろう。要するに、「女子高生の3割が援助交際をしているなんてありえない!」という人々の「素朴な」感覚に乗じることで、ブキッキオ氏の発言全般に信頼性がないかのように見せたいのだ。だが、実際には、本当に「女子高生の3割が援助交際をしているなんてありえない!」と言い切れる根拠はない。政府が実態把握を怠っているからだ。もしかしたら本当に、女子高生の3割が援助交際をしているかもしれないし、その可能性は否定できない。

 先に挙げたブキッキオ氏の声明で、氏は実態把握などの調査を行うように日本に呼び掛けている。2023年の現在に至ってもその呼びかけは省みられず、むしろ国会議員や地方議員が民間団体を妨害する有様である。山田太郎はこれでよくもまぁ、自身の成果に数えられたものである。

「外から買春者がやってくる」という謎逆ギレ

 うんざりすることに、山田太郎および保守系の男性たちによる奇妙な逆ギレはこれにとどまらない。山田太郎は『守り方』において以下のように書き、ブキッキオ氏の発言によってかえって日本に住む女子児童が危険に晒されたと主張している。

 こうしたブキッキオ氏の発言は英語で全世界に拡散されました。我が国の女子学生の三分の一は援助交際をしている上に、児童ポルノ関連の刑罰は他国と比べて低く、警察も積極的に捕まえようとしない。そして沖縄は売春産業で栄えている。こんなことを英語で全世界に言われてしまったわけです。これでは、日本は海外から「エンコー大国」「児童ポルノ大国」と見られてしまう。児童の保護を目的に来日したはずが、逆に日本に行けば女子学生と援交できると世界に発信してしまった。これでは児童を逆に危険に晒しかねません。

山田太郎 (2016). 「表現の自由」の守り方 星海社

 ここではあえて、わざわざ国連特別報告者の会見なりその報道なりを見て日本にやってくる買春者という人物が存在しえない可能性には触れないでおこう。明らかに低い可能性だが、性欲が絡むと男は極端なことをしかねない生き物だ。

 ここで指摘したいのは、問題を起こす側ではなく、指摘する側に責任を転嫁するという奇妙さだ。仮に、ブキッキオ氏の発言を真に受けて日本に買春に来る人物がいるとしたら、性的搾取の責任はその人物にある。ブキッキオ氏にはない。これはブキッキオ氏の発言の真偽に関わらない。ブキッキオ氏の発言の真偽がどうであれ、性暴力を振るう人間に問題があることは論じるまでもない。

 ましてや、ここまで論じてきたように、ブキッキオ氏の発言は信頼性に留保がつくとしても、全くの出鱈目というわけでもないのだからなおさらである。

 山田太郎や彼に同調する人々は、国内に現に存在する性的搾取の問題よりも、それを表沙汰にされることに反発しているとしか思えない。あまりにも倒錯した発想であると同時に、本当に性的搾取を解決したいと思っているならあり得ない反応である。

逆ギレの背景にある家父長制

 『児童を逆に危険に晒しかねません』などという山田太郎の反応は極めて奇妙に見えるが、家父長制という補助線を引くと理解が容易になる。ブキッキオ氏への反発は、彼と彼の支持者の中にある、恐らく意識されていないであろう、典型的な自民党的発想を象徴するものだということが出来る。

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