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視座が低いと言われる人の9割は、"壮大さ"を足そうとして失敗する
上司につっこまれて「視座が足りない」と感じることが、よくありました。クライアント業をやっていて、相手の役員の方の言っていることについていけないことがありました。
自分なりには頑張って資料を作り、数字も押さえ、ロジックも通している。それでも「視座が低い」と返ってくる。
  • もっと大きな話をしなきゃいけないんだ
  • 経営視点を持たなきゃいけないんだ
  • もっと壮大なビジョンを語らなきゃいけないんだ
まったく違ったんです。
視座は、"大きな話ができる力"ではなく。 視座とは、自分の役割が要求する範囲まで、判断の「主語」を引き上げられているか、それだけの話です。
当時の自分にとっては、「視座」は死活問題でした。だからこそ「視座とは何か」を真正面から考え続けてきたのですが、分解してみると、思った以上に単純なものでした。
今日はその分解を、そのまま共有します。いますぐ使える話なので、よろしければご活用ください。

視座とは、結局のところ何なのか

視座を定義すると、こうなります。
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自分を主語にしていれば、判断に使う視点は自分の半径に留まります。その結果、役割が要求する視野に届かず、「視座が低い」と映ります。
視座の高さとは、「大きな話ができる力」ではありません。自分の役割が要求する範囲に、判断の主語を引き上げられているか、です。
よく分からないですよね。続けます

「視座」という言葉は、いきなり咀嚼するには難しい

いまの定義をいきなり聞いて視座に困っている方が「なるほど明日から視座を上げよう」と思えることは、少ないはずです。
視座の理解には、視界3兄弟の物語が必要です。「視点」と「視野」です。
  • 視点:判断に使う「ものさし」の種類と数
  • 視野:視点がばらけた結果としての、判断対象の広がり
まずこの2つを分解してから、視座の話に戻ります。
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視点 = 判断の「ものさし」を何種類持っているか

視点とは、ひとつの事象を評価するときに当てる、判断の"ものさし"のことです。
同じ「このプロモーションをやるべきか?」という問いでも、人によって当てるものさしは違います。
  • ある人は「今期の数字に効くか」で測ります。
  • ある人は「3年後のブランド資産として残るか」で測ります。
  • ある人は「現場の稼働負荷が現実的か」で測ります。
  • ある人は「他部署のKPIと競合しないか」で測ります。
  • ある人は「この案件が自分のキャリアに何を残すか」で測ります。
同じ問いに対して、当てているものさしが1本なのか、5本なのか。これが、視点の「多さ」です。
ものさしが1本しかない人は、そのものさしの中で正しい結論を出します。しかし他のものさしで測れば真逆の結論になるかもしれない。その可能性が、そもそも検討の俎上に上がらないのです。
視点が多い人というのは、ひとつの結論を出すまでに、違う種類のものさしを何本か当ててから決める人のことです。

視野 = どの範囲まで「自分の判断対象」に含めているか

視野とは、自分が"自分ごと"として判断の対象に含めている範囲のことです。
ここでいう「判断の対象」というのは、言い換えれば、その案件について「自分で責任を持って考えるべきこと」として扱っている範囲のことです。
たとえば、あるプロジェクトのトラブルが起きたとき。
  • 「自分の担当箇所」だけを自分ごととして捉えている人
  • 「チーム全体の納期影響」まで自分ごととして捉えている人
  • 「クライアント先の社内事情」まで自分ごととして捉えている人
  • 「取引先・業界構造の変化」まで自分ごととして捉えている人
同じトラブルを前にしても、「自分が考えるべき対象」として扱っている範囲が、まったく違います。
視野が狭いというのは、情報を知らないということではありません。本来疑うべき変数が、"そもそも自分の考える範囲に入っていない"状態のことです。
知らないのではなく、意識の俎上に上げていない。ここが、視野の正体です。

