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メタバースはどこへ向かうのか?〜目的なき熱狂の先に残されたもの〜

 2021年、世界は「メタバース」に熱狂した。Meta社の社名変更を契機に、各企業がバーチャル空間を軸とする構想を次々と打ち出し、展示会、広告、採用など、多くの領域で「とりあえずメタバースでやってみる」が合言葉となった。

 それから4年が経った2025年。かつてのブームを知る人々からは、こんな声も聞かれる。

 「結局、メタバースって終わったのではないか?」

 この問いに対して、私たち、株式会社POCKET RDのプロデューサーである香月蔵人は、こう語っている。

 「終わったのは、『メタバースという言葉のハイプ』である。技術やビジョンそのものは、むしろ今こそ成熟の入口に立っていると感じている」

メタバースは鶏か、卵か?

 「メタバース」という言葉は、英語の「メタ(超越した)」と「ユニバース(宇宙)」を組み合わせた造語であり、1992年にニール・スティーヴンスンが発表したSF小説『スノウ・クラッシュ』で初めて登場した。作中では、人々がアバターを通じてインターネット上の仮想空間で生活する様子が描かれている。

 代表である籾倉宏哉は、こうしたメタバースの本質を次のように捉えている。

 「現実世界では自分をうまく表現できない人が、自我を解放し、能力を開花させることができる。それこそが、メタバースの意義である」

 また籾倉は、メタバースを「公園づくり」に例えている。空間を用意するだけでは不十分であり、その中で何ができるか、どんな体験が提供されるかが問われる。遊具だけでなく、休憩スペースも必要だ。継続的に通いたくなる理由と体験の多様性こそが、成功の鍵を握る。

 つまり、メタバースは目的ではなく「手段」であり、本質はその先にいる人間の体験にある。

メタバース設計の分かれ道:日本と世界の違い

 現代のメタバースが成功するか否かは、ユーザーの創作意欲や自己表現欲求をいかに刺激できるかにかかっている。単なる空間提供ではなく、「誰かに見てもらいたい」「褒められたい」といった感情に応える設計が求められている。

 その好例が、2018年に登場したメタバースアプリ「ZEPETO」である。2024年3月時点で登録ユーザーは4億6千万人を超え、自作アバターの投稿・配信を通じて創作と承認欲求が結びついたエコシステムが形成されている。「ZEPETO Studio」を活用することで、「自分にもできる」という感覚が芽生え、ユーザーがクリエイターになる環境が整っている。

 一方、日本ではIP(知的財産)依存型の設計が中心で、ユーザーの創造性を引き出す構造が欠如している。多くのプロジェクトが「空間を作ったのに人が来ない」と悩む背景には、こうした設計思想の違いがある。また、米国などと比べて「試して失敗する」文化が根付きにくいため、メタバース事業も慎重になりがちである。

 「Roblox」や「Fortnite」など、海外で成功している事例には共通点がある。「なぜメタバースでやるのか」という明確な目的設計のもとに、遊び、創作、コミュニティ活動などが自然と組み込まれ、循環する体験として成立している。

 メタバースを単なる「展示空間」ではなく、「自己表現と共創の場」として捉え直す。そこに、幻想を現実に変えるヒントがある。

拡張する「リアル」:三つの新たなユースケース

 こうした反省を踏まえ、私たちは「現実世界を補完・拡張するメタバース」を提唱している。仮想世界そのものではなく、現実の社会課題や体験のハードルをどう取り除くかに主眼を置いたアプローチである。

 籾倉が語る、メタバースが力を発揮するテーマは、以下の三つである。

教育(Education)
 コミュニケーションに困難を抱える子どもたちにとって、メタバースは新たな居場所となる。AIによる言語の橋渡しを活用し、互いを尊重しながらつながる仕組みが求められている。

観光(Digital Twin)
 失われた場所を仮想空間で訪れることで、歴史や文化を「自分の視点」で歩くことができる。これは極めて高い体験価値をもたらす。

若者の創造性(Freedom)
 若者たちは、コントローラー一つで都市を再現するスキルを持っている。そうした創造力を支える環境づくり、そして成果をブロックチェーンで証明する仕組みが、将来の武器となる。

 「私たちが目指しているのは、単なる機能としてのメタバースではなく、人の可能性を引き出す『意味ある場』の設計である」

 現在、私たちは文化財団や教育機関、ダイバーシティ推進企業との連携を進めており、社会的文脈とメタバース技術の交差点から、新たな公共性の創出を目指している。

 プロジェクトの共創相手として重視しているのは、空間や技術ではなく「体験を設計できる」クリエイターの存在である。

 「仮想空間に『意味』を与えるのは技術ではなく『人』である。誰と組むかによって、空間の価値はまるで変わってくる」

 私たちは、プロジェクト見学を通じて、現場の取り組みを体感いただく場を設けている。「興味はあるが迷っている」「再チャレンジしたい」「何から始めればよいかわからない」——そうした方々に向けた、小さな「入口」がここにある。


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