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デジタル庁GCASガイド

1. はじめに

2026/04/22 公開

1.1 マネージドサービス活用が求められる背景

クラウド環境への移行は、単なる「インフラの引っ越し」ではない。オンプレミスとクラウドでは、インフラの「作り方」と「使い方」の前提が異なるため、オンプレミス環境で培ってきた設計・構築・運用の方式をそのまま持ち込むと、コストや運用負荷がオンプレミス時代と変わらない、あるいは高くなるケースがある。

オンプレミス環境では、監視・ログ管理・バックアップ・セキュリティ・データベース・ストレージといったインフラ構成要素をすべて自前で構築・運用する必要がある。各サーバーの構築から専用ソフトウェアのライセンス調達、ハードウェアの保守・OS管理・パッチ適用まで、継続的な維持管理が伴う。これはオンプレミスでは避けられないものであり、それ自体は問題ではない。

ただし、このオンプレミス方式をクラウドにそのまま持ち込むと、クラウド移行本来のメリットを享受することが難しい。クラウド上に監視サーバーを構築すれば、OSパッチ適用・バージョンアップ・ライセンス更新・障害対応をシステム稼働中は担い続けることになる。また、これらのサーバーは常時稼働が前提となるため、従量課金の恩恵も得られにくい。結果として、コストも運用負荷もオンプレミス時代と大差ない、あるいは高くなる状態が続く。

クラウドには、こうしたインフラ構成要素を 「作らずに使える」 マネージドサービスとして提供する仕組みが備わっている。マネージドサービスを活用することで、ハードウェア・OS・ミドルウェアの管理はCSPの責任範囲となり、利用システム側はパラメータ設定に集中できる。また、多くのマネージドサービスはリクエスト数・データ量・稼働時間に応じた従量課金であるため、実際の利用量に比例したコストになる。

本ガイドは、オンプレミス環境で個別に構築・運用してきたインフラ構成要素をクラウドのマネージドサービスに置き換えることで、 「作って運用し続ける」構造から「作らずに使う」構造への転換 を実現するための実践的な手引きを提供する。

1.2 本ガイドで得られること

本ガイドを活用することで、以下の3点が得られる。

  • コスト・運用負荷の削減方針が明確になる:監視・ログ管理・バックアップ・セキュリティ・データベース・ストレージの各領域について、オンプレミスの既存方式をクラウドのマネージドサービスに置き換えるための移行方針と判断基準を示す
  • クラウド移行時の設計判断ができるようになる:各領域について「設定のみで対応可能」「追加作業あり」「設計変更が必要」「廃止検討」の4分類の移行方針表を用いて既存方式を整理しており、自システムの各方式を表に当てはめることで設計判断が容易になる
  • 実践状況を自己点検できる:付録のセルフチェックリストにより、事業者は設計・構築・運用の各フェーズで対応状況を確認でき、職員は事業者への確認・提案評価に活用できる

なお、本ガイドは、ガバメントクラウドにおけるモダン化の取り組みのうち「マネージドサービスの活用」に焦点を当てたものであり、アプリケーションや運用方式の改修を最小限に抑えたクラウド移行(R1:Replatform)(*1)を対象としている。

(*1)R1(Replatform)、R2(Rebuild)の詳細については、「ガバメントクラウド概要解説」の「6章 必須検討事項」を参照のこと。

1.3 想定読者

本ガイドの想定読者とガイドの活用方法を、表1-1に示す。主な読者はインフラの設計・構築やシステム運用を行う事業者だが、行政機関の職員も計画策定や事業者提案の評価に本ガイドを活用できる。

表1-1 本ガイドの想定読者

読者対象ガイド活用方法
事業者
(主な読者)
システムアーキテクト・インフラ設計者・アプリケーション開発者マネージドサービスを活用したシステムの設計ポイントの確認および設計内容のチェックに活用する。
システム運用担当者クラウドを活用した運用設計・運用負荷軽減の検討に活用する。
行政機関の職員
PMO・PJMO・情報政策担当課長移行計画の策定・予算要求・事業者提案の評価に本ガイドを活用する。
情報システム担当職員・標準準拠システム担当課職員要求仕様の作成・事業者とのコミュニケーションに活用する。

1.4 前提知識

本ガイドは、基本的なITシステムの構成要素(サーバー、ネットワーク、ストレージ)やオンプレミス環境でのシステム運用の基礎知識を前提とする。

  • 事業者: 事業者は、各CSPの提供するサービスの基礎知識があることが望ましい。知識の補完には各CSPの提供する無料学習教材等の活用を推奨する。
  • 行政機関の職員: 行政機関の職員は、クラウドサービスの詳細な技術知識は必須ではない。本ガイドを通じてクラウド活用の考え方や効果を理解し、事業者との円滑なコミュニケーションや提案評価に役立てていただきたい。

1.5 用語集とセルフチェックリスト

マネージドサービス活用実践ガイドの用語集とセルフチェックリストについては、以下の別紙を参照のこと。