「適法」と主張するには無理がある理由

 自民党の党大会は、政権与党である同党がその政策方針を確認し、所属議員や党員、支持者の結束を固めるための最大の政治イベントである。

 その自民党の党大会において国歌斉唱をリードするという行為の性質を考えたとき、それが業務であったとすれば特定政党の行事に公務として参加したことになり、より直接的な法令違反が疑われることになる。

 一方で、私人としての自発的な参加であったとすれば、特定の政党の活動に対して時間と労力を自ら進んで提供したことになり、政治的偏向の度合いはより強く推認されるといえる。

 どちらの場合においても、政治的中立性に関する懸念が残る。

第93回自民党大会を終え、国歌斉唱を務めた陸上自衛隊中央音楽隊の鶫真衣3等陸曹(右)と握手する小泉進次郎防衛相=2026年4月12日、東京都内(写真:共同通信社)

 そもそも、党大会に参加する人々の大多数は、その政党の強い支持者や関係者である。一般の市民が休日の余暇として偶然足を運ぶような性質のイベントではない。

 そのような場に現職の自衛隊員があえて赴き、しかも登壇して役割を果たすという行為が、単なる「私人としての趣味や余暇の延長」と見なせるはずがないように思われる。

 そして言うまでもないが、政治家にとって党大会への参加は政治活動の典型といえる。

 そのような特定の政党の色彩が色濃く反映される場において、国家の防衛を担う現職の自衛隊員が登壇し、国歌斉唱という象徴的な行為をリードするという行為は政党支持や政治活動に当たらないだろうか。

 なお自衛隊法施行令第八十六条は「政治的目的」の一例として以下を定義している。

 三 特定の政党その他の政治的団体を支持し、又はこれに反対すること。
(「自衛隊法施行令」より引用)

 党大会への参加が政治活動ではないとすれば、業務(副業)に当たらないか、報酬は受け取っていないということなら「公私の影響力の行使」に当たらないかなど懸念は枚挙に暇がない。

 いずれにしても、本件は、過去の慣例に照らしても特異な、すなわち「史上初」の出来事であったし、そもそも当初そのことは肯定的に言及されてさえいたのである。

 政府や一部の擁護を強弁する者は、前述の自衛隊法第六十一条を受けて具体的な制限行為を列挙した「自衛隊法施行令」を根拠に、法的な問題はないと主張する。

 自衛隊法施行令第八十七条には、禁止される「政治的行為」が詳細に規定されているが、そのなかに「国歌斉唱をリードすること」という直接的な表現は確かに含まれていない。

 だが、これを以て「列挙された行為に該当しないのだから適法である」とするが、いささか無理があろう。

 注目すべきは、同施行令第八十七条第5項の規定である。そこには禁止される行為として「政党その他の政治的団体の結成を企画し、結成に参与し、又はこれらの行為を援助すること」が明記されている(自衛隊法施行令)。

 影響力が未知数の新党の結成支援が制限されるのであれば、すでに影響力を有する、与党として大きな影響力を有する自民党を直接援助することは慎重でなければならないことは明らかではないか。

 政党の党大会は、一般に党員や支持者、国会議員や地方議員等の支持者が一堂に会し、党の結束を誇示し、今後の政治活動を推進するための場だからである。

 なお自衛隊員が「私人として」「勤務時間外に」参加したのだから問題ないという擁護論も散見される。

 だが、自衛隊法施行令第八十七条の規定は勤務時間外において行う場合であっても政治的行為に該当するものとみなす解釈が適用される。

 2 前項各号に掲げる行為(第三号の場合においては、前項第十六号に掲げるものを除く。)は、次の各号に掲げる場合においても、法第六十一条第一項に規定する政治的行為となるものとする。
 一 公然又は内密に隊員以外の者と共同して行う場合
 二 自ら選んだ又は自己の管理に属する代理人、使用人その他の者を通じて間接に行う場合
 三 勤務時間外において行う場合
(「自衛隊法施行令」より引用。下線強調は引用者による)

「私人」としても、政治的目的を有する活動への参加は幅広く制限されているのである。