日弁連新聞 第623号

第67回 人権擁護大会開催
12月11日・12日 長崎市

【12月11日・12日】第67回人権擁護大会・シンポジウム


第67回人権擁護大会を長崎市で開催した。12月11日の2つのシンポジウム、翌12日の大会は、いずれも会場とオンライン配信を合わせて多数の参加を得た。大会では2つの決議および1つの宣言を採択した。

次回大会は、仙台市で開催される。


決議・宣言を採択

ともに学び・育つインクルーシブ教育及びともに生きるインクルーシブ社会の実現を求める決議

人間の差異への不寛容と排除は、社会から多様で豊かな包摂力を奪い、個人の尊厳や平和と民主主義の礎を阻害する。全ての人にとって生きやすいインクルージョンの理念の実現に向け、①分離教育からインクルーシブ教育への制度改革、②施設収容主義からインクルーシブ社会への制度改革(脱施設化)、③政府から独立した人権機関の創設および個人通報制度の導入などが求められる。インクルーシブ社会の実現に向けて、今後も不断に活動を続ける。


戦争をしない、させない 長崎宣言

日本の「専守防衛」を旨とした平和国家としての歩みは、世界各国から広く受け入れられ、厚い信頼を得てきた。しかしながら、2015年に制定された安全保障法制関連法および2022年に閣議決定されたいわゆる安保三文書は、防衛力の抜本的強化、敵基地攻撃能力の保有や核抑止力への依存等、軍事力に軍事力をもって対抗するという抑止力政策をとる。「専守防衛」の原則が放棄されることは、憲法の掲げる恒久平和主義に反し、日本が戦後築いてきた平和国家としての信頼を大きく損ないかねない。日弁連は、日本も他国も戦争をしない、させないため、そして核兵器廃絶を実現するため、強く警鐘を鳴らし、全力を尽くす。


当事者の性別にかかわりなく婚姻を可能とする民法等の改正を求める決議

現在の日本では、法令上の性別が同性の者同士の婚姻(以下「同性婚」)は認められていない。同性の当事者間の関係も、異性間の関係と同様に人格的生存に深く関わる価値を有することから、同性婚についても婚姻の自由が保障されるべきである。異性婚と異なる扱いは、平等原則にも反する。同性婚を選択できないことの合憲性を争点とした6件の高等裁判所での訴訟のうち、5件の判決で違憲判断が示された。近時の世論や情勢に目を向けても、各種調査において、同性婚の実現を支持する意見が高い割合を占めている。日弁連は、国に対し、直ちに当事者の性別にかかわりなく婚姻できるように、民法等関連する法律の改正を行うことを求める。


特別報告

①袴田事件判決を踏まえた在るべき刑事司法の件、②再審法改正をめぐる情勢の件、③旧優生保護法に関する被害回復の歩みの件が報告された。


特別講演

日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表委員の田中熙巳氏は、2024年のノーベル平和賞受賞について、核兵器が現実に使用される危険性の増大という昨今の世界情勢を踏まえての受賞であると受け止めていると語り、核兵器廃絶を今後も訴えていく必要があることや、若い世代が核兵器はタブーであることの理解を深め、核兵器廃絶に向けた活動を担ってほしいと強く訴えた。また、自身の壮絶な被ばく体験を踏まえ、核兵器は極めて残酷で殺傷力が高く、「もはや兵器とすら呼べない」と語り、日本政府に引き続き核兵器禁止条約への参加を訴えていきたいとし、欧州での講演等をきっかけに国際的な運動にもつなげていきたいと力を込めた。

田中熙巳氏



第1分科会 分ける社会を問う!地域でともに学び・育つインクルーシブ教育、ともに生きる社会へ
~今、障害者権利条約が日本に求めるもの~

今の日本では、障害のある子どもの多くは、小学校に入学する時点で特別支援学校や特別支援学級に分けられ、卒業後も「障害のある人」として分けられた社会の中で生きていくことを余儀なくされている。差異を尊び、多様性豊かな社会の実現に向けて、目指すべき未来像とそこに至る道筋を議論した。


基調講演

石川准名誉教授(静岡県立大学、国連障害者権利委員会(以下「CRPD」)元副委員長)は、「同一内容を全員が一斉に学ぶ」日本の教育制度では、多様性を包摂できないと指摘し、インクルーシブ教育を実現するためには、授業・評価・教員配置の構造改革が不可欠であると語った。


