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2019-07-21 (Sun) 14:20

札幌市営地下鉄東西線18m試作車、石狩川河口近くで余生を過ごす

札幌市営地下鉄試作車

日本で唯一、ゴムタイヤを用いた案内軌条式地下鉄として知られる札幌市営地下鉄。
1号線である南北線は1971年12月、2号線の東西線は1976年6月、3号線の東豊線は1988年12月に開業し、1999年2月まで路線延伸が重ねられました。
建設前の補助金申請で大蔵省の職員に「ヒグマでも乗せる気か」と罵られた札幌市営地下鉄ですが、いざ開業すると北の都を支える重要な交通手段として機能する事となり、2021年にはいよいよ開業50周年を迎えます。



札幌市営地下鉄東西線試作車(石狩市にて)

さて、表題にもある通り今回は東西線開業に先駆け製造された、18m級車体の試作車を紹介しましょう。
といっても開業1年前の1975年に製造された、南北線1000形・2000形に似た顔立ちの6000形プロト車(601号車)の事ではありません。
この車両は「試験車01」と呼ばれるもので、札幌市交通局が東西線琴似~白石間の建設工事に着手した1973年、トンネルの完成を待たずして試作し同年10月から南北線で試運転を行っていた代物です。
当時の南北線1000形・2000形は連接車体で1両当たり13.5mと短いですが、東西線ではボギー車構造とし車体長を18mに拡大しています。
そして塗装は山吹色のワントーン。
東西線のラインカラーに採用されたオレンジよりも明るい色味です。


JR北海道 国鉄 札幌市交通局 札幌市営地下鉄
札幌市営地下鉄東西線試作車の新聞記事
北海道新聞1973年11月17日付朝刊第14面市内版に掲載された記事

札幌市交通局が東西線琴似~白石間の建設を開始したのは1973年5月。
道新は東西線開業に向けた気運を高めるべく1973年11月13日~17日にかけ、5回に渡り「ただいま工事中 地下鉄東西線」という集中連載記事を札幌市内版の朝刊に載せていました。
最終回では工事中の東西線での試運転が出来ない事から、既存の南北線で試運転を実施していた18m試作車を紹介しています。
記事の冒頭によると東西線は当初、実際の開業より半年ほど早い1975年11月の開業を予定していたそうで、白石~新さっぽろ間の延伸区間についても実際より2年早い1980年の開業を目指していた模様。
見切れてはいますが試験車01の写真も掲載されています。
下記に本文を引用しましょう。

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ただいま工事中 地下鉄東西線⑤
感電防止へ車両改善 鉄板路面で揺れも最小に

 五十年十一月○日、東と西の終点、白石駅と琴似駅から一番電車が滑るように静かにホームを離れた。どっとわき上がる歓声と拍手。東西線開通の瞬間だ。この時、招待された市民の目に入るのは、南北線に比べて車体がひと回り大きく、天井にパンタグラフが付いている新型電車のはずだ。
 そう、東西、南北両線で最も異なるのが電車の規模、構造。まず定員を見ると、東西線は百二十六人乗りで南北線よりも三十六人増、従って車長が四・五㍍長い十八㍍となる。南北線にはなかった自動列車運転装置(ATO)、抵抗装置にサイリスターチョッパーを採用。これによって運転操作はボタン一つでOKとなり加速、制動がスムーズに行えるとともに、ゴムタイヤの焼けるようなイヤなにおいもなくなる。さらに外観上、一番目立った違いはパンタグラフのあること。南北線の電源はコンクリート路面のすぐわきを走るレール状のものから取っているが、万一、事故の際車外に出た客が手足に触れ感電する危険があることから電源を天井部に移して架線を張ってパンタグラフから取ることにしている。
 この新型の試作車がすでに完成、十月から試運転に入っている。ATO、パンタグラフはまだ設置されていないが現在は動力装置、台車具合をテスト中。
 こうした一連の車両改善で乗り心地はかなりアップするが、さらに揺れを少なくするため、走行路面に鉄板を敷くことになりそう。南北線のコンクリート製に比較して一層でこぼこがなくなるという。
 札幌の地下鉄は今後、東西線が五十五年まで東へ七・七㌔、厚別副都心団地まで延長されるほか、基本方針に基づき東西、南北両線を郊外に延ばし続け、六十年には合わせて四十五㌔とするプランを立てている。
(おわり)

出典:『北海道新聞』1973年11月17日付 朝刊第14面 市内版
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記事を読む限り、試験車01は6000形に先駆けてサイリスタ素子を用いた電機子チョッパ制御を搭載し、その実用化に向けた走行試験を行っていたようです。
まあ車体全長を延ばしただけの試作車なら、わざわざ製造して南北線で走らせる必要性が低いですからね。
その後、札幌市営地下鉄では東西線6000形を皮切りに、南北線3000形、東豊線7000形で電機子チョッパ制御を採用しています。