具体例:同じ「プロモーション検討」でも、主語が変わる

ここまでの話を、具体的な場面に落としてみます。ある商品のプロモーション施策を検討している場面です。
同じ「プロモーションを検討する」という一点の意思決定でも、担当者のレベルによって、そこに当てている視点の種類がまったく違ってきます。
Level.1〈担当者〉:施策そのものを組み立てる視点
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  • 顧客体験 / 広告テック / レポーティング方法
この3つは、プロモーション施策を「中身として成立させる」ための視点です。何を、どう届け、どう測るか。
ここだけで検討を終える人は、施策を動かす手前にある変数を、まだ見ていません。
Level.2〈リーダー・課長〉:施策を「通す・動かす」視点が加わる
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レベル1に加えて、
  • 外注選定(人間性/他社を試す)/ キャリア実績作り / 先進事例 / 部門間承認 / 予算限度
ここで起きているのは、視点の"ジャンル"の追加です。
施策の中身(レベル1)とは別に、「この施策を社内で通し、外部と組んで動かすには何がいるか」という実行レイヤーの視点群が足されています。
視点の数が増えただけではなく、見ているジャンルが増えた。ここがポイントです。
Level.3〈部長〉:人と組織を動かす視点が加わる
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さらに加えて、
  • 業務フロー / スキル / 育成 / モチベーション / 成果プレッシャー / 同期内勝負
再び、視点のジャンルがジャンプしました。
レベル2までは「施策」と「実行」の話でした。レベル3では、「施策を動かすメンバーが、どういう状態で仕事に向き合っているか」という、人・組織のレイヤーが加わっています。
プロモーションという一点を判断するために、検討対象に「人の内面」が入ってきた。
Level.4〈本部長〉:経営と政治の視点まで射程に入る
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さらに加えて、
  • 会社の経験値 / 自社戦略 / マーケ戦略 / ブランド価値 / 役員感情 / 出世の足掛かり / 家族自慢 / 個人のコダワリ / 関係者のやる気
最後のジャンプは、「施策を通じて会社の何を動かしたいか」(経営)と、「その意思決定に関わる人たちが、何を背負って生きているか」(政治)の領域です。
レベル1の担当者から見れば、「なぜプロモーションひとつの判断に、役員の感情や家族自慢まで?」と感じる話でしょう。

ここまでを一度整理します

整理①:視点は"数"ではなく"ばらけ具合"で効いてくる

視点の多さ = 判断の「バランス観」が変わる
ものさしが増えるほど、偏った結論に走らなくなります。 ただし、使うには"知っておく"必要があります。知らないものさしは、当てられません。
視野の広さ = 視点の「ばらけ具合」で決まる
視点は、数を増やしても視野は広がりません。同じジャンル内で10本積んでも、視野は1つ分のままです。 ジャンルをまたいで"ばらけている"ことで、視野が広がります。
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すべての視点を深く知る必要はない
ジャンルの幅があると、「こういう変数もありそうだな」と想像が働くようになる。 この想像力こそが、視野の実態です。

整理②:視座は、役割との"相対値"で測られる

視野の話をしたうえで、もう一度、視座の定義に戻ります。
視座 = ポジション/役割に対して期待される「視野の広さ」
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ここで大事なのは、視座は絶対値ではない、ということです。 役職ごとに「このポジションなら、このくらいの視野が当然見えているはず」という期待値があり、それを満たせていないと、「視座が低い」と感じられる。
役員は、平社員から見れば視座が高く映ります。しかし、同じ役員レイヤーから見て「その役職なら持つべき変数を、この人は持っていない」なら、視座が低く映ります。
つまり、視座を上げるとは 今の自分の役割に求められる視野まで、判断の主語を引き上げること、です。

整理③:同じ「プロモーション検討」でも、主語が変わる

Level.1からLevel.4まで、実際に主語がどう変わっていったかを並べてみます。
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  • Level.1〈担当者〉
主語は「私の施策」。自分の手の届く範囲で成り立たせることが関心。
  • Level.2〈リーダー・課長〉
主語は「自分が回すこの案件」。動かすための段取りと実行可能性まで関心が広がる。
  • Level.3〈部長〉
主語は「自分が預かるチーム・組織」。人と組織を通じて結果が出るかが関心の中心。
  • Level.4〈本部長〉
主語は「自分が預かる事業・会社全体」。施策は会社の意思決定の一部であり、経営と政治の文脈で捉えられる。
同じ「プロモーションを検討する」という行為でも、主語が変わると、検討対象に含まれる変数の範囲がまるごと変わる。 そして、その人の役割が要求している主語と、実際に使っている主語がズレる。それが、「視座が低い」の正体になります。
ここまでが、視座という概念の分解です。では、この分解を前提に、実際の現場で「視座が低い」と判定される場面を見ていきます。