国連子どもの権利委員会(以下「CRC」)元委員長の大谷美紀子会員(東京)は、CRCとCRPDによる2022年3月の共同声明を概括し、子どもの最善の利益原則に則り、質の高いインクルーシブ教育が必要であると訴えた。


映画「隣の席がなくなる日」

本シンポジウムのために制作された映画「隣の席がなくなる日」が上映された。障害の有無にかかわらずすべての子どもが地域の同じ学校で過ごすインクルーシブ教育が当たり前の仮想世界を舞台に、誰もがともに学び、育つ社会の尊さが描かれた。


当事者の声

障害がある当事者、保護者、教員らが体験を語った。


高校生の岡本湖心氏は、脳性まひによる重度の障害がありながら、地域の学校で学んできた経験を共有した。特別支援学級について、「特別という言葉はみんなと違う、障害者だと特別視されたように感じてしまう」と率直な思いを述べた。


大学中退後8年間の引きこもり生活を経験した石川智香子氏は、精神科病院への入院はとても辛かったと振り返り、包括型地域支援プログラムにより、医療・就労・生活支援を地域生活の中で受けている現状を語った。


パネルディスカッション

CRPD委員の田門浩会員(東京)は、耳の聞こえない子どもにとっては言語・コミュニケーションが重要であると強調し、手話などのコミュニケーション方法が学校の中で尊重され受け入れられる環境作りが必要であると指摘した。


大谷会員は、子どもの頃の経験は、人生の土台として非常に重要であると強調した。石川名誉教授は、インクルーシブな社会の中では予期しないハプニングが生じる場面もあるが、ユーモアをもって取り組むことの大切さを指摘し、現状の日本社会の中心価値にある「秩序・効率・同質性」から脱却し、「尊厳・自律選択・多様性」を尊ぶ社会への転換に期待を寄せた。

パネルディスカッションの様子



第2分科会 再び戦争の惨禍が起こることのないように
~「危機の時代」の私たちの選択~

政府は2015年に集団的自衛権の行使を容認する安全保障法制関連法(以下「安保法制」)を制定し、2022年には敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有を認める安全保障関連三文書を閣議決定した。恒久平和主義を掲げる日本国憲法の下、最大の人権侵害である戦争を避ける方策を議論した。


基調講演

布施祐仁氏(フリージャーナリスト)は、台湾有事を想定した軍事準備が進行し、安保法制の「存立危機事態」が認定され日本が攻撃を受ける現実が迫っているとして、米国の軍事政策に追従するのではなく非軍事的な手段で台湾有事を抑止するべきであると訴えた。

布施祐仁氏


河合公明教授(長崎大学核兵器廃絶研究センター副センター長)は、核兵器の保有が戦争を回避するとの核抑止論は「願望」に依存した考えであり、核兵器が使用されると取り返しのつかない惨禍が生じる現実を直視していないと指摘した。その上で、核兵器禁止条約がNGOを中心とした市民社会の働きかけから誕生したように、異なる見解を持つ相手との対話を深め、新しい可能性を探ることが私たち市民にできることであり、国際社会を動かす原動力になると締めくくった。


高校生平和大使(長崎)からの報告

長崎県内の高校生らが、核兵器廃絶を求める署名活動およびジュネーブの国連欧州本部への署名提出、国連軍縮部への訪問など、高校生平和大使の活動を報告した。次世代に歴史を継承するための平和教育の取り組みが課題であり、平和の実現には互いの違いを認め合い信頼関係を築くことが大切だと語った。


パネルディスカッション

清末愛砂教授(室蘭工業大学)は、戦場に足を運び現地の市民団体等と活動を続けてきた経験から、軍事力が人を支配する構造は加害者が被害者を支配するDVと同じ構造であり、武力紛争のない社会をつくるには力による支配を否定する人間を育てていくことが重要であるとした。


猿田佐世会員(第二東京、新外交イニシアティブ(ND)代表)は、ドイツの政治財団が世界各国に事務所を設置し、現地政府・議会関係者・企業・メディア等と重層的に関係を構築している例や、沖縄県が独自に各国や地域と交流を強化している地域外交の例などを挙げた。諸外国と社会のさまざまな場面でつながり、信頼関係を醸成し、相互依存を促進する外交こそが平和構築の最適な手段であるとし、平和の実現に向けた外交に資金や人材を投資するべきであると強調した。



「解約料の実態に関する研究会議論の整理」に対する意見書

「解約料の実態に関する研究会 議論の整理」に対する意見書


消費者庁に設置された解約料の実態に関する研究会は、2024年12月、「議論の整理」と題する報告書(以下「議論の整理」)を公表した。これに対し、日弁連は2025年12月18日付けで意見書を取りまとめ、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、消費者庁長官に提出した。


