第1回 株でなかなか儲けられない。その理由にはココロの罠があった!

第1回 株でなかなか儲けられない。その理由にはココロの罠があった!

投資は「感情」ではなく「勘定」で動け! 大江 英樹こばかな

2018.6.07

誰だって株式投資をする時に期待するのは儲けを出すこと。しかし実際にはなかなかうまくいかないことが多いものです。それなりに勉強して投資したつもりでも、予想通りにいかないと不安な気持ちになったり、くじけそうになったりします。この理由は投資家自身の心の中にいくつもの大きな罠が潜んでいるからなのです。それは一体どんな罠なのでしょう? そんな心理の罠を研究するのが「行動経済学」です。このコラムでは行動経済学を通じてそんなココロの罠について解明していきます。これを読めばココロの罠に気付き、損を避けられるようになるかもしれません。

損したくない人はビュッフェで胸焼けする

では、具体的にどんなココロの罠が潜んでいるのか考えてみましょう。人は誰でも損をするのが嫌いです。これは当然なのですが、問題は「あまりにも嫌いなために結果としてもっと損をしてしまう」ことになりがちだということです。例えば食べ放題のランチビュッフェに行くと、「何とか元を取ろう」としてつい食べ過ぎ、後で胸焼けしたりする、ということはよくあります。これは「元を取る=損をしない」という思い込みから来る失敗です。ランチビュッフェというものはそもそも元を取るのが不可能な価格設定になっています。でなければそのレストランは潰れてしまうからです。したがって、あなたが高校のラグビー部員でもない限りは、好きなものを腹八分目で食べるのが最も合理的な行動なのです。

競馬で大負けしている人がとるべき「正しい賭け方」

行動経済学では「人は同じ金額でも儲かる喜びよりも損する痛みの方がはるかに強く感情を揺さぶられる」という心理(損失回避性)があるとされています。実際に心理実験によれば、儲かった時と損をした時を比べると、例えその金額が同じであっても損をする心の痛みの大きさは儲かった心の喜びよりも2倍以上大きいと言われています。その結果どんな行動に出るかというと、「利益が出ている時には確実性を好み、損失が出ている時には賭けに出たがる」という傾向となります。つまり人は“損をする”ことが何よりも嫌いなので、利益が出ていれば、すぐ確実に利益を確保しておこうとするのです。


逆に損が続くと、何とか一発逆転を狙おうとします。例えば、競馬に出かけて朝から負け続けた場合、最終レースでの最も正しい賭け方は本命を買って勝つ確率を高め、損を少しでも少なくすることのはずです。ところが多くの人が最終レースでは大穴を狙いに行きます。そして結果はさらに損を拡大してしまうのです。これは損を嫌うあまり、何とか取り返したいと思う心理がそうさせるのです。

なぜ「十勝一敗」でも株で損をするのか?

株を買って上がった! さてあなたならどうする?
①下がったら怖いので利益確定のために売る
②うれしくなって、さらに買い増しをする

では、上記のケースではどんな心理が働いているのでしょうか?
冒頭の設問で①の行動を取る心理を見ていきましょう。買ったときよりも株価が上がると利益が出ていますから、「せっかく儲かっているのに、売らずに下がってしまって利益を逃してしまっては……」となるのを恐れるのです(損失回避性)。結果として利益確定の売りに走る、という行動を取る人が多くなります。この「ココロの罠」にハマって、少し上がったらすぐ売る、という行動を繰り返すのは危険です。なぜならいくら小幅の利益を積み重ねてもたった一度の大きな下落でそれまでの利益を全部失い、「十勝一敗でも損をする」ということになりかねないからです。

株価は上がるよ、どこまでも?

