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心配性な貴方達の事だから/Novel by しらぬい

心配性な貴方達の事だから

5,211 character(s)10 mins

「皆、しゅーごー!」
「え、どうしたんですか?」
「マスターのアンプル打ちすぎ問題!あれは強制的に魔力やら何やらを活性化させて…とにかく、あれを打ちすぎると眠れなくなるんだよ」
「あー…それで最近酷い顔色してんのね、あいつ」
「そう!それに…そんな状況なら悪夢を見たっておかしくない。人として生きていく上で、睡眠はとても大事なものだ。それを無意識に拒否してしまえば悪循環に他ならない…」
「何かいい方法があればいいが…」

英霊達だけにかかった秘密の招集。
その途中で、「いい案が思いついた!」とばかりにぴょこぴょことピンクに黒耳の兎が飛び出して行ったのだった。

ーーーーーーーー

思い付きの産物です。
時系列等は1部、2部どちらでもありどちらでもないです。
ある日のカルデア事情くらいで見て頂けると幸いです。

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ー貴方の長所は何ですか?
と問われれば、「何処でも寝れる事です!」と阿呆みたいに答えていた頃が何だか懐かしく思える。
時は現在日付の変わった午前1時。
ランドリーで、ゴウンゴウンと音を立てて回るドラムをぼんやり眺めていた。
別に洗濯機が大好きで、「やっぱカルデアの最新式ドラム型洗濯機は違うわァ!」とか「まるで激しいビートを刻む様な音色!」とかそんな事を思っている訳ではなく、ただの時間潰し。
しん、と静まり返った場所に居たくなかったと言うのが正直なところで、かといってこんな夜中に誰かの部屋に行くのも、迷惑かな…と思えば選択肢から除外された。

「…」

ふー、と溜息を吐いて天井を見上げる。
洗剤の匂いが鼻を掠めた。

「まーすたー」
「ふぇっ!?」
「あははー!変な声」

誰も居ないのを確認したはずの部屋で、急に声を掛けられ身体が跳ねた。

「こんな所で何してんの?」

ふりかえると、黒いリボンのうさ耳がぴょこぴょこと揺れる。

「びっくりしたー!アストルフォこそどうしたの?」

俺はアストルフォを見上げて尋ねる。
アストルフォは楽しそうに俺の座る長椅子の隣に腰を下ろすと、俺の膝に「わーい!」と言いながら倒れ込んだ。

「僕はマスターを探してたんだ!何だか眠れなくてさー。お話しようよ!眠くなったら寝ていいし!ね!」
「別に構わないけど…マイルーム行く?」
「うん!いこーいこー!!」

わーいと飛び上がり、アストルフォは俺の手を引いて立ち上がらせると、るんるんと鼻歌交じりに俺の背を押した。




「でねー、雪だるまかと思ったら真っ白いうさちゃんだったの!マスターに持って帰ろうと思ったら、「さすがに生き物を貰っても、マスターは困るだろう?」てジークに止められちゃってさー」

「えー、見たかったな」

「でしょー!?次に見付けたら写真撮ってきてあげる!」

「よろしく!…ところで、この姿勢は何?」

マイルームに着いて、俺はアストルフォの膝を枕に寝転ばされていた。

「んー?んふふふ」

アストルフォは上機嫌に笑う。

「僕に付き合わせてるからねー。眠くなったらいつでも寝ていいよ!これならすぐ寝れるでしょ?」

よしよしと俺の頭を撫でた。
確かに少し眠くなってきた気がする。
ふぁ、と欠伸をすると薄い布団を掛けてくれた。

「ありがとう、アストルフォ」
「このまま寝ちゃえ、マスター」
「ん…」

もう一度欠伸をして目を閉じる。
久しぶりに訪れた眠気に、逆らうこと無く身を委ねた。

「おやすみ、マスター」

それを最後に意識が沈んだ。



ーーーーーー

「ふぁ…」

目を覚ますと、頭に暖かい何かを感じて数回瞬きをする。
何だ?と思ってよく見たら、膝枕で寝ていた。
頭には手が添えられている。
寝ぼけた頭が徐々に覚醒し、ガバッと起きる。

「ごめん!アストルフォ!!」
「お、おはよぅぅ。マスター。あたた、足が痺れたよ」

へら、と笑うアストルフォに俺は平謝りする。
いつの間にか本気で寝落ちしていたらしい。

「起こしてくれれば良かったのに」

申し訳なくてそう言えば、アストルフォは「そんな事しないよ!」とぶんぶん手を振った。

「でも、寝心地最高だったでしょ?僕の膝枕」

悪戯っぽく言うアストルフォの額に軽くチョップして「最高でした」と言えば、にひひと嬉しそうに笑った。

久しぶりにゆっくり寝たような気がして、強化素材の周回がとても捗った。
周回メンバーからは「鬼畜!」と罵られたが気にしない。
文句を言いながらも、何だかんだ付き合ってくれたのには感謝している。
心地よい疲労感が身体に溜まり、今日こそ眠れると思った。
しかし、相変わらず夜になると目が冴えるのだ。


