第106話 ヒャハハハ!!
「ヒャハハハッ!! じゃあ早速村まで案内してもらおうか!!」
『主殿、その言い方は賊みたいなのでやめた方がいいのでは……』
へーきへーき。だって――
「ド、ドラゴン!?」
「怖いよぉー!!」
「た、食べないで……」
ノワールの方が怖がられているからね。
僕はドラゴンとかカッコイイものが好きだけど、子供にとって身体の大きなノワールは怖くて仕方ないらしい。
「お、お前ら落ち着け!! この人はオレたちを助けてくれたんだ!! この人の言うことを聞いてるドラゴンも悪い奴じゃないはずだ!! ……た、多分……」
最年長らしき男の子が泣きじゃくる子供たちを宥める。
でも自信はなさそうだった。
ノワールは地味にショックを受けたのか、何とも言えない表情をしている。
「な、なあ、そのドラゴン、オレたちを食べたりしないよな?」
「……ノワール、お前って人間食べるのか?」
『昔、縄張りに入ってきた人間を食い殺したことならありますが……魔王の命令で戦争に加わるまで積極的に人を襲ったことはありませぬ。主殿が用意してくださる食事で満足しておりますし』
「というわけで、安心して大丈夫だよ」
「どういうわけ!?」
あ、そうだった。
ノワールの言葉は他の人には分からないことを忘れてた。
……まあ、細かいことは気にしない。
「ヒャハハハ!! とにもかくにも早くノワールの背に乗れ!! 君たちの村を救いに行くぞ!!」
「あ、う、うん!!」
子供たちは怯えていたが、一度ノワールが飛び立つと反応が変わった。
「わー!! すごいすごい!!」
「高い!! 速い!!」
「見て!! もう村が見えて――あっ」
人生で初めての飛行体験にはしゃいでいた子供たちが一斉に静まり返る。
その原因はすぐに分かった。
森の中で少し開けた場所にある小さな村の各所で火の手が上がっていたのだ。
見える限りでも村の住民と思われる男たちの死体が転がっていて、無数のゴブリンが徘徊しているようだった。
「……酷いね」
『主殿、生き残った村人は村で一番大きな建物に集められているようです』
「そっか。じゃあ建物の外にいるゴブリンは殲滅しよう」
『ならばここはどうか我に。試したいことがありまして』
「ん、じゃあ任せた」
ノワールが上昇し、高所から村を見下ろして大きく口を開けた。
次の瞬間、彼の口からビームが放たれる。
すごーい!! 破壊光線、破壊光線だ!! ノワールの口から破壊光線が出た!!
『ゴブリンを殲滅しました』
「で、今の何?」
『我はまだ自分がワイバーンのつもりでした。しかし、主殿の番様に負けかけた時、ふと思いまして。あ、我って滅界竜だったなと。それで色々と試しているうちに――』
「破壊光線を撃てることに気付いたと。いいなー」
僕も口からビームを撃てるように……いや、流石に無理かな。
「ノワール、僕は先に降りて屋内にいるゴブリンを殲滅する」
『はっ。であれば我は主殿に追い立てられて外に出てきたゴブリンを仕留めましょう』
「子供たちをうっかり落としたりしないようにね」
僕はノワールの背から飛び下りる。
そのまま村の中心に着地し、村人が集められているらしい大きな建物の扉を蹴破って突入した。
「ヒャッハァー!! 押し入り治癒魔法士だァ!! 怪我人を出せェ!!」
中に突入すると、ゴブリンたちがギョッとしてこちらを見た。
……正直、反吐が出る光景だった。
ゴブリンに捕まった村の女たちは服を破かれ、凌辱されたのだろう。
抵抗したらしい女は原型が分からなくなるくらい殴られていて、今にも死にそうなほど衰弱している。
まだ村が襲われて大した時間も経っていないだろうに酷い有り様だ。
いや、頭では分かっている。
ゴブリンにとってこの行いは自分たちの繁栄に必要なこと。