目的や取引類型に応じた解約料規制の検討

解約料を定める目的には、損失補填、価格差別、解約抑止、売上安定化、解約料による収益向上等があるとされている。


損失補填を目的とする解約料条項については、従前、消費者契約法9条1項1号の平均的損害に逸失利益が含まれるかという点を中心に議論されてきた。しかし、損失補填の目的を有する解約料にもさまざまな類型があるため、正当性のある解約料の算出方法も契約ごとに異なってくると考えられる。したがって、損失補填目的の解約料をひとくくりにして、画一的な基準を検討することはそもそも不可能であり、取引類型ごとに規制の内容を精緻化していく必要がある。


価格差別を目的とする解約料条項については、契約内容のみならず、消費者が複数の価格プランの長所・短所を理解した上で選択する機会が実質的に確保されているかという観点も正当性の判断において重要となる。


また、解約料で収益を上げることを目的とする解約料条項には基本的に正当性は認められず、解約抑止や売上安定化は、独立して解約料条項を正当化する目的とはならないと考えられる。


解約料の実態を踏まえたルール作り

議論の整理では、解約料に関する消費者への説明や情報開示などの手続面が重要であるとされている。しかし、消費者が気づかない間に不利な判断に誘導され得ることや、消費者が限定合理性(人は限られた範囲でしか合理的な判断ができないこと)による脆弱性を有することからすると、事業者が解約料の内容を説明さえすれば、それだけで解約料の徴収が正当化されると考えるべきではない。消費者に客観的に不利益が生じないか、公正性の観点を考慮したルール作りが必要である。


立証負担の軽減

議論の整理では、「平均的な損害の額」の立証負担を軽減するためのルール作りについてはほとんど触れられていない。そのため、立証負担軽減のための望ましいルールの在り方について、引き続き検討されなければならない。


(消費者問題対策委員会 幹事 岩城善之)



日弁連短信

デジタル化全面施行後の民事訴訟におけるmintsの利用について

デジタル化全面施行に向けた準備

前事務次長 井﨑淳二

本年5月21日に改正民訴法等によるデジタル化が全面施行され、弁護士は民事訴訟においてオンライン申し立てが義務化される。


従来の書類提出システム(以下「mints」)には既に新規申し立て機能が実装されているところ、日弁連は、会員に対し、新しいmintsに関するライブ実務研修やeラーニング等を提供して、その利用習熟を促している。さらに、各地の地方裁判所と弁護士会との間では、ダミーデータを利用したオンライン申し立ての試行の機会を設けるなどして、習熟が図られている。


デジタル化全面施行後は何が変わるか

本年5月21日以降は、新しいmintsの利用により、オンライン申し立てのほか、システム送達や訴訟記録の一覧的な表示、申立手数料(郵便費用との一本化)の電子納付(ペイジーによる納付)が可能となる。


その他、全面施行後のmintsは、例えば、以下の点に違いがある。


(1)アカウント登録

mintsアカウントの登録には、弁護士会等の発行する身分証明書などによる本人確認・資格確認が必要となる。


(2)送達の効力

①送達対象のデータを閲覧した時、②同データを端末等にダウンロードした時、③閲覧またはダウンロードできる旨の通知が発せられた日から1週間を経過した時のうちいずれか早い時点において、システム送達の効力が生じる。


(3)カラーの証拠

全面施行前のmintsで提出された訴訟記録は、カラーの画像データも白黒でプリントアウトされて紙で管理されるため白黒の書証となるが、全面施行後は、カラーの画像データがそのままカラーの書証として扱われることになる。


(4)証拠のデータ形式

全面施行前は、訴訟記録としてアップロードできるのはPDFのみであるが、全面施行後は、PNG、JPEG、MP3、MP4の各形式でのアップロードが可能となる。


(5)訴訟記録の閲覧等

リアルで出頭した期日においてmintsにより訴訟記録の閲覧等をするには、自分のノートPCやタブレット等を法廷に持参する必要がある。


(6)証人等への証拠提示

人証調べはmints上の訴訟記録(電子記録)を前提として実施されるため、mints上のデータを画面共有し、または各自が持参するPC等にダウンロードすることにより証人等に提示することができる。


(前事務次長 井﨑淳二)



大川原化工機事件の刑事手続に関する検討報告書

PDF大川原化工機事件の刑事手続に関する検討報告書 (PDFファイル;438KB)