次に②の行動です。誰でも株価が上がると嬉しいものです。本来なら上がって十分儲かったのですから売れば良いのですが、このタイプの人は今の状態が今後も続くと思ってしまうココロの罠にハマりがちです。そこで買い増ししたくなりますが、こういう行動を取ってしまうと高値を買ってしまうことになるため、結果的に損をしがちです。①の場合も②の場合も行動経済学で言う「損失回避」や「今の状態が今後も続くと思ってしまう」といった“感情”が起きて、冷静な“勘定”の判断を邪魔してしまうということなのです。

感情ではなく、勘定が大事

多くの人は株価の変動に目を奪われ、どうしても“感情”で判断してしまいがちになります。でも株式投資で大事なことは“考える”ということです。自分なりの基準を持ち、現状がそれに合うかどうか自分の頭で“勘定”しなければなりません。次回以降もこうした感情に惑わされる例を紹介し、そうならないようにするためのポイントを考えていきましょう。

投資家として、「ドローン前提社会」が来る前にやるべきことがある 〜個人投資家・千葉功太郎さんインタビュー【前編】

投資家として、「ドローン前提社会」が来る前にやるべきことがある 〜個人投資家・千葉功太郎さんインタビュー【前編】

お金を語るのはカッコいい・投資で未来を作る 千葉 功太郎

2018.6.05

スタートアップ界隈では知らない人のいないエンジェル投資家・千葉功太郎さん。コロプラなどの創業期に携わりながら、これまで50社ものITベンチャーに投資し、育ててきた。そんな千葉さんがいま熱い視線を注いでいるのが、ドローン事業だ。数々の実績を持つスゴ腕投資家に、ドローンの可能性について聞いた。

10代、IT黎明期に受けた衝撃

僕の脳内に、一枚の絵があるんです。
東京湾の上空を、インターネットに接続されたドローンが何千機も行き交っている絵。こんな未来が、2023年までにやってくる。そう信じて2017年6月に、ドローンのベンチャーに投資する「ドローンファンド」を立ち上げました。

「いまさらドローン?」と、思われるかもしれません。すでにドローンは、家電量販店で簡単に手に入るようになっていますから。でも、まだ「この先」があります。いまは趣味の世界で、一部の愛好家が使っているに過ぎません。

これからはドローンが宅急便のようにモノを運んだり、地上の監視や調査を行ったりして、社会のインフラになっていきます。いずれドローンは、日常生活に欠かせないものになる。それを僕は、「ドローン前提社会」と呼んでいます。

そんな未来に向けて、投資するタイミングは「いま」しかありません。理由を説明するために、少し個人的な話をさせてください。

僕は自由な校風で有名な、麻布中学・高校を卒業しました。校則がほとんどなく、クラブ活動も生徒の自主運営に任せられるような学校です。とても楽しくて、その分、大学を選ぶときに「どうしよう?」と考えました。同じように面白い場所はあるのかな、と。

ちょうどそのころ、慶應義塾大学のSFC(湘南藤沢キャンパス)が開校して、話題になっていました。文系・理系を分けず、「インターネットと外国語」を軸にしたカリキュラムがあると知り、興味を持ちました。

入学したのは、1993年。その年に受けた村井純先生の授業が、もう衝撃的で。村井先生はインターネットを日本に広めた神様のような人で、のちに「日本のインターネットの父」と呼ばれます。そんな大先生が、プロバイダもホームページも普及していなかった時代に、「インターネットが当たり前の時代がくる!」と言うのです。

パソコンなんて、ごく一部の人たちが趣味で使っていたくらいの時期。それでも、情報伝達の圧倒的な速さ、利便性が、社会のインフラとなって自分たちの生活を変えるという話は、説得力がありました。

僕はSFCで、あっという間に洗脳されました(笑)。1997年に卒業するときには、「インターネット前提社会が来る」と本気で信じていました。「インターネットを武器に生きていこう」と心に決め、さまざまなネット・メディア事業に関わっていきます。

オンラインゲームの開発会社「コロプラ」の立ち上げに関わり、上場まで副社長として担当したり、IT業界のさまざまなスタートアップに投資をしたり……。結果として、インターネットの黎明期からど真ん中で仕事をし、成長の波に乗ることができました。SFCの授業で聞き、想像した「ITの未来」は、次々と現実になったのです。

あれから20年後の2017年。
僕は世界で3番目のドローン専門ファンドを立ち上げました。動機は、インターネットの可能性を信じたときとまったく同じ。これからやって来る「ドローン前提社会」が、僕の目にはっきりと見えたからです。

