逮捕歴のある原作者を別名義で再起用。
小学館マンガワン問題、処分されたのは「後任」編集長。
逮捕歴のある原作者を別名義で再起用。
小学館マンガワン問題で、処分されたのは「後から来た」編集長だった。
問題となった原作者起用は2024年と2025年。
現編集長の就任は2025年10月——在任わずか数ヶ月で謹慎処分を受けることになった。
なぜ、後から来た編集長が責任を負わされるのか。
社内で「同情の声」が上がる構造的理由とは。
問題の発端——「堕天作戦」作者を別名義で再起用
小学館は逮捕歴のある原作者2名を、それぞれ別のペンネームで再起用していた。
「堕天作戦」作者を「一路一」として再起用
最初に明らかになったのは山本章一氏の事案だ。
山本氏は「堕天作戦」の作者として知られる。
北海道内の私立高校で教員をしていた2020年2月、生徒だった女性を被写体にしたとして児童買春・ポルノ禁止法違反(製造)の罪で略式起訴され、罰金30万円の略式命令が出た。
小学館はこの事実を受け、連載中だった「堕天作戦」を中止した。
ところが小学館は2024年、山本氏を「一路一」のペンネームで新連載「常人仮面」の原作者に起用していたのだ。
この事実が公になったきっかけは民事訴訟だった。
被害女性が山本氏を提訴し、札幌地裁は2026年2月20日、山本氏に1100万円の支払いを命じた。
判決を受け、小学館は2026年2月28日に公式サイトで謝罪。
「本来は起用すべきではありませんでした」と認めた。
「アクタージュ」作者も「八ツ波樹」で起用
2件目はマツキタツヤ氏だ。
「アクタージュ act-age」の原作者だったマツキ氏は、2020年8月に強制わいせつ容疑で逮捕・起訴され、その後、懲役1年6か月・執行猶予3年の有罪判決を受けた。
この事件を受け、「アクタージュ」は連載打ち切りとなった。
しかし小学館は2025年、マツキ氏を「八ツ波樹」のペンネームで「星霜の心理士」の原作者に起用。
編集部は有罪判決の事実を把握した上で起用を判断していた。
小学館は2026年3月2日、この事実を公表し謝罪した。
小学館「起用すべきではなかった」と謝罪
2人の原作者問題を比較
| >項目 | >山本章一(一路一) | >マツキタツヤ(八ツ波樹) |
|---|---|---|
| >本名義作品 | >堕天作戦 | >アクタージュ act-age |
| >別名義作品 | >常人仮面 | >星霜の心理士 |
| >刑事事件 | >児童買春・ポルノ禁止法違反 | >強制わいせつ |
| >判決 | >罰金30万円(略式命令) | >懲役1年6月・執行猶予3年 |
| >民事賠償 | >1100万円(札幌地裁) | >- |
| >起用時期 | >2024年 | >2025年 |
なぜ小学館は、一度は連載を中止した作者を別名義で再起用したのか。
報道された事実をもとに考えると、「人気作品を生み出す才能を持つ原作者を手放したくなかった」という編集部の判断が働いたのではないか。
「堕天作戦」は連載当時、一定の人気を集めていた。
「アクタージュ」に至ってはアニメ化が目前だっただけに、打ち切りの損失は大きかったはずだ。
才能ある原作者との関係を完全に断ち切れなかった——そんな編集部の未練が、別名義という抜け道を選ばせたとの見方もある。
ただし、これはあくまで仮説だ。
編集部の真意は、現在進行中の第三者委員会の調査を待つ必要がある。
問題の概要はわかった。
では、この問題の「責任者」とされる編集長は、一体いつからこの立場にあったのか。
処分された現編集長は「後任」だった——同情が集まる構造的理由
現編集長は問題発生「後」の就任。
真の責任者はすでに退職済みだ。
「問題を起こした当時の編集長が責任を取るべきだ」——多くの人がそう考えるだろう。
普通の組織なら、不祥事の責任は発生時の責任者が負うものだ。
ところが小学館では、問題発覚の半年前に就任したばかりの現編集長が謹慎処分を受けている。
現編集長の就任は2025年10月——問題はその「前」
問題発生時期
2024年〜2025年初
現編集長就任
2025年10月
現編集長・星野氏がマンガワン編集長に就任したのは2025年10月だ。
一方、山本章一氏を「一路一」名義で起用したのは2024年。
マツキタツヤ氏を「八ツ波樹」名義で起用したのも2025年に入ってすぐの時期とみられる。