日弁連は、2025年12月9日付けで大川原化工機事件の刑事手続に関する検討報告書(以下「報告書」)を取りまとめた。


大川原化工機事件とは

大川原化工機事件とは、そもそも犯罪が成立しない事案について、会社の代表者らが逮捕・勾留、公訴提起され、約11か月に及ぶ身体拘束の後、公訴提起から約1年4か月経過し第1回公判の直前であった2021年7月30日に検察官が異例の公訴取消しをしたえん罪事件である。その後、会社や被告人とされた原告らが国や東京都を相手に提起した国家賠償請求訴訟では、警察による逮捕や検察官による勾留請求・公訴提起の違法性が認定された。


報告書の概要

報告書は、大川原化工機事件の刑事事件記録や国家賠償請求訴訟の記録、同訴訟の原告代理人弁護士へのヒアリングなどを基に作成したものである。その概要は、警察および検察による捜査の事実経過、警視庁・警察庁・最高検察庁の検証報告書や裁判所による身体拘束判断についての分析・評価・検討となっている。


これまで、警察や検察の捜査等についてはそれぞれの組織において調査・報告されているが、裁判所の身体拘束判断について詳細に検討したものは本報告書が初めてであると思われる。


報告書では、裁判所の勾留や保釈判断により長期の身体拘束が生じ、無辜の人々の健康と人権に深刻な侵害結果をもたらしたこと、罪証隠滅行為をうかがわせる現実的かつ具体的な事情がないにもかかわらず裁判所が罪証隠滅のおそれを認めてきた実態などを指摘し、裁判所による身体拘束審査の在り方の抜本的な見直しにも言及した。


報告書では、本件を特定の個人の過誤としてではなく、刑事手続全体に内在する構造的課題として捉え、刑事司法の透明性と人権保障を確保するために何が求められるのかを検討している。報告書が、同種事案の再発防止と、より公正な刑事司法の実現に向けた議論の一助となることを期待する。


(刑事調査室 嘱託 須﨑友里)



新事務次長紹介

井﨑淳二事務次長(東京)が退任し、後任には、2月1日付けで榎木純一事務次長(東京)が就任した。


榎木 純一(東京・62期)

榎木 純一

日弁連はこれまで多岐にわたる社会問題に対応すべく、課題に直面する会員の声を汲み上げながら、さまざまな施策を提言・実現してきました。山積する引き継ぎ案件を前にして身の引き締まる思いですが、事務次長として切れ目なく活動を支えていけるよう尽力いたします。



家事法制シンポジウム
これからの家族と子の利益のあり方を考える
―改正家族法施行を迎えるにあたって―
12月20日 弁護士会館

家事法制シンポジウム「これからの家族と子の利益のあり方を考えるー改正家族法施行を迎えるにあたってー」


本年4月1日に選択的共同親権導入に関する改正民法が施行される。本シンポジウムでは、現代における家族や結婚・離婚、親子関係の在り方を紐解きつつ、今後の家事事件実務における課題や運用について議論した。


基調講演

筒井淳也教授(立命館大学産業社会部)は、歴史をたどりながら家族の形を考察した。欧米では、カップルの形態が多様化している一方、日本はいまだ性別による役割分業意識があり、女性が子を育て男性は育児等に関与しないという傾向が根強い。そのため別居しつつ子を共同監護するという体制が取りづらい。筒井教授は、どの国でも試行錯誤しながら対応しているのが現状であるが、日本で共同親権が導入されても直ちに父母相互で子のケアができるようになるわけではないと指摘した。


ドイツ調査報告

家事法制委員会の白井由里委員(神奈川県)は、ドイツにおける共同親権の運用状況に関する調査報告を行った。


同調査は、2025年10月にドイツの弁護士会や裁判所等を訪問して行われた。ドイツでは、1997年から共同親権が原則となった。ドイツ憲法は、「親権」を「配慮権」と定義しており、親の権利というより子の利益のために親に課された義務であるとしている。また、裁判官が子の意向を直接聴取したり、家族法専門弁護士が州ごとに存在したりするなど、子の利益を守るためのさまざまな制度がある。さらに、共同親権が妥当かどうかの判断要素として、①子の成長にとって有益か、②継続性の原則(現在の生活の維持)、③親に対する関係性、④子の意思(12歳以上の子の意思は原則尊重)の4要素があることを紹介した。


