なぜ日本人が「手放した土地」を中国資本が買い占める? 重すぎる「相続税」が招く恐ろしい実態
◆業種間格差? 課税所得の補足率
相続税撤廃に対し、「格差が広がる」と反対する声があるが、それは本来所得税で対応すべき課題である。なぜなら理論上、相続税と所得税の両方を課すことは二重課税にあたるからだ。マイナンバーによって所得捕捉が徹底されている現在において、格差是正は所得税で完結すべきであり、相続税を残す必然性はない。 現在、相続税を廃止している先進国は少なくない。G7以外でもオーストラリア、スウェーデンなどがその例である。こうした国々では、捕捉精度の高い所得課税により税制全体の公平性を担保している。 日本でもかつて、課税所得の捕捉率に関する業種間格差の不公平感を表す「クロヨン」という呼称があった。これは給与所得者は9割捕捉されているのに自営業者は6割、農林水産従事者は4割しか捕捉されていないという意味だ。マイナンバー導入後、この格差は縮まりつつある。 現金取引も減少しており、今後はより正確に所得を把握できる。そのため、相続税の存在は本質的に合理性を失っている。所得税で再分配できる制度基盤が整った以上、資産移転に対してさらに課税する必要はない。 むしろ、相続税の高さは結果的に日本人の資産を流出させ、外国資本による土地所有を加速させるという重大な問題を生んでいる。今後は「税の役割は何か」「どの段階で課税すべきか」を明確にし、世界標準に近づく税制改革が求められる。 髙橋 洋一(たかはし・よういち)プロフィール 1955年東京都生まれ。数量政策学者。嘉悦大学ビジネス創造学部教授、株式会社政策工房代表取締役会長。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(内閣総務官室)等を歴任。小泉内閣・第一次安倍内閣ではブレーンとして活躍。「霞が関埋蔵金」の公表や「ふるさと納税」「ねんきん定期便」などの政策を提案。2008年退官。菅義偉内閣では内閣官房参与を務めた。『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞受賞。その他にも、著書、ベストセラー多数。YouTube「髙橋洋一チャンネル」の登録者数は132万人を超える。
髙橋 洋一