家庭内性暴力は被害を訴えることが難しく、日本での実名告発は極めて少ない。福山里帆さん(26)は2年前、10代のときの実父からの性交被害を実名で告発し、昨秋に一審判決が出た。悲しみ、絶望、葛藤を抱えながら、踏み出した福山さんの思いとは。何が被害者たちの声を封じてきたのか。
――一審では有罪判決が言い渡されました。
「気持ちはすごく軽くなりました。加害者が悪いということを公的に裁判所に認めてもらった。報われたと思いました」
――刑事告訴からこの判決まで、2年4カ月かかりましたね。
「その間、気持ちは乱高下しました。まずつらかったのは、警察で被害内容を具体的に話さなければならなかったことです。当時はほぼ毎日、父が鍵を開けて家に入ってくる悪夢を見ました。ソファで寝ていて金縛りで体が動けなくなったところで目が覚める。怖くなって家中の鍵を確認しました」
「父が無罪を主張したため、私は法廷で証人尋問に立たなければなりませんでした。事前に検察と尋問の打ち合わせを何度かしたときも詳細に話さなくてはいけませんでした。かなり配慮はしてくれたのですが、14、15歳のころに戻ったように映像が思い浮かび、つらかったです。打ち合わせの前日は心が乱れて自分をコントロールできませんでした。終わった後は眠れなくなり、フラッシュバックに襲われました。なかなか普段の生活に戻れませんでした」
公判の経過
大門広治被告(54)は2016年に当時16歳だった実の娘・福山里帆さんに性交したとして、24年に準強姦罪で起訴された。一審で被告は「娘が嫌がる様子はなかった」と否認し、抵抗が著しく困難な「抗拒不能」の状態ではなかったとして無罪を主張した。
富山地裁は、中学2年から高校2年の間に被告が繰り返し性的暴行を加えたと認定。福山さんが被告の経済的支援を必要として抵抗が難しいと被告は認識していたとして、昨年10月に懲役8年を言い渡した。被告は判決を不服として控訴し、今月、控訴審の第1回公判がある。
17年に刑法が改正され、現在は、父から18歳未満の子どもに対する性交は、抗拒不能だったかは問われず監護者性交罪が成立する。
――体調を崩され、証人尋問の期日が延期になりましたね。法廷に実際に立ったときはどうでしたか。
「思っていた以上に、大変でした。反対尋問は公平な裁判のために必要だから、厳しい質問が来るだろう。そう私の弁護士や夫から説明され理解していたつもりでしたが、『望んでいたのでは』というようなことまで言われました。向こうの弁護人も仕事だから、と思うようにして耐えました」
記事の後半では、福山さんのインタビュー動画がご覧いただけます。また、被害を受けた多くの子どもたちの治療にあたってきた精神科医の亀岡智美さんが、家庭内性虐待の起こるメカニズムや、福山さんの闘いの社会的意義などについて語ります。
苦しんでいる人の役に立てれば
――刑事告訴をしたのは、23歳のときでした。
「高校2年のときに養護教諭…