撮影:千葉功太郎

「課題先進国」というアドバンテージ

ドローンはインターネットと同じように、世界中のさまざまな産業で使われ、社会インフラになるでしょう。その際、日本は特に有利な立場にあります。なぜなら、産業用ドローンを使う「必要性」がすごく高いからです。

日本は先進国の中でも、道路や橋、トンネルといった公共インフラの老朽化が進んでいます。1964年の東京オリンピックに向けて作ったインフラがいっせいに修繕時期を迎えて、事故が起きるなど、社会問題化しています。これらの点検・保守は急務ですが、職人が高齢化し、人手が足りず、なかなかできません。そこで、建築物の測量やチェックにドローンを使うのです。

ドローンで撮影した地上風景(撮影:千葉功太郎)

人手不足といえば、農業も深刻な分野の1つです。高齢化が著しく、2050年には農業従事者が半減するという試算もあります。なんとか仕事を自動化しないと、農業が続けられなくなってしまう。そこで、作物のチェックをしたり、農薬を散布したりするのに、ドローンが役立ちます。

インフラの老朽化と、人手不足。これは日本にとってかなり大きな課題です。ドローンをはじめ、ロボティクスとAIを本気で導入しないと、未来がない。

この課題は、まだ中国にはありません。欧米では同じことが起きつつありますが、日本ほど深刻ではない。だからこそ、チャンスです。日本が危機感を持って必死になることで、この産業が大きく育つと思います。日本が「課題先進国」としていち早くドローンを使い、その成果を世界に広めるのです。

この点については、政府も認識しています。自民党でドローンの戦略勉強会が開かれて登壇したとき、政治家のみなさんの問題意識の高さにびっくりしました。ドローンを社会実装するために、どんな法律が必要か。実際にドローンが飛んだら、どんな弊害が起こり得るかなど、論点がかなり具体的です。これは本気だと感じましたね。

もう1つ、日本企業に有利なことがあります。2015年春に、首相官邸にドローンが墜落した事件を覚えていますか。あの後すぐに規制が強化され、ドローンを飛ばしていい場所、ダメな場所のルールが明確になりました。

実はこれが、産業用ドローンの発展にとってラッキーでした。ドローンを飛ばすのにグレーゾーンだと、リスクがあるから企業は手を出しません。ところが日本は世界で最初にドローン規制が強化され、白黒がはっきりしたので、むしろ企業が参入しやすくなりました。

これによって、新規参入の企業が一気に増えました。日本はいま、産業用ドローンの開発で、すでに他国よりも先をいっているのです。

「BtoB」こそ、日本企業が狙える市場

日本の企業にとって、産業用ドローンは大きなチャンスです。そしてそのチャンスをつかむ可能性は、大いにある。いや、絶対につかむべきだと、僕は考えています。

現時点のシェアだけを見ると、日本のドローン事業は遅れています。存在感はほぼゼロと言ってもいい。世界で飛んでいるドローンの70〜80%が、DJIという中国・深圳(シンセン)にあるメーカーの製品ですから。実際、DJIは素晴らしい会社で、安くてデザインも性能もいい。みんなが欲しいと思う機体を、世界中に供給しています。

では、日本企業がDJIを目指して頑張ればいいのかというと、そうではありません。日本のメーカーの多くは、「BtoC」(対消費者向けのビジネス)が不得意です。職人的なものづくりはできても、ブランディングやデザインによるコミュニケーションが弱い。そもそも人件費が高くて、深圳のように、いいものを大量に安く作れる場所がありません。これは、認めるべきだと思います。

日本企業はむしろ、これからやって来るドローン前提社会に向けて、「BtoB」(対企業向けのビジネス)の分野に絞って勝負すべきです。建築物の測量や農業など、その道のプロを相手に、細かい要求にきっちり応えて仕上げていく。そういう仕事は、日本企業の得意とするところです。

DJIが圧倒的に強いBtoC分野では、メインの価格帯は数千円から、20万円ほどです。一方、これから広まるであろうBtoB分野では、ドローンの価格帯はおそらく100万〜500万円ほどになると見ています。この“おいしい”市場でシェアを取ろうと、世界中の企業が必死に技術を磨き、ビジネスを仕掛けていくでしょう。