いずれも現編集長の就任より前の出来事だ。
在任わずか4ヶ月ほどで、自分が関与していない過去の決定の責任を負わされた形になる。
当時の編集長2名は「知り得る立場」だった
では、起用当時の編集長は誰だったのか。
文春オンラインの報道によると、当時の編集長は和田裕樹氏と豆野文俊氏の2名。
両氏は本件を「知り得る立場」にいた可能性が指摘されている。
編集長は連載作品の起用に最終承認権限を持つからだ。
しかし両氏はすでに小学館を離れている。
「元凶」は既に退職——責任追及の限界
「山本氏らを起用に踏み切った〝元凶〟の人物はすでに会社から離れてしまっているため、責任追及にも限界がある。
現編集長への処分は致し方ないですが、社内では同情の声も上がっている」
退職者への懲戒処分は法的に困難だ。
結果として、残っている人間——それも後から来た編集長——が責任を負わされる構造が浮かび上がる。
あなたならどう思うだろうか。
まだ着任して数ヶ月、前の体制で決まったことを引き継いだだけなのに、問題が発覚した途端に「責任者」として処分される。
そんな立場に立たされたら——。
ここには、組織の不祥事対応が抱える根源的な問題がある。
責任の所在が時間的にも人的にも分断されているとき、誰がどう責任を取るのか。
小学館の対応は、その答えの一つを示している。
責任者が誰かという問題に加えて、この騒動にはもう一つ見過ごせない点がある。
編集者が被害女性の示談交渉に直接関与していた事実だ。
編集者が示談交渉に関与——口外禁止を提案していた
小学館の編集者は被害女性の示談交渉に直接関与し、「口外禁止」を提案していた。
編集者がLINEグループに参加し示談交渉
日本経済新聞の報道によると、編集者は2021年5月、山本章一氏と被害女性が和解を協議するLINEグループに参加した。
編集者はこれらの条件を盛り込んだ公正証書の作成を提案した。
公正証書は公証人が作成する公式文書で、通常の示談書より法的拘束力が強い。
「口外禁止」条項に被害女性は納得せず
しかし被害女性は口外禁止条項に納得しなかった。
事件を公にできないまま幕引きされることを拒んだのだろう。
和解は成立せず、その後の民事訴訟へとつながった。
小学館は公式発表で「和解条件は編集者の参加以前に当事者間で協議されていた」と説明している。
だが被害者側の認識とは明らかに食い違いがある。
民事訴訟で1100万円賠償命令——問題は公に
2026年2月20日、札幌地裁は山本氏に対し、被害女性への1100万円の支払いを命じた。
この判決が報じられたことで、別名義での再起用という問題が一気に表面化した。
編集者が示談交渉に関与し、口外禁止を提案していた事実も、この過程で明らかになった。
なぜ編集者はここまで踏み込んだのか。
報道された事実から推測すると、「作品を守る」という使命感が、結果的に被害者軽視と受け取られる対応を生んだのではないか。
出版社にとって連載作品は資産だ。
特に「堕天作戦」のように一定の人気を得た作品を失う損失は小さくない。
問題をもみ消したい——そう考えたとしても不思議ではない。
しかしその行動は、被害女性の声を封じようとする姿勢に映った。
作品を守ろうとした編集者の判断が、かえって問題を大きくし、出版社への信頼を根本から揺るがす事態を招いた。
ここには、作り手と作品の関係をどう考えるかという、より大きな問いが潜んでいる。
問題の全容が明らかになるにつれ、小学館は第三者委員会を設置した。
この調査で何が明らかになり、問題はどう決着するのか。
第三者委員会は調査中——「類似事案」の有無も対象に
第三者委員会はマンガワン以外の類似事案の有無も調査中だ。
元大阪高検検事長が委員長——調査体制の本気度
第三者委員会は伊丹俊彦氏を委員長とし、他2名の弁護士を含む計3名で構成される。
伊丹氏は元大阪高検検事長。
検察トップを務めた経験を持つ人物を委員長に据えたことは、小学館がこの問題を極めて深刻に受け止めている証拠といえる。
形式的な調査で終わらせるつもりはない——そう読める布陣だ。
調査対象は「類似事案」にも拡大
調査範囲はマンガワンでの2件にとどまらない。
朝日新聞によると、「小学館の役員や従業員が関与する類似事案がないかなどについても調べる」という。
なぜ調査範囲を広げたのか。
