2025-11-18

【外務省】1月に就任したばかりの国家安全保障局長が退任

外務省内で、国家安全保障局(NSS)を巡る人事が波紋を広げている。高市早苗首相は、今年1月に就任したばかりの岡野正敬局長を退任させ、後任に市川恵一前内閣官房副長官補を充てた。NSS局長は最低でも3年務めるのが一般的で、1年にも満たない交代劇は異例。市川氏は10月10日に駐インドネシア大使の人事が発令されたばかりだった。

 イレギュラーな人事の背景について、外務省幹部は「高市首相が安倍晋三元首相の手掛けた外交スタイルに強引に戻す布石だ。外務省系の人事の流れもトップダウンで変えた」と驚きながら解説する。

 岡野氏は総合外交政策局長、外務事務次官など同省のエリート畑を歩んだが、省内では林芳正元外相と距離が近い一派とみなされてきた。石破茂政権下でNSS局長に就いたのも、官房長官だった林氏の強い推薦が効いたといわれる。

 一方、市川氏は外務省時代、安倍政権がアジア外交で基軸とした「自由で開かれたインド太平洋」構想を起草した人物として知られる。インドネシア大使への異動は外務事務次官になるためのステップと評する向きもあったが、「岸田文雄・石破政権下でラインから外された」(同省幹部)という見方が多かった。

 高市首相は、この流れを力技で変えたわけだ。高市氏は周囲に「林氏の影響力が強い岡野氏より、対中国政策で毅然と対応できる市川氏に外交・安全保障の司令塔となってほしかった」と打ち明ける。

 別の同省関係者は「今後の省の幹部人事にも、今回の高市首相の荒療治は影響を与えるはずだ」と神妙な表情で語る。政権交代に近いインパクトを与えた首相交代劇は、外務省内の勢力図もひっくり返したのだ。

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2026-04-16

中国とどう向き合うか? 答える人 前駐中国大使 立命館大学教授・垂 秀夫

垂 秀夫・前駐中国大使 立命館大学教授

現在の米中関係は短期的には「相思相愛」



 ─ 現在の米中関係についてどう見ていますか。

 垂 米中関係は一見対立しているように見えても、「米中ディール」があるかも知れないと言われるように、利害調整と競争が交錯している状態だと言えるでしょう。単純な対立関係だけとは言えないと思います。

 現在、米中は短期的には、相互に安定を求める関係にあると見ています。いわば一種の「相思相愛」とも言える局面です。もちろん対立している部分はありますが、お互いに経済面を中心に簡単には喧嘩できない理由もあります。

地政学リスクに直面するJALがマイルなどの「非航空事業」に注力

 ─ 米中の狭間で日本外交は難しい時代になっています。

 垂 中国にとって米国は最も重要な国であり、その重要性が増す中、対日関係の重要性は相対的に低下していると思います。日本は、米中関係の一つの従属変数のような存在だと見られています。

 米国もまた日本も含む同盟国や友好国に対して高い関税を課すなど、自国優先の姿勢を強めています。そうした中、日本は米中の間で、自らの戦略を問われる局面に入っているのです。

 ─ 高市首相の「台湾有事は日本の存立危機」発言は物議をかもしました。

 垂 そうですね。あの発言を契機として、日中関係は今、極めて厳しい状況になっています。

 気を付けなくてはならないのは、これまで日中関係は「日中友好」という言葉に象徴されるように、感情的に語られてきた面が強いことです。現在の「中国はけしからん」といった議論も、本質的には同じ構造にあります。感情論を排した議論が必要です。

 ─ 日本企業にとって中国とは結びつきが強く、切っても切れない関係です。

 垂 経済面から見ると、中国は大きなマーケットですし、距離的に近いこともあり、関係を断ち切る、いわゆるデカップルすることは現実的ではありません。一方で日中友好だけを叫んでいると、大きなリスクに直面します。資産接収や技術流出など、実際これまで何度も深刻な損失を被ってきました。

 ─ 中国とビジネスを行うには、常にリスクを考えておかなければなりません。

 垂 大きなリスクが伴うということを強く認識する必要があります。以前「チャイナ・プラス・ワン」と言われましたが、それを単なる掛け声ではなく、実際の経営判断として徹底することが必要です。

 また、チャイナリスクだけではなく、日本企業だからという理由で不利益を被るというという「ジャパンリスク」も考えなくてはなりません。この二つのリスクを前提に経済的に付き合っていく必要があるのです。

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2026-04-15

日米首脳会談をどう総括し、イラン情勢をどう読み解くか? 森本 敏・元防衛大臣に聞く!

森本敏・元防衛大臣

日本はミサイルの共同開発・共同生産にも言及



 ─ 今回の日米首脳会談をどう総括し、今後のイラン情勢をどう読み解くか。森本さんは現状をどのように受け止めていますか。

 森本 今回は、米国とイスラエルによるイラン攻撃が開始して3週間経った段階での日米首脳会談となりました。

望月晴文・元経済産業事務次官に聞く!『揺らぐ世界秩序の中で、日本の立ち位置は?』

 米国の関心はホルムズ海峡の封鎖を受けて、日本は何をしてくれるかという点にありましたが、日本は停戦ができていない状況下での機雷掃海、船舶護衛などは現行法令下では無理と受け流して、ミサイルの共同開発・共同生産、小型原子炉(SMR)の建設、レアアースなどの調達安定化のための対米投資に貢献していくことで合意しました。

 今回の戦争で活躍している兵器はドローンとミサイルです。イランは「シャヘド」というドローンを少なくとも4000~6000機保有しており、すでにドローンを2100機以上、弾道ミサイルを900発以上発射したと言われています。

 ところが、シャヘドは、1機2万ドル(約320万円)くらいですが、米軍の迎撃ミサイル「パトリオット」やトマホーク巡航ミサイル、THAAD迎撃ミサイルは100~200倍(パトリオットは400万ドル、6・4億円)くらいする。コストがあまりにも非対称的である上に、生産量が全然違う。

 パトリオットは年間600発ほど生産でき、これを2030年までに2000発以上にする計画ですが、イランのドローンは1カ月で1万機以上生産できます。しかも、米軍はすでに半分以上のミサイルを撃っており、生産量が全然間に合っていません。

 今回、日本は米国に対してミサイルの生産量を4倍にすると約束しました。戦争が長期化すれば、弾薬とミサイルの確保は非常に重要になってきます。しかし、今後はミサイルよりレーザー波・マイクロ波をつかって撃墜するシステムの開発を進めるべきです。

 もう一つは、日米首脳会談の直前に、日本や英仏など6カ国が共同声明を発表しました。欧州は日本の立場をよく理解してくれたし、欧州の主要国と日本が強固な関係で結ばれていることの重要性が示せたと思います。さらに、イランとの友好関係は日本にとって極めて重要な資産であり、これを発展させていくべきです。

 ─ 一定の成果があったと見ていいですか。

 森本 ただ、今回の首脳会談では、米国側も日本の憲法や法制度を理解していますので、お互いに国際法上どうなのかとか、武力行使はどこまで許されるのかといった話はしませんでした。

 その意味では、うまく振る舞ったと言えるかもしれませんが、ホルムズ海峡の安全をどう確保するか、戦争をどう収束させるかに関しては、明確な答えもなく、また、進展を図る手段も見つからなかったと思います。

 ─ そこは冷静に見ておく必要がありますね。

 森本 当初、トランプ米大統領は今回の戦争について4~6週間、ヘグセス米戦争長官は8週間程度かかると言っていました。この時点では、ヘグセス氏の方が作戦計画を正確に知っていたのかもしれません。

 おそらく……。

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