ATOに関しては東西線開業後に無人運転化(!?)を目指す動きがあったものの、私鉄総連からの反発に遭いお流れとなったそうです。
搭載車両も東西線6000形に留まり、1990年代初頭にはAVC(東車両基地で使用される自動回送システム)の導入と引き換えに順次撤去されたといいます。
しかし何故か1981年製の2次車、621~624号車はATO設備が出発ボタン・車上機器ともに残されたままとなり、使用こそされないものの8000形増備に伴う廃車までその姿を見る事が出来ました。
私も高校時代は毎日通学で東西線を使っていましたが、2次車の乗務員室前にいるとATO車上機器が発しているものと思しき「ピピピピピピ…」という音が始終聞こえてきましたね。
新さっぽろ方の制御電動車6121~6124ですと、運転士側背面のATC機器にATOが併設されているものだから天井まで達していたりね・・・懐かしいなあ。


試験車01 廃車体 保存車両
札幌市営地下鉄試験車01

さて、18m試作車の話に戻りましょう。
東西線の開業と引き換えに廃車された試験車01ではありますが、まだ車齢3年目という事もあってか解体を免れています。
そして札幌市の隣町・石狩市の花畔(ばんなぐろ)にある解体業者が引き取り、2000年代半ば頃まで倉庫として活用していました。


札幌市営地下鉄試験車01
札幌市営地下鉄東西線試作車(石狩市にて)

ところで、Wikipediaの「札幌市交通局6000形電車」には試験車01に関する記述があり、「この車両はその後石狩市花畔の会社の敷地内に倉庫として利用されていた(「試運転」の表示もそのまま残されていた)が、現在は撤去されている」としています。
これを読んだ私は思わずほくそ笑んでしまいました。
と言いますのも、実は試験車01は移転しているからで、10年ほど前から札学鉄研関係者の間で知られていた話だからなんですね。
山吹色の車体は現在、同じ石狩市内の八幡(はちまん)で余生を過ごしています。
この八幡という地域は道央を代表する河川である石狩川の河口東岸に位置する町で、札幌から厚田、増毛を経て留萌に至る国道231号線の沿線であります。
集落には石狩市農協が本部事務所を構え、周辺では稲作農業と畑作農業が行われています。
そして試験車01が置かれているのは、石狩八幡稲荷神社に程近い車体整備工場の敷地内で、手前の公道からその姿を眺める事が出来ます。


札幌市営地下鉄試験車01
札幌市営地下鉄試験車01(石狩市にて)

真正面から前面を眺めた様子。
車掌側を見ると「試運転」の札が残されていますね。
札幌市営地下鉄の営業車両は最初期の南北線1000形から、最新の東豊線9000形に至るまで前面に傾斜を付けていますが、この試験車01は全く傾斜の無い平たい顔をしています。
ただし側面については他の地下鉄車両と同様に傾斜を付けています。
ヘッドライトはオデコに2つ。
フロントガラスは左右2枚で貫通扉はありません。
これまたWikipediaの「札幌市営地下鉄」の項には「前面は6000形試作車に類似」とありますが、そもそも6000形プロト車はこんな角張った顔つきじゃないし、フロントガラスはパノラミックウインドウだし、貫通扉の有無やヘッドライトの位置など何もかも違うんですよねえ。
普段からついついWikipediaの粗探しをしてしまいますw


札幌市営地下鉄東西線 試験車01 石狩市八幡 保存車両 廃車体
札幌市営地下鉄東西線試験車01(石狩市にて)

側面窓の天地寸法は1000形・2000形1~3次車と同様、大きめに採られているのですが、左右寸法については戸袋を侵食しないよう狭めてあります。
ほとんどの窓は固定式ですが、3連窓の真ん中1ヶ所だけ開閉可能な2段上下式としています。
車体は3ドアの両運転台構造で、乗務員室には車内外を行き来する扉を設けず、引き違い窓を設置しています。
乗降口の両開き戸にも「試運転」の表示が。


札幌市営地下鉄試験車01 石狩市八幡
札幌市営地下鉄東西線試験車01(石狩市にて)

こちらの会社では事務室として活用しているらしく、室内には従業員の方が常駐されていました。
歴史的価値の高い車両ではありますが、会社敷地内に置かれた廃車体ですので訪問の際はくれぐれもご注意ください。
石狩川の河口付近にはモノコックバスの廃車体も多く見られるので、昭和の車両や廃車体が好きという人には楽しいスポットだと思います。

※写真は特記を除き2019年5月3日、石狩市八幡にて撮影

最終更新日 : 2020-01-10

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