ここで、負けてはいけない。
せっかくの得意分野で、日本企業が出遅れてはいけない。
僕を動かしているのは、この使命感であり、危機感です。

実はファンドを作る前から、僕はドローン愛好家でした。2015年に知り合いにドローンをもらい、かなりの時間を飛行訓練に費やしました。たくさん飛ばして、ドローンの楽しさを知ったし、詳しくもなった。同時に、ドローンを取り巻くビジネスの状況も知り、「これは僕がやるべき仕事だ」と強く思いました。

ドローンを飛ばす千葉さん

投資ファンドを作って、ただ資金を提供しているわけではありません。それだけで、グローバルに戦えるドローン事業が育つほど、ビジネスの世界は甘くないですから。日本から目を見張るようなドローンのスタートアップを育て、世界に輩出するために、何をしているのか。それを次回、お話ししましょう。

使えば使うほど増える!? ゾゾ前澤が語る「お金を増やす」方法とは?

使えば使うほど増える!? ゾゾ前澤が語る「お金を増やす」方法とは?

新R25よりおすすめの記事をご紹介 新R25編集部

2018.6.04

新R25で人気の「マネ凸 〜マネー賢者に切り込むお金の話〜」が、FROGGYに出張掲載!! マネ凸は、新R25編集長の渡辺さん自らが、「マネーの賢者」にお金事情をうかがう対談企画。今回のお相手は、123億円のバスキアの絵画を即決で購入するゾゾタウン社長の前澤氏。彼のお金の哲学とは??

記事提供:新R25

編集長の渡辺です。
……大変なことが起きました。『マネ凸』5人目の取材にして、一気にラスボスにたどり着いてしまったかもしれません。
きっかけは、ダメ元で会社の問い合わせフォームから取材依頼をしたことでした。でもそんな連絡、普通なら無視かサクッとお断りじゃないですか。
正直、メールが返ってくることすら期待していなかったのですが……広報の方が熱心につないでくださった結果、想定外の超ビッグインタビューが実現することに。
そう、今回のお相手はこの方です!

【前澤友作(まえざわ・ゆうさく)】株式会社スタートトゥデイ代表取締役社長。1975年千葉県生まれ。早稲田実業学校卒業後、渡米をきっかけに輸入CD・レコードのカタログ販売を開始。2000年、カタログ販売をオンライン化、アパレル商材の取り扱いを始め、2004年にファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN」を開設。2007年東証マザーズに上場、2012年2月には東証第一部に上場。同年11月に現代アートの普及と若手アーティストの支援を目的とした現代芸術振興財団を設立。現代芸術を中心としたアートコレクターでもある。2017年11月、採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT」を発表。プライベートブランド「ZOZO」の展開と併せて、70億人のファッションの共通課題「サイズの問題」を世界レベルで解消することを目指す。

2017年8月に時価総額1兆円を突破したスタートトゥデイを率いる前澤社長

バスキアの作品を約123億円(米国人アーティストの作品として史上最高額)で落札して世界にその名を轟かせたり、画期的な体型計測を可能にする採寸用ボディースーツ「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」を発表してファッション業界に衝撃を与えるなど、規格外の話題を振りまいています。

日本を代表するファッション通販サイトを築き上げた前澤社長に単独取材をする機会をいただけるということで、間違っても加点を狙わない、空気のようなファッションでインタビューに臨みました。

とにかく服装に関しては「何の印象も与えないこと」が目標でした

渡辺

今日は取材を受けていただき、ありがとうございます。
ここが前澤さんの会議スペースなんですね。全面ガラス張りでエントランスからも丸見えなんで、失礼ながらはじめは喫煙室かなと思ってしまいました(笑)。

前澤さん

たしかに(笑)。
僕デスクもパソコンもないんで、オフィスに来るとここで会議しかしてないです。

もはやスマホだけあれば十分という感じなんでしょうか?