2件の不祥事が連続して発覚したことで、小学館内部に「これは氷山の一角ではないか」という危機感が生まれたのではないか。
別名義での再起用という手法が、実は組織内で広く行われていた——そんな疑いを払拭する必要がある。
調査結果は一部公表——決着はこれから
調査結果は「関係者のプライバシーの侵害にならない範囲で公表する」とされている。
2026年4月13日時点で調査結果はまだ未公表だ。
現編集長の謹慎処分は、あくまで「社内調査の結果、さらにヤバイ話は出てこなかった」ことを受けた暫定的な対応とみられる。
調査結果次第では、問題がさらに拡大する可能性もある。
類似事案が見つかれば、追加の処分や制度変更が行われるだろう。
逆に、この2件だけだったと確認されれば、再発防止策の策定に焦点が移る。
調査の行方を見守るしかない現状だが、私たち読者にできることはあるのだろうか。
最後に、この問題が投げかける「作品と作り手」の関係について考えてみたい。
「作品は作品、作り手は作り手」で済ませられるか
- 小学館マンガワン問題は、逮捕歴のある原作者2名を別名義で再起用した事案
- 処分された現編集長は問題発生後の後任で、真の責任者は退職済み
- 編集者が被害女性の示談交渉に関与し口外禁止を提案、被害者は納得せず
- 第三者委員会が類似事案の有無も調査中、問題拡大の可能性も
- 読者である私たちも「面白い作品を手放したくない」という気持ちと向き合う必要がある
よくある質問(FAQ)
Q1. 小学館マンガワン問題とは何ですか?
逮捕歴のある原作者2名を別のペンネームで再起用していた問題。2026年2月に発覚した。
Q2. 小学館マンガワン問題の被害者は誰ですか?
山本章一氏に生徒時代に撮影された元教え子の女性。
民事訴訟で1100万円の賠償命令が出た。
Q3. マンガワンの現編集長は誰ですか?
星野氏。2025年10月に就任し、問題発覚後の2026年4月に謹慎処分を受けた。
Q4. なぜ小学館は逮捕歴のある作者を起用したのか?
人気作品を手放したくなかった編集部の判断が働いたとの見方もある。
調査は継続中だ。
Q5. 小学館マンガワン問題の第三者委員会とは?
元大阪高検検事長の伊丹俊彦弁護士ら3名で構成。
類似事案の有無も調査中だ。
Q6. マンガワン問題で処分されたのは誰ですか?
現編集長の星野氏が謹慎処分。
当時の編集長2名はすでに退職し責任を問えない状況だ。
Q7. 小学館マンガワン問題の調査結果はいつ出るのか?
2026年4月時点で未公表。
プライバシーに配慮した範囲で公表される見込みだ。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
reaitimenews.com
話題のニュースを「なぜ?」の視点で深掘りするニュースメディアです。
法律・心理学・経済など専門分野の知識をもとに、報道だけではわからない背景や理由をわかりやすく解説しています。
📚 参考文献
- 東スポWEB「逮捕されていた人物を起用…小学館の騒動、処分の現編集長に同情の声」(2026年4月13日)
- 小学館「マンガワンにおける原作者起用について」(2026年2月28日)
- 小学館「マンガワンにおける新たな原作者起用問題と第三者委員会設置について」(2026年3月2日)
- 時事通信「小学館、『マンガワン』原作者性加害問題受け第三者委設置」(2026年3月19日)
- 日本経済新聞「小学館、性加害の漫画家を連載起用 編集者は示談関与」(2026年2月27日)
- 朝日新聞「刑事事件でマンガ中止、名義変え原作者で起用 小学館マンガワン問題」(2026年2月27日)
- 朝日新聞「小学館が謝罪、調査委員会立ち上げ 原作者の刑事事件把握後に起用」(2026年2月28日)
- 朝日新聞「小学館『マンガワン』原作者起用問題、第三者委が調査開始」(2026年3月19日)
- 毎日新聞「小学館、第三者委員会を設置 マンガワン原作者起用問題」(2026年3月19日)
- 文春オンライン「マンガワン問題で小学館は何をして、何を“しなかった”? 2度の声明文を経ても沈黙が続く『問題の核心』とは」(2026年3月)
- mainichi.jp
- saga-s.co.jp
- mdpr.jp
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