2026.4.14
本文内に掲載の画像、映像は開発中のものを含みます。
任天堂のモノづくりに対する考えやこだわりを、開発者みずからの言葉でお伝えする「開発者に訊きました」の第21回として、4月16日(木)に発売となるNintendo Switchソフト『トモダチコレクション わくわく生活』の開発者のみなさんに話を訊いてみました。
まず、簡単に自己紹介をお願いできますか。
高橋です。1作目の『トモダチコレクション』※1からシリーズすべてのディレクターを担当しています。今作もディレクターとして参加しました。
※12009年6月発売のニンテンドーDSソフト。小さな島に自分自身や家族、友達など身近な人たちにそっくりなオリジナルキャラクター「Mii」をつくって住まわせ、人間ドラマを見守るゲーム。
上野です。今作ではプログラムディレクターを担当しました。これまではニンテンドー3DSの『トモダチコレクション 新生活』※2にプログラミングリードとして、『Miitopia(ミートピア)』※3にプログラムディレクターとしてかかわってきました。
※22013年4月発売のニンテンドー3DSソフト。2009年6月発売のニンテンドーDSソフト『トモダチコレクション』の遊びに、子育てやすれちがい通信などの新要素が追加された。
※32016年12月発売のニンテンドー3DSソフト。登場人物を好きなMiiに設定して、知り合いだらけの世界を冒険するゲーム。2021年5月にNintendo Switchソフトも発売。
大西です。今作では上野さんと一緒にプログラムディレクターをしつつ、プランニングも担当しました。その前は『Miitomo』※4というスマートフォン向けアプリの開発にプログラムディレクターとして参加していましたが、「トモダチコレクション」の開発は初めての参加です。
※42016年3月配信開始のスマートフォン用アプリ。自分にそっくりなMiiをつくり、トモダチとコミュニケーションが取れる。2018年5月にサービス終了。
蔭山です。今作ではアートディレクターを担当しています。アートディレクターを担当するのは、『Wii Sports Resort』※5、『nintendogs + cats』※6に続き、今作で3回目です。
※52009年6月発売のWiiソフト。南国のリゾート島「ウーフーアイランド」を舞台に、チャンバラやスカイレジャーなど12の遊びを楽しめる。
※62011年2月発売のニンテンドー3DSソフト。おもちゃで遊んだり、お散歩にでかけたり、しつけをしたりと、子犬や子猫と日々の生活を楽しむゲーム。
峰岸です。今作ではサウンドディレクターとして、BGMやSE(効果音)、Miiのボイスの開発のとりまとめを行いつつ、自分自身でもBGMを制作していました。これまでは「ゼルダの伝説」シリーズや、「スプラトゥーン」シリーズのサウンド開発にかかわってきましたが、「トモコレ」シリーズは今作で初めて参加しました。
ありがとうございます。それではまず、高橋さんから今作について簡単にご紹介をお願いできますか。
「トモダチコレクション」シリーズは、自分自身や友達、家族、憧れの人といった身近な人をMiiとしてゲームの中に住まわせて、彼らのお世話をしたり、彼らの自由気ままな生活を見守るゲームです。
シリーズとして、このスタイルを守りつつ、今作『トモダチコレクション わくわく生活』ではすべてを一からつくり直し、生まれ変わった新しい「トモダチコレクション」として開発してきました。
生まれ変わった新しい「トモダチコレクション」ということですが、開発のきっかけはどのようなところからだったのでしょうか。
開発のスタートは『Miitomo』が一段落した2017年頃だったと思います。私も、プロデューサーの坂本さん※7も、「トモダチコレクション」にすごく思い入れがあって、もう何年も3DSで前作の『トモダチコレクション 新生活』を遊んでいたんです。
でも、すっかり遊びつくしてしまって、坂本さんは 「もっといろんなことをさせてやりたいのに、もう自分はこのMiiたちに何も新しいことをしてやれない・・・」って悲しそうにおっしゃっていて(笑)。それで、新しい「トモコレ」をつくりたいね、と話していました。
※7坂本賀勇(さかもとよしお)。今作を含む「トモダチコレクション」シリーズプロデューサー。「ファミコン探偵倶楽部」シリーズや「メトロイド」シリーズなどの開発にも携わる。「開発者に訊きました 『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』」に登場。
それはすっかりMiiたちの親目線ですね(笑)。
はい(笑)。ただ、だからといって新しいことをさせるために今までの開発スタイルをそのまま継承して新しいアイテムを増やしていくとなると、どうしても物量勝負になってしまいます。それに、結局それを遊びつくしたら、いつかはまた飽きがきてしまう。
そこで、今作ではUGC(User Generated Contents)と呼ばれる「プレイヤーがゲーム内で遊ぶコンテンツをつくれる仕組み」を活用しようという方針で開発がスタートしました。
「トモコレ」のコンセプトは身近な人同士、共通の話題を持つ人同士で楽しめる「究極の内輪ウケソフト」です。プレイヤーが好きなものをつくれるUGCはそれとすごく相性がいいなと感じていて。