はい。カバンもボールペンも持ってないですね。もう10年以上このスタイルです。

今日は前澤さんのお金の価値観を聞きたいと思っているのですが、さっそく面白い話が聞けそうな期待感が高まっています(笑)。

何でも聞いてください。

「いつもお金がない」報道は本当だった。どこまで行ってもキリのない物欲

前澤さんの資産のほとんどは経営する会社の株になると思いますが、読者が気になっているのはどちらかというと年間約35億円もある配当収入の使い道かなと。
ちなみに、ネットで「前澤氏はいつもお金がない」みたいなエピソードが書かれている記事を見つけたんですが、これは本当なんでしょうか……?

事実です。いっさい貯めないです。
欲しいものがありすぎて、次から次へと買っちゃうんですよね。

さ、35億円が……

すぐなくなります。

デマじゃなかったんですね……
バスキアは話題になりましたが、ほかにはどんなものにお金を使うんでしょうか?

最近は現代アート、骨董品、家具、あとは相変わらず車もいっぱい買ってます。将来住みたい場所に土地を買ったりもしますね。

アートも土地も、運用目的で買っているわけではないんでしょうか?

はい。金融商品も不動産投資も、それこそ仮想通貨にもまったく興味がないです
そんなことより自分の事業を頑張ったほうが増えるので。

なるほど。では、購入した作品を売ったりすることもないということですか?

ありますけど、それは新しい作品が欲しいけどもう家に置けないから、泣く泣く売って入れ替えてるだけですね。
キャピタルゲインを目的にしたことはないです。

なるほど。
そういえばこの連載の前回の取材で、堀江さんが「バスキアを買うことで前澤くんの名前は世界的に認知された。あれはZOZOが世界進出するためのうまいやり方だった」と言っていました。
そのような狙いはあったんでしょうか?

そういう打算的なところはないですね。たまたまそうなっているだけです。

堀江さんに言っておきます。
ちなみに、「お金は貯めずに全部使ってしまう」というのは昔からですか?

はい。いままで貯金したことはないかもしれないです。高校生の頃もバイト代はレコードや楽器につぎ込んでいました。

経営者に話を聞いていると「もう物欲はない」と言う方が多いのですが、前澤さんからはまったくそんな感じがしないですね……

欲しいものがどんどん出てきます。
よく「キリがない」といいますけど、自分の“キリ”がどこにあるのか見てみたいですね(笑)。

遥か彼方にある(はず)の“キリ”を見つめる前澤さん

ワンミリオンドル単位で上がっていく“しびれる”オークション現場

興味本位で伺うのですが、あれだけの金額が動くアートのオークションってどのような雰囲気なんでしょうか?

ふつうにハンマーを持ったオークショニアが「どうだい? どうだい?」と言いながらオークションを進めて、落札者が決まったら「チン!」とやってますよ。

よくテレビで見るやつだ。本当にそんな感じなんですね。

ニューヨークとロンドンで有名なオークションが年に2回ほどあるんですけど、僕は現地で作品を見て入札するかどうか決めて、入札の時期にはもう日本に戻ってきてしまうことが多いですね。

そこからはどうするんですか?

金額の上限だけ決めて入札は代理人に頼むことが多いですが、電話口でリアルタイムにディーラーとやりとりしながらビッドすることもあります。

電話口でビッド……バスキアもそんな感じで落札したんでしょうか?

はい。インターネットでも生中継してるので、それを見ながら電話をつないでビッドします。
しびれますよ〜。ワンミリオンドル単位で値段が上がっていきますから。

い、1億円ずつぅ!!!

こんな感じでバスキアを落札!?

限界までお金を使ったときに味わえる体験が、明日の自分の成長につながる

前澤さんのお金の使い方のモットーを教えていただきたいです。

とにかく、いま自分が使える限界まで使う。
使わないと衝動に駆られないんですよね。

限界まで……! なぜそこまで振り切った使い方をするのでしょうか?

10万円稼いでも1万円しか使わなかったら、自分が想像しうる体験しかできません。でも、10万円入ったその日に10万円全部使ったら、それはいままでにない体験になるじゃないですか。
僕は、その体験が自分の成長の糧になるとずっと信じてます。もっとかっこよく言えば、限界までお金を使うことが明日の自分への投資になる

少しずつ使っていても自分のスケールは変わらないと。

そうです。

そう聞いて僕も限界まで使ってみたくなりましたが……
無理です。ゼッタイ奥さんに怒られます。

(笑)

ちなみに、会社の若手社員の方にもお金のアドバイスをすることはありますか?