そしてまた昨日と同じ場所に居た。
ゴウンゴウンと回るドラムを相変わらず眺める。
いつからこんな風になったのかなんて覚えていない。気が付いたら、夜に眠れなくなっていたのだ。
かといって、昼に眠いかと言われればそこまで睡魔に襲われることは無い。
相変わらず『カルデア名物』と呼ばれるレムレムはあるにはあるが、これは睡眠と言っていいのか疑問で、
休む為の睡眠というものには当てはまらないからだ。

「なーんで眠れないかなぁ」

呟いてみるが、何となく心当たりはある。
夢見がすこぶる悪いのだ。
だから最近『眠る』と言う行為に対して、恐怖心が芽生え始めていた。
それからというもの、段々眠りが浅くなっていき、仕舞いには今の状況になっていったのだ。
メディカルチェックはちゃんと受けているけれど、もうそろそろ誤魔化すのも限界が近いかもしれない…

「催眠術でも掛けてもらおうかな」

無理矢理でも寝た方が身体の為には良いだろう。
しかし、相談して心配を掛けるのも嫌だった。

「おや、マスター。こんな所で何してんすか?」

シュンと扉の開く音がして、声を掛けられた。

「あれ?ロビン??」

ロビン・フッドがマントを片手にランドリーの扉を開けていた。

「こんな夜中に洗濯っすか?」

ロビンは俺の座る長椅子の隣に腰を下ろした。

「いや、時間潰し?」
「何で疑問形なんすか」
「ロビンは?マント洗いに来たの?」
「いや、マスターとだべりに来ました」
「俺?」

ロビンはニッコリ笑って頷いた。

「えっと…マイルームに行く?」
「そっすね、お邪魔しましょうかね」

俺とロビンは連れ立ってランドリーを後にすると、マイルームへと移動した。



「それで、その男は言ったんすよ…5人で旅行したのに、写真には自分が写っていない。確かに5人で集合写真を撮ったのに…て」
「ひぇっ、消えてんじゃん…」
「そう。1人居ないんでさ。でも、この時のメンバー全員に話を聞いても『確かに5人居た』て言うんです」
「…それで?」
「それで、気が付いたんです」
「…うん」
「自分が撮った写真だから、写るはずないって」
「そんなオチかー!!!」
「自分の記憶力にゾッとしたって話ですね」
「成程納得!!…でところでロビン君」
「何すか、マスター」
「この体勢は何ですの?」

俺とロビンはマイルームのベッドに向かい合って寝転んでいた。
所謂添い寝と言うやつ。

「何って、流石にこの時間は眠いっしょ?寝落ちしていいですから」
「え、話しに来たんでしょ?」
「あぁ、暇つぶしっすよ。サーヴァントに睡眠は必要ないんでね」
「あぁ、そういう。そういや、昨日はアストルフォが来たよ。なに?サーヴァントの皆は夜って案外暇なの?」

俺の問にくくくと笑い、「そうかもしれないっすね」
とロビンは笑った。
しかし、2人分の体温で布団がいい感じに暖かい。
ふぁ、と欠伸が出た。

「寝ちまいな、マスター」

ぽんぽんとされる。

「うん…何か、眠い気がする」
「よしよし、おやすみマスター」

目を閉じると、すぐに俺は意識を手放していた。




ーーーーーー

目を開けると、イケメンの爽やかな笑顔が視界一杯に飛び込んできて、これまたイケボで「おはよう、マスター」と囁かれれば、飛び起きるしかなかった。

「おおおおおはよう、ロビン」

俺の動揺ぶりに、ロビンは可笑しそうに笑った。

「おはようさん、マスター。よく眠れたかい?」

よしよしと頭を撫でられる。
はい、それはもう自分でも信じられないくらいグッスリでした。はい。

「久々にこんなに寝ました」
「それは良ござんした」

昨日はアストルフォの膝枕、今日はロビンの添い寝…
ぶっちゃけ思い出しただけでも恥かしいのだが、そこはそれ。
考えないようにしよう、そうしよう。

「今日も張り切りすぎて周回し過ぎないようにしてくださいよ?マスターのマネージャーとしては心配ですからね?」
「はーい」

俺はベッドから抜け出すと、軽く体操してロビンと食堂へと向かった。



その日は微小特異点の調査の為、数名のサーヴァントと共にレイシフトした。
特異点は相変わらずのぐだぐだで、攻略方法が現地サーヴァントとの『だるまさんがころんだ』だった。

バトル模様は割愛するが、何やかんや白熱したバトルを見事制した俺たちカルデアは、聖杯を回収した後、残ったちびノブを掃討して帰還した。
ついでに強化素材も割かしゲット出来たので良しとしよう。