開発チームがゲーム内に用意した遊びにプレイヤー自身がつくったものを掛け合わせることで、楽しみ方が無限に広げられるだろうなと思ったんです。
画像Miiたちの行動範囲が前作より広がったのもUGCの仕組みを使いたいと思ったきっかけのひとつでした。Miiが自由に広い場所を動き回るようになったので、その分もっといろんな世話焼きがしたくなったというか。
3DSの頃も島が舞台だったんですけどどうしても当時のゲーム機の処理能力では、島の中でたくさんのMiiを自由に動き回らせてあげることが叶わなくて。
Nintendo Switchの処理能力ならMiiたちの行動範囲も広げられるし、UGCでもっといろんな内輪ネタを再現できそうだということで開発初期はその2点の検証を中心に進めていました。
なるほど。ハードの処理能力でそんなところが変わるんですね。でも、ハードの処理能力が上がったことで、Miiのグラフィックスも進化させることができるように思うのですが、そこには何か検討があったのでしょうか。
「トモコレ」の新作をつくる、となったときに、今の世代のゲーム機にあわせてMiiをもっと魅力的にしたいなという気持ちがありました。でも、あれこれとMiiに新しいことを足してみたら違和感が出てきたんです。
通常は、ハードの解像度が上がるにつれキャラクターデザインもできることが増えて進化していくもので、技術の進化とともに、Miiの表現も少しずつ変わってきました。
ただ、プロデューサーの坂本さんや高橋さん、過去の開発陣と話していて、「トモコレ」のMiiはほかのタイトルでのMiiと扱いが違うぞ、と感じました。Miiを単なるプレイヤーの分身としてとらえているのではなく、Miiといういきもの自体に愛情を注いでいるのがより強く伝わってきたんです。
いろんな人の思い入れが詰まっているからこそ、「解像度が上がったから」って簡単にデザインを変えてしまっていいものではない、と思いました。
なので、いろいろ新しいことを試してはいたのですが、やはり既存の顔パーツや手足のフォルムなど、Miiのアイデンティティとなる部分は変えないことにしました。
そのうえで、グラフィックスが当時より進化した現代でも古い印象を与えないように、各パーツの構造や設計を一から見直しました。さらにそこへ新たなカスタマイズパーツを足したり、プレイヤーの自由度を増やすことで今作ならではの新しさを出すことにしたんです。
パーツのデザインは大きく変えなかったけど、Miiの見た目のデザインはブラッシュアップしましたよね。
見た目に関しては、デモシーンなどMii同士のドラマ部分に没入しやすくなるよう、素朴でアニメっぽいトゥーン調をベースにアップデートしました。
検証しているうちに、それが「トモコレ」の1作目から坂本さんがやりたかったイメージと合致していたことを知って「よっしゃ」と思って。実は1作目のパッケージのMiiは、ゲーム内と違って今作のトゥーン調に近いデザインなんですよね。
Miiのボイスについても、同じような議論がありました。
今回、Switch向けに新たな音声合成エンジンを導入したことで、Miiの声の「元」となる声は、精度が高くて人間らしい、リアルなものになっています。ただ、そのリアルさをストレートに出してしまうと、どうもこれはMiiっぽくないなと思って。それであえて無機質っぽい声にするための加工をしたのですが、そのさじ加減に苦労しました。
これまでの「トモコレ」らしさを残しつつ、それでいて、適度に時代にあわせたアップデートをしたい。そのちょうどいい塩梅(あんばい)を見つけるのが難しかったんです。
ただ、これはボイスだけでなく今作全体について、どのセクションのスタッフもすごく考えたことなんじゃないかと思います。Miiの動きの調整も、いろいろありましたよね。
アニメータースタッフとも「これはリアルすぎるよね」みたいな相談をよくしていましたね。
動きがリアルでカッコよすぎると、やっぱりMiiっぽくないので。あえて動きをなめらかに見せるための予備動作を省略したり、印象に残るような大胆な動きを増やしたりして、試行錯誤しながらMiiの動きを決めていきました。
ハードの性能向上に合わせてキャラクターのデザインを豪華にしたり、声や動きをリアルにすることが、むしろシリーズとしての違和感をつくってしまうということですね・・・。
そうですね、このあたりは「トモコレのMiiっぽさとはなにか」という議論を開発チームみんなでたくさんしましたね。
見た目や声、動作だけでなく、行動についても同じで、できることが増えるとちょっと大人びて見えすぎるというか、前作までのかわいかったMiiがなんか違うなっていう意見がチームの中からもちょっとずつ出てきて。
なんか、Miiっぽくないね、って。
「ついついお世話したくなる、愛すべき対象」であってほしいのに(笑)。
「お世話をしたくなる」というのは、先ほどの親目線と共通してますね。ところで「お世話」というと、今回の新要素に「Miiをつまむ」というのがありますが、これは開発の初期段階で出てきていたアイデアなのでしょうか。
「つまむ」のは、もともとは今作のデバッグ※8機能として入れていたものだったんです。
