常に盤上を支配していた萬燈夜帳は、その時、己の呼吸の乱れに気づいた。
腕の中にいる九条比鷺は、もはや完全に彼の所有物だ。だが、心酔しきったその瞳で見つめられるたび、夜帳の胸を焼くのは勝利の悦びなどではなく、この男を未来永劫、失わぬよう繋ぎ止めるための、無様なまでの焦燥だった。
比鷺の理性が剥がれ落ちるのと呼応し、夜帳が被り続けてきた余裕の仮面もまた、比鷺の熱い吐息によって無残に溶け落ちていく。
――共依存と呼ぶには、あまりに甘美。あまりに幸福。
九条比鷺という存在に、萬燈夜帳もまた、満たされ、溺れていた。
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