【母性神話】「シングルマザーの子よりシングルファザーの子の方が事件に遭う確率が低い」は本当か?
小学生の男の子が、母親の再婚相手である養父に命を奪われるという、痛ましい事件が起きました。
当然ながら世論の嘆きや批判は犯人である継父に向かいますが、中には「母親が再婚しなければ防げたことだった」という意見もあります。
また、「シングルマザーの子より、シングルファザーの子の方が事件に遭いにくい」といった、根拠に乏しい話も一部飛び交っているようです。
これらの噂の根底には「母性神話」があるのではと思いました。
「女性には母性があるから子ども(自分の子も他人の子も)を愛し、大切に育てるが、男性にはそれがないので、血のつながりのない子どもを無碍にしがち」といった偏見が含まれている気がします。
今回のような反応の背景には、この「母性神話」と、それに結びついた性別役割の固定観念が強く影響している可能性があります。
■母親だけが責められやすい構造
今回のような事件で
「再婚しなければ防げた」
という言説が出てくるのは、一見すると「結果論の指摘」のようですが、実際には
母親は常に子どもを守りきるべき存在
男性(特に継父)は危険かもしれないから女性が見抜くべき
という前提が含まれています。
これはつまり
「母親は完璧なリスク管理者であるべき」
という過剰な期待であり、現実的にはかなり酷なものです。
■「母性神話」の影響
ジェンダー研究などでよく指摘される「母性神話」とは、
女性は生まれつき子どもを愛する
母親は自己犠牲的であるべき
子どもの不幸は母親の責任
といった観念です。
この枠組みで事件を見ると、どうしても
「なぜ見抜けなかったのか」
「なぜ再婚したのか」
と、母親に原因を求める方向に話が流れやすくなります。
しかし本来問われるべきは
「加害者がなぜその行為に至ったのか」
であって、被害児童の保護者を「後出しで責めること」ではありません。
■「血がつながっていないと危険」という短絡
「継父だから危険」という話も、現実の一部を極端に単純化しています。
確かに統計的には、家庭内虐待において「血縁関係のない大人」が関与するケースが一定数あるのは事実のようです。
しかし、
ストレス要因
経済状況
家庭内の孤立
支援の不足
といった複合的な要因の結果です。
にもかかわらず、
「男性は母性がないから危険」
「再婚家庭は危ない」
といった説明にしてしまうと、問題の本質(環境や支援体制)から目をそらすことになります。
■シングルマザー vs シングルファザー論の危うさ
「どちらの方が安全か」という議論も、かなり雑です。
そもそも
サンプル数が大きく異なる
家庭の背景条件が違う
支援制度の利用状況も違う
ため、単純比較はほぼ意味を持ちません。
それでもこうした言説が広がるのは、
・人は“分かりやすい原因”を求めたがる
・不安な出来事を「特定の属性の問題」に押し込みたい
という心理が働くからです。
■本当に見るべき視点
この種の事件で重要なのは、
個人の資質(加害者の問題)
家庭環境(孤立・ストレス)
社会的支援の有無(相談・介入の仕組み)
といった多層的な要因です。
「母親が再婚したから」という一行で説明できるような単純な話ではありません。
■少し踏み込んだ見方
やや厳しい言い方になりますが、「母親が悪いのでは?」という言説には
「自分は同じ状況でも失敗しないはずだ」と思いたい心理(=コントロール幻想)
が含まれていることも多いと思います。
ただ、現実の人間関係はそんなに予測可能ではありません。
母性神話は今も無意識に影響している
その結果、母親に過剰な責任が押し付けられやすい
しかし本質は個人と環境の複雑な問題
という構造があるように思えてなりません。



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