パネルディスカッション

竹内裕美委員(愛知県)は、親の代理人として親権に争いがある離婚事件を取り扱う場合、依頼者である親の利益と子の利益が一致しない場面があり、共同親権が選択肢として加わることで個別事案に即した対応ができる反面、調整や協議が複雑化することが今後の課題であると語った。


元家裁調査官である直原康光氏(大阪大学大学院人間科学研究科講師)は、法律家や心理職などの支援者は、自身の考えや経験を子に押し付けていないかを都度振り返り、子どもにとって適切な判断のため事例に即した柔軟な対応をすべきと力を込めた。


筒井教授は、裁判所、支援機関、行政のサポートといった社会資源が不足しており、紛争解決手段が少ないことや、子の状況や意思は変わり得るため、その時々の子どもの監護方法等を模索する必要がある点を指摘した。

パネルディスカッションの様子



日弁連海外ロースクール推薦留学制度
―帰国者による報告会―
12月9日 弁護士会館

日弁連海外ロースクール推薦留学制度-帰国者による報告会-


日弁連ではこれまでに95名の会員を海外のロースクールに推薦・派遣し、貴重な国際的ネットワークの構築を支援してきた。本報告会では、本制度を利用して留学した会員が自身の経験を語った。


制度の概要

日弁連海外ロースクール推薦留学制度は、公益的な活動に取り組み、それに関連した研究テーマを有する会員を対象として、協定先の海外ロースクール(現在5校)に推薦・派遣する制度である。留学中の会員資格の維持、論文と留学報告書等の提出などを条件として、日弁連会長の推薦状の取得、帰国後の支援金支給などの支援を行っている。


留学経験者からの報告

エセックス大学LL.Mコース

大武真織会員(埼玉)は、離婚における子供の意見表明権を研究テーマに留学し、留学中は指導教授2名(学者と実務家)による指導体制の下、大学のデータベースを活用した文献調査等を行い、充実した研究ができたと語った。


イリノイ大学客員研究員

藤本孝之会員(第二東京)は、国際刑事法の実務を研究テーマとし、アメリカの判例調査とアメリカ法制度の基礎研究を行う中で、国際刑事裁判所に関する集中的な学習を行うことができたと報告した。留学準備に関し、約10年間の継続的学習を行いTOEICの点数を910点にまで伸ばした経験なども語った。


イリノイ大学LL.Mコース

松下昂永会員(第二東京)は、地方自治体と人権というテーマで留学したことや家族帯同で留学することが子どもにとって貴重な国際的文化交流の機会となること、留学期間の金銭事情などについて語った。



法曹の魅力発信に向けた取組に関するオンライン説明会
~8チャレ作成、イベント開催等のノウハウを中心として~
12月8日 オンライン開催

新規登録弁護士が大都市に集中し、地方の弁護士会の新規登録者がゼロまたは1人の新たなゼロワン問題が発生している。各地での弁護士業務の魅力発信に向けた取り組みを共有した。


8チャレの活用

2025年9月末までに、日弁連および7弁護士会が、弁護士のさまざまな活躍を紹介する冊子「8人のチャレンジ」(以下「8チャレ」)を作成し、広報資料として活用している。


弁護士会で8チャレの作成を担当した会員からは、若者を対象とした媒体のため写真を目立たせ視覚に訴えるデザインにした、ジェンダーバランス・出身地・出身法科大学院・力を入れている分野・所属先などの観点から多様な人選となるように配慮した、企画当初からウェブ版を意識して取り組んだなどの工夫が語られた。また、紹介する弁護士を集めるのに苦労したとの声もあった一方で、小規模弁護士会でも現実的に作成が可能なツールであるとの意見や、配布した学校から好評を得て法曹の魅力のアピールに役立っているとの意見が寄せられた。


その他の取り組み

日弁連が作成した弁護士の仕事を紹介する各種パンフレット、動画(「弁護士になるには」)、高校生・大学生向けまたは社会人向けの企画を共有し、活用を呼びかけた。


弁護士会の取り組みとして、地元の大学サークルと協力して作成した謎解きゲームなどが紹介された。


日弁連は、8チャレの作成を含む法曹志望者確保に向けた弁護士会の取り組みに対して費用補助を行っており、積極的な活用が期待される。



第86回 市民会議
12月22日 弁護士会館

本年度3回目の市民会議では、人質司法・取調べの可視化、法的サービス提供におけるAIのかかわりについて議論した。


大川原化工機事件から人質司法・取調べの可視化を考える

福島正義副会長および坂口唯彦会長特別補佐は、取調べの録音・録画が義務化された事件は起訴されて公判が開かれた全事件のわずか3%であり、プレサンス事件や大川原化工機事件などを例に、近年も自白の強要、捜査機関に都合のよい供述の押し付けがなされている実態を報告した。さらに、可視化拡大に向けた検討が進まない状況に触れ、実際にあった不適正取調べの音声・映像を再生し、取調官が被疑者の人格権を侵害する暴言などを繰り返す様子を紹介した。


