こども家庭庁が「子どもを性暴力から守る」マークを発表。背景や申請方法は?

増加傾向にある子どもへの性犯罪。保護者が安心して保育・教育の場に預けられる環境を構築するため、2026年12月25日から「こども性暴力防止法」が施行される。

子どもへの性暴力が、深刻な社会問題となっている。

警察庁によると、2024年の日本国内における子どもへの性暴力・児童虐待事件数は、過去最多の2649件に上った。子どもの安全を守る仕組みが、いま強く求められている。

そうした中、こども家庭庁は、2026年12月25日に施行予定の「こども性暴力防止法」に基づき、国の認定を受けた事業者が表示する「認定事業者マーク」、また学校や認可保育所等が表示する「法定事業者マーク」を制定した。

施行をちょうど1年後に控えた2025年12月25日、本マークの発表会が実施された。

子どもを性被害から守る場所を、マークで識別可能に

渡辺由美子さん(こども家庭庁)
渡辺由美子さん(こども家庭庁)
SASAKA KAZUYA

発表会の冒頭には、こども家庭庁長官の渡辺由美子氏さんが登壇。マークに込めた思いやデザインなどについて説明した。

発表された2つのマークは、基準を満たした事業や施設において掲示することで、子どもや保護者が地域で教育・保育サービスを安心して利用できる環境の整備を図るものだ。

学校や認可保育所をはじめ、公的な認可等を受けて子どもに教育や保育を行う場では「法定事業者マーク」を掲示し、国からの認定を受けた子どもが通う民間事業者では「認定事業者マーク」を掲示する。これにより、その機関が「こどもへの性暴力を防ぎ、こどもの心と身体を守るための取組を行っていること」を簡単に可視化できるようになる。

こども性暴力防止法 事業者マーク
こども性暴力防止法 事業者マーク
こども家庭庁

デザインには、大きな目で子どもを見守るフクロウを採用し、「こまもろう」と命名。子どもにも親しみやすく、さまざまな場所で見つけやすいよう、オレンジを基調にデザインされており、さらに背景に青とピンクを使うことで、視認性と分かりやすさを高めている。

渡辺さんは、マークと一緒に覚えてほしい言葉として「こどもを守ろう。みんなで守ろう。」というキャッチフレーズを紹介。子どもを性暴力から守る社会の実現に向けては、「国や行政、保育の現場はもちろん、子どもと接するすべての方の理解と協力が必要です。私たち大人が関心を持ち、子どもの声を聞き、何かあったときに絶対に子どもを守っていくという強い決意を持つことが、何よりも大切だと思います」とコメントした。

子どもを守る社会を実現するための1つのシンボルとして「こまもろう」を認知するとともに、「子、守ろう」という言葉を社会全体の合言葉にしていきたいと呼びかけた。

子どもへの性暴力は、社会全体で解決すべき

久米隼人さん(こども家庭庁支援局総務課)
久米隼人さん(こども家庭庁支援局総務課)
SASAKA KAZUYA

続いて、こども家庭庁支援局総務課の久米隼人氏が登壇し、マークの詳細について説明した。マークの義務対象となるのは、学校、認可保育所、認定こども園、児童養護施設、障害児施設などだ。認定対象には、認可外保育施設、放課後児童クラブ、学習塾、スポーツクラブなどが該当する。

認定はオンライン申請となっており、1〜2か月で審査結果が出るといい、受理後はこども家庭庁のウェブサイトを通じて認定が公表される。また、認定事業者では制服やウェブサイト、求人広告などにマークを表示することが可能となる。

久米さんは「子どもへの性暴力事件の増加は、個人や特定の機関の問題ではなく、社会全体で解決すべき『大人の責任』です」と話し、その前提の上で、このマークを通じて「子どもも大人も『性暴力っていけないことだよね』と改めて感じられる雰囲気を醸成していきたいです」とコメントした。

また、子どもを性暴力から守るための具体的な取り組みとして、「安全確保措置(見守りや面談による早期把握、相談体制の整備、調査・保護、従事者への研修)」や「特定犯罪前科の確認(雇っている、または雇用を検討している人の犯罪歴の調査)」、「情報管理措置」を紹介。事業者がこれらの取り組みを遵守することで、マークを通じて子どもの安全を伝えられる仕組みを実装すると説明した。

ほとんどの保護者が「まさかうちの子が」と驚く

終盤のトークセッションには、上谷さくらさん(桜みらい法律事務所 弁護士)と丸山純さん(全国私立保育連盟常務理事)、さらにゲストとして、お笑い芸人のダンディ坂野さんが登壇。子どもへの性暴力に関する現状や、大人としてできることなどを語り合った。

Cap:左から丸山純さん(全国私立保育連盟常務理事)、ダンディ坂野さん(お笑い芸人)、上谷さくらさん(桜みらい法律事務所 弁護士)
Cap:左から丸山純さん(全国私立保育連盟常務理事)、ダンディ坂野さん(お笑い芸人)、上谷さくらさん(桜みらい法律事務所 弁護士)
SASAKA KAZUYA

犯罪被害対応を専門としているという上谷さんは、「性被害の報告はとても多いです。しかし、教育・保育の現場での性犯罪は特に発覚しづらい犯罪であり、それでも氷山の一角に過ぎないという現状があります」と話し、その深刻さを伝えた。

また、実際に子どもが性被害に遭ったとき、ほとんどの保護者が「まさか自分の子が」と驚くといい、日頃から身近な話題として話し合う習慣を持つことの重要性を指摘した。

これに対し、高校生と小学生の子どもを持つダンディ坂野さんは「最近は特に『ニュースで(関連報道が)増えているな』という印象を受けると同時に『他人事ではないな』と危機感を持っています。我が家でも『何かあったらすぐ言えるように』と、日頃のコミュニケーションには気をつけていますね」とコメントした。

丸山さんは、保育現場で働く立場から、こども性暴力防止法について「やってよいことと、気をつけなければいけないこと、やってはいけないことがガイドラインでしっかりと定められている点が良いですね」と評価。保育の場では、例えば「膝に子どもを座らせることはOKなのか」といった疑問を抱えている人も多く、ガイドラインが整備されることで、子どもだけでなく、保育・教育の従事者も守られるようになると説明した。

また、現場で働く中での気づきとして、「子どもは意外なほどに『これは言っていいのかな』『話していいことなのかな』と考えています」とコメント。さらに「何か言い出しづらいことがあるときも多いので、そういう場合には『どうしたの?』といった閉ざされた質問ではなく、『今日はどうだった?』といった開かれた質問をすることが大切です」と話し、子どもを性被害から守るための具体的なコミュニケーションの方法を提言した。

こども家庭庁では今後、1〜2月にかけて事業者向けの全国説明会などを通じ、「こども性暴力防止法」の施行に向けた取り組みを進めていくという。