“300年沈黙”の富士山が大噴火したらーー停電、断水、交通機関ストップ。火山灰がもたらす被害 #災害に備える
電柱を模した柱に、電線や「碍子(がいし)」など実際に使われている部品を取り付け、住宅街などにある「配電線」を再現した。「碍子」は電線以外に電気を通さないための「絶縁体」として設置される。この部品があるおかげで、電気が柱などへ流れる漏電が起きずに済む。 停電は、火山灰に加えて「雨が降る時」に起きるという。そのため、この「配電線」セットに火山灰をかけ、その上から雨に見立てて水を注いだ。すると2分後、碍子から火花が散り始めた。
火山灰は水分を含むと電気を通す性質があるため、火山灰と雨が重なることで碍子が「絶縁体」として機能しなくなり、漏電が起きた。さらに、灰は空気中で水分を吸い寄せる「雨粒の核」の役割を果たすため、火山灰が噴出されると雨が降りやすくなると考えられている。 電力会社は漏電を検知すると、感電事故などを防ぐためにその地域への電気の供給を止める、つまり停電が発生するのだ。 停電を引き起こすおそれのある火山灰の深さはわずか3ミリとされる。実際に、2016年に熊本県の阿蘇山で噴火が起きた時、およそ2万7000戸が5時間以上停電した。 首都圏とその周辺ではおよそ40万世帯が停電するおそれがあるという試算があり、噴火が長引けば、停電の長期化も懸念される。 藤井所長は、都市機能のマヒや停電といった状況が重なると深刻な事態を招くと警鐘を鳴らしてきた。 「碍子に積もったものは人力で取り除かなければいけない。その人員を派遣するにしても、道路・鉄道が使えなければ復旧までに時間がかかる。火山灰そのもので人が亡くなるということはおそらくないけれど、交通網が途絶えた場合は病院に行きたい人が行けなくなる。二次災害と呼ぶべきかもしれないが、命を失う方が出てくるおそれもある。被害を長引かせないために、あらかじめどういう手順で対策を取るかを決めておくことが重要だ」
消えてなくならない火山灰 どう除去するか
火山灰が都市にもたらす影響を直視した対策の動きが行政・民間ともに始まりつつある。 ライフラインや物資の輸送をはじめとした、生活の維持に向けた具体的な対策を議論するため、国や東京都、鉄道、電力、通信会社などが参加する新たな協議会が2026年に立ち上がった。 水道事業者や電力、鉄道会社などでも対策が進んでいる。このうち東京都は、水道局が管轄する富士山に比較的近い浄水場で、水中の不純物を沈めて取り除く「沈殿池」をシートで覆えるようにするなど、水質を維持するための対策を講じている。また、インフラ施設や医療機関への通行を確保するため、優先的に灰を除去する道路を指定。路上の灰の除去訓練も行うなど、備えを進めている。