委員からは、録音・録画されている中でも不適正な取調べが後を絶たない現状に次々と強い疑問が示された。暴言などの繰り返しは今の企業では考えられない、政府の協議会等の委員構成は偏りがありすぎてあまりに異様だ、可視化は捜査官や捜査機関を守るためにも必要であるなどの意見が出された。また、諸外国では20世紀に解決している課題であり、犯罪の国際化が進む中、適正な捜査体制を整えなければ国際捜査協力が十分に得られなくなり国益を害するといった見解も示された。


市民への法的サービス提供におけるAIのかかわり

佐藤彰紘副会長は、生成AIを活用した新技術が著しい発展を遂げ、その利活用と生じ得る諸問題の検討および対応は必須だとし、弁護士業務における生成AIの利活用について、権利侵害、出力内容(生成物)の適切性判断、説明責任の所在等弁護士が留意すべき各種注意事項を中心に、AI戦略ワーキンググループでの検討状況を報告した。


委員からは、生成AIを用いる場面ごとに留意すべき点は異なり、各場面の論点を正確に整理し、議論すべきと指摘があった。ファクトチェックをせず顧客に生成物を提供することを不可とするガイドラインを設置した企業の例や、大学をはじめとするアカデミアの領域での実態などの情報が寄せられた。また、AIの性能は飛躍的に向上しており、適時適切な対応が求められ、日弁連に対しても、市民の利益を守るべく十分な対応・意見表明を求めたいとの期待が示された。


市民会議委員(2025年12月現在)五十音順・敬称略

井田香奈子(朝日新聞オピニオン編集長代理)

伊藤 明子(株式会社まち・ひと・しごと研究所代表取締役、元消費者庁長官)

太田 昌克(共同通信編集委員、早稲田大学客員教授、長崎大学客員教授、博士(政策研究))

吉柳さおり(株式会社プラチナム代表取締役、株式会社ベクトル取締役副社長)

小井土彰宏(亜細亜大学国際関係学部多文化コミュニケーション学科教授、一橋大学名誉教授(社会学研究科))

河野 康子(議長、一般財団法人日本消費者協会理事、NPO法人消費者スマイル基金理事長)

神保 政史(日本労働組合総連合会事務局長)

浜野  京(信州大学理事(ダイバーシティ推進担当)、元日本貿易振興機構理事)

林  香里(副議長、東京大学理事・副学長)

福澤 克雄(株式会社TBSテレビ ドラマ・映画監督)

湯浅  誠(社会活動家、東京大学先端科学技術研究センター特任教授)



日弁連新聞モニターの声

日弁連新聞では、毎年4月に全弁護士会から合計71名のモニターを推薦いただき、その意見をより良い紙面作りに生かしています。


2025年は、各種法制審議会での審議状況に関する記事が継続的な関心を集めました。また、日弁連短信での「民事訴訟手続におけるデジタル化(フェーズ3)の本格実施に向けて」(4月号)には、コンパクトに要点が伝わり、今後の流れも理解できた、積極的に情報収集をしなければならないという動機付けを得られた、会員の意識付けとして良い、という声が寄せられました。


3面では、主にシンポジウムなどのイベントに関する記事を掲載しています。特に法律改正の動向に関するイベント等の記事には、業務関連性や将来的な課題を踏まえ、各々強い関心が寄せられました。引き続き、多様な情報を正確に提供することを心がけます。


4面では、司法に関係する団体等を取材し、特集記事を掲載しています。情報セキュリティ対策をテーマにした独立行政法人情報処理推進機構の記事(5月号)は、対策5か条が分かりやすく役立った等の好意的な評価がなされ、法廷付添犬の派遣活動等を行う社会福祉法人日本介助犬協会の記事(6月号)は、アニマルセラピーを司法に用いる活動を初めて知った、現場の視点から今後の課題を提起する内容であり良かった、などの意見がありました。


今後も会員の皆さまのニーズにお応えできる情報発信に努めます。



JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.210

弁護士制度150年を迎えて

本年2月、弁護士制度は、弁護士の前身たる代言人に関する「代言人規則」が1876年2月22日に制定されてから150年を迎えます。

今から50年前の1976年に弁護士登録をした会員に弁護士生活50年の歩みを振り返っていただき、制度の変化や若手会員に対する期待等についてお話を伺いました。


(広報室嘱託 長瀬恵利子)


