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「こども家庭庁なんていらない」といわれながら働いていた私がみた光景

こども家庭庁には、それなりに縁があります。

こども家庭庁(当時はまだ名称もなかった)をどんな役所にするのか検討する政府の有識者会議の臨時構成員としてお声がけいただき、それがきっかけで、いろいろあって、民間人から役人に転身し、こども家庭庁ができる前の、内閣官房こども家庭庁設立準備室の頃から、本庁の一員として、およそ2.5年、在籍していました。

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こども家庭庁発足時、NHKの取材を受けました。

思い返してみると、こども家庭庁は、その発足時——、いや、発足前から、色とりどりの不要論がありました。そもそも「こども家庭庁」という名称からして、大きな批判がありました。

組織だけでなく、なぜか私個人も、様々な誹謗中傷をうけました。

私はNPOからこども家庭庁に転職したわけですが、やれ「我田引水」とか、あるいは「スパイ」とか、週刊誌に、名指しでかかれたなぁ。いつからそんな有名人になったのかと、錯覚してしまったほどです。
(ご心配をいただくまでもなく、私にはそんな力もなければ才能もない)

役所にもクレームの電話だったり、私の経歴に関する情報開示請求だったりが寄せられたりしました(高卒なため、不正があったと思われたのかもしれない)。

個人に対する批判は受け流せるにせよ、日々激務に追われる仲間にその対応をさせてしまうことが、申し訳なさ過ぎました。

そんなこども家庭庁も、発足して3年が経過しました。私も、退官して民間人に戻り、1年です。まさに、光陰矢の如し。

そしてこの間、こども家庭庁は十分な成果をあげられていないと少なくない方々に認識されており、不要論に拍車がかかっています。

上記の記事で指摘されているような、至極まっとうな批判もあれば、誤解に基づいたものもあります。

ただ、とかく、「こども家庭庁があってよかった」という意見には、ほとんど接したことがありません。というか、まったくないのではないか……?

でも私は、こども家庭庁ができてよかったことだって、あると思っています。ただの贔屓目と思われるかもしれないし、実際にそうかもしれないけれど。

印象に残っている光景があります。
局長室での、定例会議のことです。

私が担当していたのは、児童に対する性暴力を抑止するための仕組み、いわゆる「日本版DBS」(こども性暴力防止法)でした。

法案提出前夜、議論百出で、これで本当に国会に出せるのか……?という状態。定期的に局長室に集まって、それぞれの論点を整理し、必要な対策を検討していました。

中でも、大きな論点のひとつに、「大人の権利」がありました。

例えば、こども性暴力防止法では、「安全確保措置」として、子どもと関わる職場で働く人、あるいは求職者に対して、犯罪経歴証明書の提出を要求しています。そこで問題が明らかになった場合や、あるいは現場で児童の性被害が疑われるような事態があり、それが確からしいと考えられる場合、防止措置として、原則、児童と接する業務に就かせない、などの対応がとられることになります。

これは、これまでの日本の法体系から、あまりに非連続なものです。

子どもを守るためとはいえ、労働者の権利を侵害しているのではないか、個人情報保護についてはどう考えているのか、等々、各所から、既存の法体系や慣習に基づいた、重厚な指摘・反論が寄せられていました。

それらは、一理あるどころか、「それもそうだ……」と考えさせられるものばかり。長い時を経て、この社会を形作ってきた法律や概念です。論理構成は、まさに鉄壁でした。

実際、法案を国会に通すためであったり、違憲とならないためであったり、現実的に法制度を運用するためであったり……、それらの論に譲るところも、少なからずありました。そのときの葛藤は、下記のブログでまとめています。

でも、子どもたちを守るために、ここだけは譲れない、という最終防衛ライン、そこはいつも、局長はじめ審議官各位は、「これでいこう」といってくれました。

この決断は、上記の記事にも登場した渡辺長官も了承してくださったし、そこから政務官、副大臣、そして大臣とあがっていっても、ブレることはありませんでした。実際、その実現のために、関係各所とのハイレベルな調整に、骨を折ってくださいました。

だいたい、夕暮れ時の、国会議事堂を眼下に見渡せる局長室で、幾度となくそういう決断が下され、それに基づいて、私たちは働いていました。

地味だし、報道されるような話ではないですが、私は、大切なことだと思うのです。

例えば、もしこども家庭庁がなかったら、労働組合が本法に対して物申したい場合、その窓口は、厚生労働省だったはずです。厚労省の労働法制を担当する部局が守るべきは、第一に、労働者の権利であって、子どもの権利ではありません。

もし厚労省がこども性暴力防止法を所管していたとしたら、今の形と同じにはならなかったのでは、と思います。

もちろん、こども家庭庁が優れているとか、厚労省が悪いとか、そんな話ではありません。

厚労省は、労働者を擁護する立場から、法制度をつくろうとします。
経済産業省は、事業者を擁護する立場でしょう。
農林水産省は、農家や漁業を営む方々の味方だと思います。

それぞれ、とても重要です。
でも、今まで、子どもの立場に立って政策を推進する役所は、ありませんでした。

こども家庭庁設置法は「こどもが自立した個人としてひとしく健やかに成長することのできる社会の実現」を謳っています。

こども家庭庁は、出来立てほやほやの役所です。ということは必然的に、プロパーなんてただのひとりもおらず、他省庁や、私のような民間からの寄せ集めで構成されています。上記のこども家庭庁設置法の理念に共感している人ばかりでないのも事実です。

でも、様々な矛盾をはらみながら、政局の激震に右往左往しながら、それでも、「こどもまんなか」のミッションを信じて働いている職員もいます。

もちろん、重要なのは結果です。

この国には、多くの子どもたちが様々な問題に直面し、苦しんでいます。頑張ってるだけでは、意味がありません。まだまだ、課題は、たくさんあります。本当に、たくさんあります。識者や社会からの批判には、至極まっとうなものが、多くあるとも思います。

でも、この局面を打開できる役所が他にあるのか?とも思うのです。それがなかったらできたのが、こども家庭庁だったはずです。

現在は、新卒の採用も始まっています。「こどもまんなか」社会の実現に熱い思いを持って、こども家庭庁の門を叩く若い人たちも、きっと増えてくるはず。

私はこども家庭庁のこれからに期待していますし、民間人として、タッグを組んで、ともに社会課題解決に挑んでいきたいとも思っています。


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認定NPO法人フローレンスにて事業を通じた社会課題解決に奮闘中。リクルートHLDで新規事業開発、内閣官房参事官補佐、こども家庭庁専門官などを経て現職。著書『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ』(光文社)。二児の父。趣味は空手(剛柔流)。お問合せはプロフィール記事にリンク有り
「こども家庭庁なんていらない」といわれながら働いていた私がみた光景|前田晃平
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