そしてまた夜が巡ってくる。
毎日の如くランドリールームに向かおうかとも思ったが、何となく止めて食堂へと足を進めた。
しん、と静まり返っていて、失敗したかと思った矢先「マスターちゃん、どうしたの?」と声を掛けられた。

「あ、一ちゃん」

振り返ると、スーツ姿の一ちゃんが立っていた。

「マスターも悪い事、しにきた?」
「悪い事?」

はて、何の事やら?と首を傾げると、一ちゃんは厨房に入りラーメンを持ってきた。

「一緒にどうよ?」

ほれ、と箸を渡される。

「え、一ちゃんの夜食でしょ?せっかくの楽しみなんだから、俺はいいよ」
「その楽しみだから一緒に食べて欲しいのよ、一ちゃんたら」

ね!と湯気の上がるどんぶりを差し出される。

「それじゃ。頂きます」
「はいどーぞ。ま、俺が作ったわけじゃないけどね」

ふー、と冷ましてから麺を口にはこぶ。
深夜のラーメンとは何と罪の味か!

「んー!美味しい」
「だろ?深夜だからこそ…てな」
「悪いなぁ、一ちゃん」
「マスターも同罪っしょ?」
「確かに」

それから夢中になって2人でラーメンを啜った。
途中、一人前にしては多すぎないか?と疑問に思ったが、それぞれ満腹になれるのであれば罪悪感も減るのでまぁいいかと思う。

「ふいー、食った食った」

箸を置き、二人で手を合わせた。

「ごちそーさんっと」
「誘ってくれてありがとう、一ちゃん」

そう言えば、一ちゃんはニッコリ笑った。

「さて、マスターちゃん。お腹がいっぱいになったら次は寝る時間だ。お腹いっぱいだと眠くなるんすよねー」

くぁっと一ちゃんが欠伸する。

「あ、でも今屯所に戻ったらサボってラーメン食ったのバレるな…まして、こんな時間に不健康な物をマスターに食べさせたなんてバレようものなら…おぉ怖っ」

そこまで言ってチラッと一ちゃんが俺を見た。

「あはは、はいはい。マイルーム行こう」
「お、話の分かるマスターちゃんだ」

それからどんぶりを片付け、マイルームに移動した。


「よし!じゃあ仮眠しますかね」

一ちゃんが俺のベッドに横になると、ぽんぽんとベッドを叩いた。
疑問符を頭から出していれば、「いやいや、俺よりマスターちゃんのが仮眠大事だからね?」とベッドに引っ張られた。

「横になってるだけでも疲労は取れますからね。じゃ、おやすみ。マスター」
「え、このまま寝るの?一ちゃん?え、寝た!?」

俺は抱き枕のように背中から抱き締められた状態で身動きが取れなくなった。
小声で「はじめちゃーん」と呼んでみても返事がないあたり、本当に寝てしまったのだろう。
諦めて溜息を吐くが、背中が暖かくて何だか落ち着く。
…ふぁ、と大きな欠伸が出る。
何だか眠くなってきたな。
俺はそっと目を閉じる。

「おやすみ、一ちゃん」

そう声を掛けると、わしわしと頭を撫でられる。
俺はそのまま心地よい眠気に身を委ねた。




ここ数日、ゆっくり眠れたおかげか体調がかなり良くなった。
腕に刺したアンプルの痕もすっかり薄くなった。
途中から気が付いたのだけど、サーヴァントの皆が毎日代わる代わる一緒に居てくれたお陰で安心して眠れていたようだ。
ランドリーで時間を潰していようが、食堂でボケっとしていようが「あれ?マスター」と誰かが必ず声を掛け、「眠れないから一緒に話をしよう?」と俺をマイルームに連れ戻して、寝落ちして朝目覚めるまでずっと見守ってくれていた。
俺の性格をよく知ってる皆は、「マスターの為に一緒に居る」と言えば、俺が遠慮して断るのを分かってるから、あくまで「自分の都合にマスターを付き合わせる」と言う方向性だった。
実際、俺自身も寝不足で不眠症気味だなー…悪夢見たくないな…くらいにしか思ってなかったわけで、身体のSOSには無頓着。
多分、周りの皆からすれば余程酷い顔をしていたのではないかと。
反省、反省。
何はともあれ、皆が俺を見付けるのが偶然なんかじゃなかった事に気付いちゃったし、未だ現在進行形で毎日誰かが一緒にいてくれる訳だけど…暫くはこのまま心配性な皆に甘えようと思う。
王様とかからすれば「自惚れるな、たわけ」と言われそうだけどね。


はー、明日も頑張ろ。
おやすみーーーー



おわり

Comments

  • 七星(ナナセ)
    April 3, 2022
  • dango🍡🍡
    March 25, 2022
  • ねこ田
    March 11, 2022
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