初任給や初めてのボーナスで何を買うかは君の人生にとってめちゃくちゃ重要だよ、ということを話したりはします。

具体的に「こう使うべきだ」「こんなものを買うべきだ」みたいなことも話すんでしょうか?

「人と同じものを買わないほうがいいよ」とはよく言いますね。
たとえば、初めてのボーナスでみんなが持ってそうな時計を買ったって何の自慢にもならないし、自分の成長にもつながらない。
だったら何を買うか。どう使ったらどうなるかを想像をして使ってみなと。

なるほど。それはモノであっても体験であってもよいとお考えですか?

はい。自分の趣味を突き詰めるために使ってもいいし、人を思いっきり喜ばせるために使ってもいいと思いますよ。
たとえば、初めて手にしたボーナス50万円をすべて使って両親を旅行に連れて行ったら、そのあとの親子の関係性はどうなるか。そう考えると面白いじゃないですか。彼女に思いっきり50万円分のプレゼントをしてみるのもいい。

いきなりすべてのお金を人のために使ったら……たしかに何が起きるか予想できません。

とにかく、少しずつお金を使ってもたいした体験はできなくて、自分自身は何も変わらない。
それなら一気に使って面白いを体験してみたら、とアドバイスしてます。

もしかして、ZOZOTOWNの「ツケ払い」にもこの価値観が反映されている?

あと、そうやってお金を使うと、人に出会えるチャンスが増えたり、新しいコミュニティができたり、いろいろ新しいことが起こるんですよ。

なるほど。ちなみに、バスキアを買ったらどんなことが起きたんでしょうか?

わかりやすい出来事でいうと、レオナルド・ディカプリオから連絡がきましたね。

それはヤバすぎる……実際に会ったんですか!?

はい、自宅に招待してくれました。彼もバスキアが大好きなので。

バスキアパワー、おそるべし。
ちなみに、先ほど「趣味を突き詰めるために使ってもいい」とおっしゃっていましたが……

それもいいと思いますよ。自分も趣味が仕事に生きているタイプです。

具体的にはどのように生きているんでしょうか?

たとえば、僕は車が好きなので、何億円もする車を何台も買います。
最近もブガッティという3億円ぐらいする車を買いましたが、フランスの工場に何度も足を運んでデザイナーさんやエンジニアの方とお話をする機会があって、会社やモノづくりに対していろいろな想いを聞けました。これは、その辺のショールームで車を買っても絶対にできない体験です。
最近ZOZOTOWNでもプライベートブランド「ZOZO(ゾゾ)」を始めましたけど、そういう体験が自分のモノづくりにかける想いやモチベーションにつながっています

なるほど……! すごいスケールで趣味が仕事に生きてますね……

「資本主義の象徴である前澤友作」と「競争を排除した会社」の不思議なマッチング

あと、前澤さんにお会いできたらどうしても聞いてみたかったことがありまして。
我々からすれば、豪快にお金を稼いで使う前澤さんは、まさに資本主義の象徴のような存在です。ただその一方、競争を嫌って社員の基本給やボーナスを一律にしたり、6時間労働制を導入したりしているじゃないですか?

はい、そうですね。

そこに少し違和感があるというか、我々からすると不思議なマッチングに見えるんです。どのような軸で両者がつながっているのかなと。
これまで、同じようなことを聞かれた経験はないでしょうか?

ありますね。でも、自分のなかでは一貫した軸があります

ぜひそこをくわしく聞きたいです。

僕は本来、人間は競争するためじゃなくて、自分が楽しんだり人の役に立つために働くと思っています。
ただ、過度に競争が社内のシステムとして存在していると、隣の席の人に勝つために働くようになってしまう。
だから、なるべく社内から競争を排除することによって、みんなに本来の働く目的を再確認してほしいんです。