人に寄り添い、誠実に仕事と向き合う石田法子会員
(大阪、2014年度日弁連副会長)

石田法子会員


仕事道具の変遷

1976年に弁護士登録をした頃の書面は、B4版を二つ折りにしたB5判の縦書き用紙にカーボン紙を挟み、手書きで作成するか、和文タイプライターで作成していました。そのため、当時は、推敲を重ねた簡潔かつ要を得た内容となり、論点が端的に明示された書面が多かったように思います。


書面の作成は、手書きから和文タイプライター、ワープロ、パソコンへ、謄写は青焼き(主に青い紙を用いて紫外線照射により感光する手法)からコピーへ、連絡手段は固定電話からポケベル、携帯電話へと大きく変わり、現在ではメールやメッセージアプリなど以前は想像できなかった方法も加わりました。仕事道具の変化により、早急な対応を迫られて時間的余裕がなくなったと感じる一方、遠方に住む方からの依頼を引き受けやすくなるなど便利な時代になった利点も実感しています。


女性弁護士の立場から

私が弁護士を目指した頃は、男女雇用機会均等法もなく、女性総合職の募集もないという、女性の職業選択肢が少ない時代でした。弁護士であれば男女関係なく一生自分の力で食べていけると考えて弁護士を志しました。ところが、司法修習に入ると、法曹界にも差別がありました。教官から、「女性と障害者が裁判官になれば裁判の権威が落ちる」、飲酒の場では「女のくせに生意気だ」等の差別発言を受けて唖然としました。就職活動では、男性修習生とは異なり声をかけてもらえません。女性弁護士が担当することを如実に嫌がる依頼者もおり、女性弁護士を依頼者との打ち合わせに同席させず、書面作成のみ行わせるという事務所もありました。


この50年で女性弁護士の存在が浸透し、女性だから仕事がやりにくいということは少なくなったと思います。それは、女性弁護士を中心に皆が声を上げ続けてきたからです。男女間の収入格差など改善すべき課題はまだ残っていますが、今後も議論を重ねて格差のない社会に変えていきたいです。


若手会員、次世代の会員へ

私が弁護士になりたての頃は、先輩から戦地で抑留を経験した話や「戦争中は、弁護士を辞めて“正業”に就け」と嫌がらせの言葉を受けた話を聞きました。人の権利を守るという弁護士の仕事は、平和の上にこそ成り立つものです。平和を継続するという信念を抱き、戦争に対して厳しい目を持ち続けてください。


また、弁護士の人数が増えたことで男女問わず経済的な不安を抱える弁護士も多いと聞きます。しかし、私たち女性弁護士は、当時同じ不安を抱えていましたが、一つ一つの事件に誠意を持って取り組み、信頼を得て次の依頼や紹介につなげていきました。人生の分岐点で悩む方々が一歩踏み出せるように寄り添うことは、弁護士業務のやりがいだと感じています。誠実に仕事と向き合い、活動の場を拡げていけば道は開けます。その上で制度上に問題があれば、日弁連を巻き込んで自分たちが変えていくという気概を持って戦ってください。


活躍の場は拡がっている村越進会員
(第一東京、2014・2015年度日弁連会長)

村越進会員

時代

大学生の頃、青年法律家協会の会員に対する任官拒否が司法問題として大きな関心を呼んでいました。私が弁護士になった頃はまだその延長線上にあり、弁護士会・日弁連と最高裁は厳しく対立しているように感じました。「立場や意見は異なっても、国民のためにより良い司法を実現すべく協力していこう」という法曹三者の現在の関係は、隔世の感があります。


仕事

私が登録した頃の弁護士の仕事は裁判が中心でした。入所した事務所は金融機関の顧問をしていたので手形金請求事件が多く、当時存在した東京地裁の手形部に日参し、書記官と仲良くなりました。訴状や準備書面を書いて裁判所に通うことが業務のほとんどで、目玉は証人尋問でした。