これは生存競争の一環であり、勝者が敗者を虐げるのは普通の事だ。
でも――
「それはそれ、これはこれ!!」
見ていて気分のいいものではなかったので、問答無用で殲滅を開始。
手近なところにいたハイゴブリンの頭を掴み、握り潰す。
その頭蓋骨の欠片を、一番近くにいたゴブリンに全力投球した。
頭蓋骨の破片は弾丸のように飛び、ゴブリンを蜂の巣にする。
「マ、待テ!! 降伏ス――ギャ!?」
「え? あ、すまん。よく聞こえんかった」
ゴブリンが一瞬だけ人間の言葉を話したような気がしたけど、殺してしまった。
まあ、散々男を殺して女を犯したのだ。
殺されそうになったから敗北を認めて「命だけは助けてください」は道理が通らない。
殺されるのが嫌なら殺さない。生存競争とはそういうものであり、越えてはならないラインを越えた方が悪い。
「殲滅、完了」
ゴブリンを一匹残らず駆逐した。
僕は急いで犯されていた女たちに駆け寄って治癒魔法をかける。
「……助けてくれて、ありがとうございます」
「ヒャハハハ!! 礼は不要!! 怪我人を治療するのは当たり前のことだからなァ!!」
「あの、夫は……」
「……すまない。間に合わなかった」
「っ……なら、子供……たち……は……」
涙ながらに問いかけてくる女。
「安心してくれ、無事だ。怪我一つしていない」
「……ありが、とう……」
「――マインドコントロール」
僕は精神魔法を使って、女たちの記憶を少し弄ることにした。
辛い記憶は消した方がいい。
怪我は治癒魔法で綺麗に治して、ゴブリンに犯されている時の記憶は精神魔法と心魂魔法で消去する。
あ、でも妊娠してたらどうしようかな。
「……後で姉さんにお願いして避妊魔法をかけてもらおっと」
姉さんは望まない妊娠を避けるための避妊魔法を使える。
これでアフターケアはバッチリだ。
「じゃあ、僕はもう行く」
「え? ど、どちらに? まだお礼が……」
「礼がほしくて助けたわけじゃない。……あ、でもこのあと誰かが訪ねてきたら、歓迎してあげてほしいな」
「そ、それだけですか?」
「ヒャハハハッ!! それだけだ!!」
僕はそう言い残してダッシュで立ち去った。
外ではノワールが背中から子供たちを地上に下ろしている。
子供たちと入れ替わるように、僕はノワールの背に飛び乗った。
「あ、ま、待って!! アンタの名前を教えてくれ!!」
「ヒャハハハ!! 俺は怪人ヒール男だ!!」
ん? 待てよ?
ここで怪人ヒール男って名乗ったら、まだ僕の辻ヒール活動を知らないクリスティーナやリディエルに正体を気付かれるのでは?
……まあ、もう名乗っちゃったものは仕方ないよね!!
「ヒャッハァーッ!!」
僕はノワールに跨がって空を爆走し、姉さんたちのいる拠点へ戻った。
村を見つけた旨を皆に伝え、村で僕がやったことを姉さんだけに伝えると――
「アスク」
「うい」
「人助けはいいことだけど、この非常事態で趣味に走るのはやめなさい」
「うす」
僕がすぐに戻らなかったことを心配した姉さんに叱られてしまった。
ただ右も左も分からない状況で辻ヒールしてただけなのに。
―――――――――――――――――――――
あとがき
ワンポイント小話
作者「凌辱モノは嫌いじゃないけど、やっぱ純愛が好きなのよ。寝取り寝取られ寝取らせ逆寝取りも好きなのよ。でもリョナだけはダメなのよ」
ア「急に何を言い始めたの?」
「何とも言えない表情のノワール笑」「アスク無双」「まじで急に何を暴露してんだこの作者」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。
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