JOPTの女王が去った日 第4章:ラスベガスの悪夢、あるいは「9」の呪い
その壁の名は、岡本シイナ。
世界最高峰の舞台WSOPで、あの名台詞「I defended」を放ち、世界を震撼させたバック・トゥ・バック(二連覇)の女王。
日本ランキング1位に君臨する彼女に対し、ななチャラは万年2位。
「実力派の岡本、アイドル枠のななチャラ」。業界に蔓延るその評価を覆すため、ななチャラはキムを伴い、灼熱のラスベガスへと乗り込んだ。
キムはもはや、彼女の栄光を支えるパートナーではない。女王のドレスの裾を踏まぬようついて歩く、ただの影のような存在だった。
そして訪れた、運命のヘッズアップ。WSOPという最高の舞台で、日本人同士の頂上決戦が実現した。
ここですでに世界王者である岡本シイナを倒せば、過去のすべての屈辱は精算される。ななチャラは確信していた。自分が主役になる時が来たと。
世界中のカメラが注視する中、運命のハンドがショーされる。
ななチャラ:QQ(クイーン・ペア)
岡本シイナ:99(ナイン・ペア)
圧倒的優位(ドミネート)。勝利の女神は、ついにななチャラに微笑んだかに見えた。
彼女は岡本シイナの、氷のように落ち着いた瞳を見据え、心の中で毒づいた。
(澄ました顔ができるのも今のうちよ。10秒後には、その仮面が剥がれ落ちて、ぐちゃぐちゃの泣きっ面のドグサレ顔になる。その無様な顔を一生記憶に刻んで、毎晩の酒の肴にしてやる)
勝利の予感に、口元が歪む。
しかし、ディーラーが無慈悲に開いたボードには、鮮烈な「9」の文字が刻まれていた。
セット。逆転。
会場が割れんばかりの歓声に包まれる。「岡本シイナ、世界初の快挙達成!」のアナウンスが響き渡る中、ななチャラの時間は凍りついた。
キムがふと隣を見ると、そこには、ななチャラが想像していた通りの顔があった。
メイクは涙で汚れ、絶望と怒りで醜く歪んだ、「ぐちゃぐちゃの泣きっ面」。
皮肉にも、彼女自身がその顔を世界に晒していたのだ。
彼女は女王ではなかった。真の女王、岡本シイナが伝説を作るための、単なる「踏み台」に過ぎなかったのだ。


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