怖いのはここから:上司は"無意識に"視座を判定している

CASE.1 マーケ本部長クラスに提案するとき
本部長というポジションが、当然見ているであろう視野は、たとえばこれくらいあります。
  • 施策レイヤー:顧客体験 / 広告テック / レポーティング
  • 実行レイヤー:外注選定 / 予算限度 / 部門間承認 / 先進事例
  • 組織レイヤー:業務フロー / スキル・育成 / モチベーション
  • 経営レイヤー:自社戦略 / ブランド価値 / 会社の経験値
  • 政治レイヤー:役員感情 / 出世への影響 / 関係者のやる気
もし「施策レイヤー」だけを語って提案した場合、本部長の頭の中では、組織・経営・政治の変数が未回答のまま残ります。
  • この提案で役員は納得するか?
  • 動かす現場のモチベーションはどうなるか?
  • 自分の次のポジションに響かないか?
本部長は、これを自分で埋めるしかなくなる。 そして、無意識に提案を持ってきた人に対して「この担当者は視座が低い」と判定します。
逆に、これらのレイヤーまで触れた提案を持ってくれば、本部長は「自分の仕事を代わりに考えてくれている」と感じます。
さらに本部長が気づいていない視点を1つでも足せれば、「この人は信頼できる」と判断されます。
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CASE.2 上司とのチーム定例会
上司の役割が要求している視野は、これくらいあります。
  • チーム全体:他メンバーの進捗との兼ね合い
  • 上位報告:部長・役員への報告内容
  • 人の状態:あなた自身のコンディション / 成長課題
  • 先の読み:来月・来四半期への影響
  • 横の連携:他部署・他チームとの調整
そして、よくある進捗報告の中身は、こうです。
  • 今週やったタスク
  • 数字の進捗
  • うまくいかなかった点と来週の対応
部下が「自分のタスクの話」しかしていないと、上司は残りの視野を、自分の頭の中で埋めるしかなくなる。
このとき上司の脳内で起きていることは、 「この部下は、自分のことしか見ていないな」=ここで「視座が低い」という判定が下されます。
逆に、これらの視野まで自分から差し出せば、「この部下は、自分の仕事を一段上から見ている」と感じます。
同じ定例会で、同じ時間を使って、評価が真逆になる。これが「視座」の怖さです。
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視座にまつわる誤解

話を進めるうえで、いくつかの誤解をほどいておきます。
  • 視座が問題になるのは、「低い」ケースが多い。つまり視野が狭い(自分の周りでしか物事を捉えられていない)ということです
  • 視座が高くて困ることはありません。ただ、目の前の作業やるべきことが疎かになることはある
  • 視座が高い ≠ 意識が高い。「意識」はあくまで何かひとつの視点にすぎません
  • 視座が高い(適切)ことと、そのポジションを果たせるかは別の話。視座はあくまで認識だけの話です
  • 「この役職には、この視野が求められる」は明文化されていません。なので、お互いの過度の期待が不幸の温床になっています
  • 学生の部活で「勝つために、頑張る」だけでは視座は低い。「県大会で勝つために、AとBとCが必要」となって、はじめて視座が一段上がります
  • 視野の中でも軽重があります。その人が気にしているポイントがあるはずです
  • 無駄に視点が多ければよいわけでもありません。プロモーションの提案において、世界平和の観点は(多くの場合)不要です
視座とは、「壮大さ」ではなく「適切さ」の話。 ここだけは、押さえておいてください。

では、視座を磨くには何をすればよいのか

視座を上げる所作は、2つに絞れます。
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1. 越境(Step outside your field)

視野の拡張は、ジャンルの越境とイコールです。 同じ領域を深掘りしても、視点の「数」は増えますが、「ジャンル」は増えない。
具体的には、こういうことです。
  • 社内の同質な人間関係だけで情報を回さない
  • 業務外の趣味・コミュニティを持つ
  • 同じ業界・同じ職種の勉強会ばかりに行かない
  • 異なる職種/業界の人と定期的に接点を持つ
一見、仕事に関係なく見える接触の積み重ねが、ジャンル横断の視点を生み、結果として視野を広げます。
「仕事のために仕事の情報だけ集める」は、実は視野を最も狭める習慣です。

2. 先読み(See what they see)

越境が"自分を広げる"所作なら、先読みは"相手に潜る"所作です。
相手の視野を、ひたすら調べる・想像する・掘る・掘る・掘る。 相手がまだ言語化できていない場所まで、先に踏み込む。
相手の視座を超えられれば、相手自身がまだ言語化できていない変数を、こちらから差し出せるようになります。 それが「この人は視座が高い」=信用に直結します。

最後に小さなワークを

ここまで読んでくださった方に、2つだけ問いを残します。

ワーク①:増やしたい視点を書き出してみる

  • 今の自分が、強化したい「ものさし」は何ですか?
  • 逆に、自分が持っていない/弱いと感じる視点は何ですか?
  • その視点を増やすために、今週から始められる行動は?(接触する情報源・人・場)
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ワーク②:相手の視座を書き出してみる

  • 今、あなたが提案・報告している相手を1人思い浮かべてください
  • その人のポジションで、当然見えているはずの視点は何ですか?
  • そのうち、あなたが今カバーできている視点はいくつありますか?
  • 次回のコミュニケーションで、新たにカバーしたい視点は?
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「視座を上げる」は、壮大な修行ではなく、この2つの問いを定期的に回すことです。

まとめ

改めて、
  • 視点 = 判断に使う「ものさし」の種類と数
  • 視野 = 視点がばらけた結果としての、判断対象の広がり
  • 視座 = 自分の役割(主語)が要求する視野
視座は、大きな話ができる力ではありません。 自分の役割に求められる範囲まで、判断の主語を引き上げる力です。
  • 視点を、ジャンルをまたいで増やす
  • 相手の役割が要求する視野を、先に想像する
この2つを習慣にできれば、あなたの判断は「信用される判断」に変わります。


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