父親が神奈川県警のパトカーに轢かれた
交通事故の直後や治療の最中は、被害者本人もその家族も、心身ともに余裕がなく、冷静に書類を読めないことが多々あります。私たち家族も、「もっと早く気づけていれば」と今でも強く後悔しています。
同じように混乱した状態で、重大な意味を持つ書類に署名してしまう人がこれ以上出ないように。私たちの体験と教訓をここに残したいと思います。
事故の概要と、残ってしまった後遺症の心配
ある日、父が神奈川県警の車両(パトカー)にはねられるという交通事故に遭いました。この時、父が歩行者信号の赤を見落として横断してしまったため、父側の過失が重い事故でした。
衝撃は大きく、父は肩を粉砕骨折する重傷を負い、すぐに手術を受けることになりました。その後の懸命なリハビリのおかげで、ある程度動かせるようにはなりましたが、現在も肩の可動域に支障が残っています。
たとえば、ジャケットを一人で羽織ることが難しいなど、日々の生活に明らかな影響が出ており、家族としても将来的な後遺症について深く心配していました。
事故直後は、手術や入院の手続き、そして父の身体のことで頭がいっぱいで、それ以外のことに気を回す余裕はほとんどありませんでした。
「物損の話だ」と受け取ってしまった書類
治療が続く中、神奈川県警側からパトカーの修理費用に関する書類が送られてきました。
送付状には、過失割合を決めたいという趣旨が記されており、示談成立後に振込用紙を送付するという流れになっていました。
この書類には別紙が同封されていました。
そこには「治療費などの人身については別で、自賠責の被害者請求を行ってください」という趣旨の案内が書かれていました。
これを読んだ父たちは、「パトカーの修理費についての物損の話だ」「物損と人身は別々に進むのだ」と、すっかり安心しきってしまったのです。
私は家族から「過失割合の数字」について相談を受けてはいたものの、送られてきた書類全体を自分の目で確認したわけではありませんでした。
そのため、そもそも「示談書」という重大な書類が含まれていることにすら気がついていなかったのです。
見落としてしまった「最後の文言」
本来、最も重く受け止めるべきだったのは、示談書の「本文」でした。
そこには、「その余の請求を放棄する」「何ら債権債務がないことを確認する」「今後請求しない」といった趣旨の文言が入っていました。いわゆる清算条項と呼ばれるものです。
しかし、当時の家族は、過失割合や表に書かれた金額、そして別紙の「人身は別に請求できる」という案内にばかり目をとられ、最後の条項が持つ意味の大きさを完全に読み飛ばしてしまっていました。
父自身も、あくまで「物損の示談だ」と信じて署名したのだと思います。
後になって過失割合に合意し、手続きが進む中で私がようやく書類の全容を把握したとき、ふと「この示談書、もしかして危ないのではないか」と気づきました。
慌てて弁護士に相談をしたところ、「詳細な文言次第だが、聞いた限りでは治療費を請求できない可能性が高い」と言われてしまいました。
別紙に書かれていた「人身は別」というのは、あくまで自賠責保険への請求手続きの案内であり、示談書本体が持つ「一切の請求を放棄する」という効力を打ち消すものではない、という理解になったのです。
以前、私は事故一般の注意点について事故直後に弁護士に短く相談したことがあったのですが、その時点では示談書が届いていることすら把握できていませんでした。
その時点で重大な影響が出る可能性に気づき、書類の危険性をもっと早く見抜けなかったことを、今でも悔やんでいます。
家族としての後悔と、ぬぐえない違和感
父だけの判断ミスとして切り分けられる話ではありません。
家族として相談に乗っていながら、書類の現物を確認せず、示談書の存在自体を見落としていたことは、私自身の大きな後悔でもあります。
この対応について、制度上の説明がまったくなかったとは言いません。
ただ、家族の立場からすると、パトカーの修理という「物損の話」として送られてきた書類の中に、事故全体の清算にも読める文言が入っていたのは、非常にわかりにくく、少なくとも被害者側に誤解を招きやすい対応だったと感じています。
決して、相手方に悪意があったと断定したいわけではありません。
「警察だから」起きたことではなく、相手が誰であれ、重傷事故の混乱の中では誰でもこうした見落としをし得るのだと思います。
それでも、結果として被害者側が重大な誤解をしやすい書類の作りだったことには、今も強い違和感が残っています。
同じ後悔をしないために、確認すべきこと
事故後は心身ともにしんどく、想像以上に判断力が落ちています。だからこそ、同じような状況にある方には、以下のことを強くお伝えしたいです。
「物損の示談書」だと思っても、必ず最後の文言まで読むこと
表の金額や過失割合だけで判断しないこと
送付状や別紙の説明だけで安心しないこと(本当に大事なのは、署名する書面本文の文言です)
治療中や重傷、後遺症の可能性があるときは、特に慎重になること
家族から相談を受けても、「自分は全部把握している」と思わず、必ず現物を確認すること
少しでも違和感がある書類は、署名する前に必ず弁護士などの専門家に見せること
その場ですぐに署名するのではなく、「一晩置く」「書類の現物を家族全員で読む」「弁護士など第三者に見せる」という手順を踏むことが、本当に大切です。
最後に
起きてしまったこと自体は、もう変えられません。
それでも、この経験をただの悔しさとしてそのまま飲み込むだけでは終わりたくないと思いました。
事故直後の混乱の中で、私たちのように書類の意味を取り違えてしまう人は、きっと他にもいるはずです。
この記事が、書類を前にした誰かが、署名する前に一度立ち止まり、現物を確認して専門家に相談するきっかけになればと心から願っています。
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