前作ではマンションにいたMiiたちが、今作では行動範囲が広がって島中を歩き回れるようになったことでお互いに離れた場所にいるという状態が起きやすくて。それで、いろんな検証をするためにMiiを強制的に連れてこられるようにしたくて入れた機能でした。
ただ、やはり検証でMiiたちの行動を観察しているうちに「このMiiとこのMiiが一緒に遊んでくれないかなあ」っていう欲が出てくるんです(笑)。
それで、この「つまむ」機能自体がゲームの中にあったほうがおもしろいんじゃないかって思いました。
※8品質向上のため、開発中のソフトを実際にプレイし、プログラムの不具合等を調査すること。
前作では、特定のMii同士に仲良くしてほしいと思っても、プレイヤーはひたすら待つことしかできなかったですしね。
すごく直感的でわかりやすいですよね。これが最終的に今作において大事な操作になったと思うのですが、これを遊びの軸にしようと思ったのはいつ頃だったのでしょうか。
それは開発の後半になってからですよね。
そうですね。「つまむ」操作が実装できたのはいいけれど、つまんで落として、Mii同士が出会った先で何ができるとおもしろいのか、というところを長く悩んでいたように思います。
Mii同士の交流をつくるために、「糸電話」とか試作しましたよね。Miiに対してプレイヤーが、糸電話を通じて「この人にこういう話題を振ってみたら」というアドバイスを送ることができるっていう。
アドバイスを4択から選べる、みたいなね。でもそれだとMiiはプレイヤーの言うことを聞くだけで、Mii自身の意思決定ではなくなってしまって。
Mii自身が意思をもって行動をするからこそ、予想外の反応が返ってきておもしろいゲームなのに。人間関係をプレイヤー側で強制的につくるとトモコレの醍醐味でもある「意外な驚き」がなくなってしまうんです。
プレイヤーがMiiの行動を完全に指図するのは違うなあということで、「つまんで持っていくことはできるけれどそこで何をするかはMiiに委ねる」という形に落ち着きましたね。
なるほど。プレイヤーがどれくらいMiiに関与できるかの度合いが大事だったんですね。
ひとつ、当時の検証で印象的なできごとがあったのを思い出したんですけど、つまんで落としたMiiが、そこにいたMiiをじーっと眺めるだけで交流しなかったことがあって。
それを見たとき、相手に興味を持っているのかな?もしかして、ただお腹がすいたな~と思ってるだけかな?って、想像力がかき立てられて・・・。
「あ、こうやってMiiが何を考えてるのかわからない、この先に何が起こるかわからない、っていうのがおもしろいんだ」って改めて気づいたんですよね。
Miiって、ちょっととぼけたようなことをするところがありますよね。「トモコレにおけるMiiっぽさとは?」を開発チームで改めて考えていたときに一番しっくりきた言葉が、「愛らしい子どものような純粋な存在」でした。
ちょっとでも小賢しい発言をしたり、ウィットに富んだことを言ったりすると、なんかMiiっぽくないというか。
何を考えているのかわからなかったり、思ったことをストレートに言ってしまったり。ただ、そういう純粋さがありつつも、単に幼いだけではなく、たまに見せる大人っぽい発言にハッとさせられるところもあったり。そういう奥深さも出せるように意識していました。
そのほうが、Miiにこのアイテムを見せてみたらどう反応するだろうって、 いろんな想像力がかき立てられますよね。
たしかに、Mii同士の会話ってちょっと気が抜けてて、お互いかみあってるようでかみあってないようなところがありますよね。一方で急にするどい発言をして奇想天外な展開に発展したりもしますし。そういうのを見ると、思わずニッコリしてしまいます。
Miiはツッコミを入れない、っていうのもシリーズを通してずっと大事にしてます。彼ら、ボケるだけなんです(笑)。
ボケがあるのに、ツッコミまでゲーム側が用意してMiiに言わせてしまうと、ゲームの中でおはなしが完結してしまう。だから、観察しているプレイヤー自身にツッコんでもらいたいんですよね。「(Miiに向かって)なんでやねん!」って(笑)。
ツッコミどころと言えば、Mii同士の相関図の表示も一役買っていると思います。「あのMiiって私のこと好きだよね・・・」と思い悩む画像Miiの相関図を見たら、むしろ「合わないかも・・・」と思われていることが発覚したり(笑)。
ほかにも、自由に動き回るMiiたちを観察していると、例えばレストランでMii同士が一緒に食事をしながら話しているのを見かけることがあります。仲の良いMii同士が一緒に食事をしているのは微笑ましいのですが、あまり仲の良くないふたりが一緒に座って話しているケースもある。
Miiたちがしていることとしては「レストランでお話ししている」というまったく同じものなのに、心がざわっとして、まったく別の想像がかき立てられる。そういうふうに、あえて正しく整えすぎず、予想外のことが起こるようなバランス調整にも、力を入れましたね。
「トモコレ」のMiiは、その世界に生きている、意思をもった人格のある「いきもの」、なんです。
そういう「トモコレ」における「Miiっぽさ」とはなにか、そしてMiiそれぞれに人格があるからこそ観察がおもしろい、この考え方を開発初期からチーム全体で共有できていたことは、非常に重要だったなと思います。