僕自身も、ただ好きなことをやっているだけです。
好きだから仕事をして、好きなモノを買う。誰かに勝ちたいなどとはまったく思わないですね。

なるほど。前澤さん自身のお金の使い方も会社の制度も、「楽しさ」にプライオリティを置いた結果だと。

はい。
自分の好きなことを追求して、それが人の役に立つことが素晴らしい。
僕はずっとそう思って生きてきたので、みんなが自分と同じことを思ってくれれば会社はもっと良くなるし、成長するはずだという感覚があります。

以前、前澤さんが「会社のビジョンは世界平和だ」と話しているのを聞いたことがあるんですが、当時は正直、ZOZOTOWNの事業イメージとその壮大なビジョンが結びつかなかったんです。
でも、こういった前澤さんの価値観が反映されたものだったんですね。

そうですね。僕はみんなが楽しんで働けば、世界はもっと良くなると思っています。

競争を排除するという意味では、社会主義的な発想に近いところもあるのでしょうか?

いや、社会主義は抑圧された感じがするし、資本主義も僕からすると抑圧されている。どちらでもないですね。

なるほど。ちなみに、ここ数年で盛り上がっている「評価経済」の考え方についてはどう思われますか?

うーん……

それもあまりピンときません。フォロワーが少なくても人の役に立っている人はいっぱいいますから。
自分的には「感謝」という言葉のほうがしっくりきますね。

感謝経済。感謝を集める人にお金が回ってくるということですね。

この世からお金がなくなったらどうなるのか。お金の価値をもっと下げたい

前澤さんは国のシステムとしてベーシックインカムの導入も推奨されていますが、それは金銭的な保障があれば働き方が変わるはずだから、という理由ですよね?

そうです。人間はお金が最優先になってしまうと行動が狭められるし、思考も広がらない。
でも、ベーシックインカムがあって生きていくために稼ぐという思考がなくなったら、みんな自分の得意なことや好きなことをやろう、人の役に立つことをやろうと思うはずです。
僕はそのほうが豊かで平和な社会になると思います。

なるほど。ベーシックインカムがあると労働意欲が低下するんじゃないかという懸念もありますが、前澤さんはそういう考えなんですね。

僕は、人のなかにあるお金の価値、お金のウェイトをもっと下げたいんです。
雇われているとか、お金のために働かなければならないとか、多くの人が思っている労働に対しての概念を変えたい。

以前、「地球上から突然お金が消えたら」というテーマの映画を作りたいとツイートされているのを見ました。

作ってみたいですね。僕は「お金がなくなったら人間はどうなるのか」というのにとても興味があります。
明日は働かないかもしれないけど、はたして1ヵ月経っても何もしないでダラダラしているのか。すべてが無料で手に入るようになったとしても、お店の前に行列ができるのか。六本木でフェラーリに乗るのがカッコいいのか。そういうことをよく想像しています。

それは興味深いですね。自分の本当の価値観と向き合わなければならなくなるというか、欲望が浮き彫りになるというか。
お金のない世界、ぜひ映画化していただきたいです。実際に話は来てないんでしょうか?

いや、実は来てるんですよ。
でもいまはZOZOSUIT(ゾゾスーツ)やプライベートブランドに注力してるので、ちょっとそれどころじゃありません(笑)。

みんな首を長くしてZOZOSUITを待っております!(笑)

お金は自分が楽しいと思うことや、人を喜ばせるために使うと増える

最後に改めて、R25世代の読者にお金についてのアドバイスをいただけないでしょうか?

とにかく、どんどん使えと。限界まで使い込むと、それが明日の自分の活力になります。
そして、お金は自分が楽しいと思うことや、人を喜ばせるために使うと増える。これに尽きますね。

シンプルで刺激的なメッセージをありがとうございます!
……そして大変恐縮ですが、この連載の恒例になっている色紙への一筆もお願いしてよろしいでしょうか?

オッケーです。ただ、こういうの書くの久しぶりですね(笑)。

「どうしよっかな……?」

よし、じゃあこれで。

「使えば 使うほど 増えるよ」

どうですか?

 

いいと思います! ただ、予想外にかわいい仕上がりです(笑)。

ちょっと自信なさげな字ですね。これじゃあお金増えなそうだなぁ(笑)。

終始笑顔で対応してくださった前澤さん。本当にありがとうございました!