“300年沈黙”の富士山が大噴火したらーー停電、断水、交通機関ストップ。火山灰がもたらす被害 #災害に備える
火山灰は直径2ミリ以下と細かい。噴火の規模がそれほど大きくなければふもとにとどまるが、規模の大きな噴火で上空高くに大量の火山灰が放出されれば、風の強さや向きによって遠くまで飛び、降り積もる。富士山の場合は関東のほか、東北、北陸、東海、近畿まで飛ぶ可能性があるとされている。
電気や水道、交通機関にも“ミリ単位”で出る影響
2004年に出された想定では、宝永噴火と同等の規模の噴火が起きた場合、経済被害は最大およそ2兆5000億円だ。しかし藤井所長は、これをはるかに上回る可能性があると指摘する。 「噴火の継続時間にもよるが、交通も電力もダメージを受けることを考えると、2兆5000億円ではとても済まないだろう。さまざまなサプライチェーンも分断されうる」 火山灰はわずか数ミリ積もっただけで現代都市に深刻な影響を与えるという分析や実験の結果も、そろいつつある。積もる量によって、以下のような影響が出るとされている。 ▼0.5ミリ以上…地上を走る電車は運行停止。鉄道会社は、レールと電車の間を流れる電気から電車の位置を把握しているが、わずかな量でも灰がレールに積もると位置がわからなくなるおそれがある。 ▼2ミリ以上…空港では灰の除去が必要になり、作業が終わるまで滑走路が使えなくなる。 ▼3センチ以上…雨が降ると、二輪駆動車はタイヤが滑って走れなくなる。スリップ事故やスタックが起きる可能性がある。 ▼10センチ以上…灰が乾燥した状態でも、二輪駆動車は走れなくなる。 住民が移動できなくなるのはもちろん、トラックなどが行き来できなくなれば、物資の輸送も滞る。
また、断水のおそれもある。川などの水に火山灰が混ざって浄水施設の処理能力を超えると、飲み水に適さなくなることも考えられる。停電が長期化した場合、浄水場や配水施設が運転できなくなる可能性もある。下水道も、雨などで流された火山灰が入り込むと詰まるおそれがあるほか、下水処理場に火山灰が流れ込めば処理能力が落ちる可能性も指摘されている。 そして、交通機関やインフラの復旧に打撃を与え、社会に大きく影響を及ぼす可能性があるのが、停電だ。今回、取材班は、火山灰がインフラに与える影響を検証するため、さまざまな実験を行った。その中の一つ、電力中央研究所の協力による実験を紹介する。