猫の「腎臓病治療薬」いよいよ年内に登場か 宮崎徹AIM医学研究所所長が語る「AIM製剤」の可能性
腎臓病の猫に対する治療薬(AIM製剤)の実用化が近づいている。4月に国に承認申請をし、早ければ年内に実用化の予定だ。 【写真】「AIM製剤」について語る宮崎徹AIM医学研究所所長 * * * 「治験はすでに終了し、現在4月の承認申請に向けて準備中です。同時進行で6月から販売用の薬の製造をスタートするので、年内に承認をいただければなるべく早くリリースできるように準備を整えています」と宮崎徹さんは話す。 ■AIMは「粗大ゴミシール」 AIMは多くの動物の血液中に存在するタンパク質で、色々な病気を引き起こすきっかけとなる体内の老廃物(ゴミ)にくっつき、それを掃除させる役割を持つ。宮崎さんは猫の体内ではAIMが先天的に機能せず、それゆえに腎臓内にゴミがたまり腎臓病になりやすいことを突き止め、AIM投与による効果について研究を続けてきた。AIM製剤に対する愛猫家の期待は大きく、2021年にSNSを通じて約2億8千万円の寄付が寄せられた。宮崎さんは翌年3月に東京大を退職してAIM医学研究所(IAM)を設立、薬の開発を加速した。 「AIMは粗大ゴミに貼るシールのようなものです。猫の場合は台紙からシールがはがれにくく体内でできる粗大ゴミにつけられないのでゴミ収集車に回収してもらえない。培養液から抽出したAIMを投与すると、それがゴミに貼られ、収集車に持っていってもらえるようになるのです」
■亡くなる猫をつくらない 治験に先駆けて行った臨床研究では、慢性腎臓病の末期に近い猫11匹にAIMを投与したところ、1年後に9匹が尿毒症を発症せず、生存率は約82%に達した。同じステージの慢性腎臓病の猫でAIMを投与しなかった15匹は、1年間で12匹が尿毒症で亡くなり、生存率は20%だった。この研究とほぼ同じデザインで、承認に向けての治験を行った。 「通常、治験は薬を投与するグループとしないグループに分けて行います。しかし、AIMを投与しないと8割が亡くなることは臨床研究で実証済みでした。そこで、今回の治験では飼い主さんへの配慮や動物愛護の観点から、事前に農林水産省と協議を重ね、全ての猫にAIMを投与し治験のデータとすることを認めていただけるようお願いしました。結果は事前の臨床研究とほぼ同じかそれ以上の効果でした」 新薬は完成後、どうやって我々のもとに届くのだろう? 「静脈注射での投与なので、動物病院で注射することになります。価格もできる限り抑え、飼い主の皆さんに大きなご負担にならない程度の価格にすることを目指しています」 今後の課題は生産量だ。AIMは1千リットル(1トン)の培養液から小さな牛乳パック1個分、200グラム程度しか抽出できない。 「日本の猫は現在およそ1千万匹います。そのほとんどが腎臓病にかかると考えると、量が足りない。今後はいかに生産量をあげていくかが課題です」 期待が高まるAIM製剤。1月に締め切った薬のネーミング募集には1万を超えるアイデアが寄せられた。実用化すれば、「取り扱いのある動物病院の情報などを随時SNSで発信していく」と宮崎さん。まずは重い腎臓病に苦しむ猫への投与が優先だが、その先はワクチンのように若年のうちから年数回投与すれば、腎臓病の発症を抑える効果が期待できるはずと考え、研究中という。 「AIM製剤は通常の薬の開発とはまったく違い、飼い主の方々に研究開発の段階から伴走していただき、ここまで来ることができた薬です。皆さんに還元するのが私たちの使命だと思っています」 (フリーランス記者 中村千晶)
中村千晶