司法制度改革

2000年前後から進んだ司法制度改革は、日本の司法制度と弁護士のありようを大きく変える転換点となりました。例えば司法アクセスです。日弁連が1952年にわずかな予算で始めた法律扶助協会による法律扶助制度が、2004年の総合法律支援法の制定により、年間百数十億円の予算を投じて日本司法支援センターが行う国の事業になりました。刑事について言えば、昔は当番弁護士制度も被疑者国選弁護制度もありませんでした。市民が参加する裁判員制度は、絶望的とも言われ弁護人が何をやっても無駄のように思われた調書絶対の刑事裁判を大きく変える契機となりました。労働審判も誕生しました。もちろん、日弁連が指摘しているさまざまな課題はなお残されていますが、歴史的な視野で到達点を確認し、人権を擁護する立場から常に改革を進めていく姿勢が大切であると思います。


活動領域

私が弁護士になった頃は、企業内弁護士や任期付き公務員になる方はほとんどいませんでした。企業の社外役員として活動されている方もごく少数でした。第三者委員会や調査委員会もまれにしか存在しなかったと思います。今では多くの弁護士がそうした分野で活躍しています。家庭裁判所の充実と家裁事件の増大は50年前には考えられなかったことです。周囲の弁護士を見ると、裁判以外の仕事が飛躍的に増えていると感じます。


若手会員、次世代の会員へ

社会は激しい勢いで大きく変化しています。若手会員の皆さんには、変化にたじろぐことなく高いスキルと情熱をもって、法的支援を必要とする人々の声に応えてチャレンジし、活躍の場をさらに拡大されることを期待しています。


弁護士は社会の信頼を存立基盤として活動しています。最近、弁護士の不祥事により市民に被害を生じさせるような事例が相次いでいることは本当に残念です。会員の皆さんが誇りを持って仕事を続けていくためにも、弁護士自治をしっかりと機能させ守っていくことについて、世代を超えて議論と実践を深めていただくことを願っています。



弁護士制度150年記念行事を開催

本年1月15日に、帝国ホテル東京で弁護士制度150年記念式典を開催した。


式典には、今崎幸彦最高裁判所長官、畝本直美検事総長、三谷英弘法務副大臣をはじめ、国会議員等多数の来賓が出席し、祝意が寄せられた。また、式典の後には祝賀会兼新年挨拶交換会を開催し、多数の参加者でにぎわった。

当日の会場の様子


講演では、弁護士制度150年記念行事準備会議事務局長の谷眞人会員(東京)が、明治、大正、昭和、平成、令和の各時代における出来事や時代背景を踏まえた司法や弁護士制度の変遷、弁護士の独立性、自治に関する状況を、司法や弁護士制度に関するエピソードを交えながら回顧し、今後弁護士が果たしていくべき役割と現代における弁護士自治の重要性に触れた。

谷眞人会員


弁護士制度150年特設ページを制作・公開していますので、ぜひご覧ください。

弁護士制度150年特設ページ



ブックセンターベストセラー (2025年12月・手帳は除く)
協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1

スキマ民事訴訟

藤田広美/著 有斐閣
2

企業法務のための民事訴訟の実務解説〔第4版〕

圓道至剛、西尾太一/著 第一法規
3

模範六法2026 令和8年版

判例六法編修委員会/編 三省堂
4

有斐閣判例六法Professional 令和8年版

森田宏樹、小泉直樹、石川健治、斎藤誠、松下淳一、神作裕之/編 有斐閣

弁護士のための財産分与実務のポイント

森公任/著 日本加除出版
6

一問一答 令和6年民法等改正

北村治樹/編著 商事法務
7

法務のための生成AI活用ガイド

福島駿太/著 弘文堂
8

破産法・民事再生法〔第6版〕

伊藤眞/著 有斐閣
9

刑事弁護の実践

久保有希子、小松圭介、布川佳正、村井宏彰/著 有斐閣
10

対話でわかる破産管財実務 64のポイント

大阪弁護士会倒産法実務研究会/編 金融財政事情研究会



日本弁護士連合会 総合研修サイト

eラーニング人気講座ランキング(総合) 2025年12月

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順位 講座名 時間
1 交通事故刑事弁護士費用保険について 22分
2 施行直前! 令和4年刑法改正(執行猶予)と弁護実践 73分
3 あきらめない薬物弁護 167分
4 外国人の法律実務~外国人の刑事事件と在留資格・退去強制手続 122分
5 【入門】障がい者の刑事弁護 59分
連続講座 この弁護人にきく 第1回 黙秘 40分
刑事弁護の基礎(公判弁護編) 132分
刑事弁護の基礎(捜査弁護編) 136分
9 【コンパクトシリーズ】「見落とし注意」2025年6月施行改正刑法(拘禁刑新設・執行猶予制度の改正) 27分
10 連続講座 この弁護人にきく 第2回 情状証人 31分


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