円売りの背景にある日銀の公約破り
もちろん、現実の金融政策運営はそう単純ではない。物価目標を掲げる中銀もまた、景気や市場への影響を勘案して金融政策を運営している。現にBOEの場合も、英国の物価が2021年後半から目標水準を超えてもなお利上げには慎重だった。コロナショックという前代未聞のショックからの回復途上だったというところが大きい。
それでもBOEは、2021年12月のMPCで政策金利を0.1%から0.25%に引き上げ、他の主要中銀に先駆けて利上げに着手している。直後にロシア発のエネルギーショックが生じたことで、利上げのピッチを加速させてもいる。対照的なのが、消費者物価の前年比上昇率が物価目標である2%を超え続けても利上げに慎重な日銀だ。
日銀も2%の物価目標を掲げている。それは投資家に対する公約であるはずなのに、日銀は利上げに慎重であり続け、投資家が望む水準まで金利を上げようとしない。公約を破り続けていれば、投資家からの信頼など獲得できるわけがないのは当然だ。そのため、円は売られ、円の価値は毀損し続ける。
日本の物価上昇は景気拡大に伴うデマンドプルではなくエネルギー価格や原材料価格の上昇に伴うコストプッシュであるため、日銀による利上げは不要との主張もある。ただ、そうした論者ほど、かつて日銀に物価目標の導入を提唱していたという矛盾がある。市場は物価上昇の質など気にしてはいない。目標水準を上回った場合に利上げをする中銀が発行する通貨を信頼し、購入するだけである。