景気ウォッチャー調査は先行指標としての強みを持つが、近年その先行性の低下が指摘されている。時差相関分析によると、景気ウォッチャー調査の現状判断DIは、景気動向指数のCI一致指数に対して6ヵ月先行しているが、その先行期間はリーマンショック以降に2ヵ月、コロナ禍以降には1ヵ月へと段階的に短くなっている。
先行性低下の要因はコロナ禍に限らないが、本稿では特にコロナ禍を契機とした行動変容に焦点を当てた。例えば、キャッシュレス決済サービスやネットショッピングの利用増加など、実店舗離れの進行により、実店舗・対面サービス中心のウォッチャー構成では経済全体の動きを適切に捉えられなくなっている。こうした行動変容は景気ウォッチャー調査に二つの課題をもたらしている。一つは、実店舗のウォッチャーの「景気が悪い」という回答に、景気悪化ではなく実店舗離れ等の行動変容の影響が含まれてしまう点である。もう一つは、比重が高まったネット通販等の分野がウォッチャーの対象に含まれておらず景気全体の動きが捉えきれていない点である。
調査開始から四半世紀が経過し、産業構造や働き方など日本経済を取り巻く環境は大きく変容したことを受けて、内閣府は2025年6月に景気ウォッチャー調査研究会を立ち上げ、同年10月に中間提言を公表した。主な改善策として、(1)ウォッチャーの業種区分の見直し、(2)サンプルサイズの拡大、(3)ウォッチャーのモチベーション維持に向けた取り組みが示されており、時代に即した調査の刷新が期待される。
景気動向指数は対象月の翌々月の上中旬に公表されるのに対して、景気ウォッチャー調査は翌月の上中旬に公表され約1ヵ月分の速報性がある。景気判断理由のテキストデータを活用したセンチメント分析を行うと、センチメント指数は景気動向指数の動きをある程度追っており、先行的な景気把握ツールとして有望な可能性を示している。
■目次
1――はじめに
2――景気ウォッチャー調査とは
3――景気ウォッチャー調査の先行性
4――コロナ禍以降の人々の行動変容が影響
5――景気ウォッチャー調査研究会の立ち上げと中間提言
6――テキストデータを活用したマクロ経済予測への応用
7――まとめ