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2026年4月8日

相次ぐ東大不祥事 外部委員会が検証文書 委員長「自浄作用ないなら大学自治語る資格ない」

 4月3日、東大の一連の不祥事への対応を検証するための外部委員会「プロセス検証委員会」の報告書が公開された。同日には委員会は会見を開き、その内容を説明。東大の他人に無関心な風土や、公務員組織的な「公務員は悪いことをしないだろう」という思い込みが事案発覚後の対応を遅らせたと指摘した。さらに報告書では、現場、統括組織、独立した監査の3線でリスク管理を行う、東大が導入を検討している「3線モデル」が実効的になるよう注文を付けた。

 

記者会見する委員たち(撮影・溝口慶)

 

警察の要請に応じ調査停止は不適切 「大学自治を毀損する危うさ」

 

 報告書で、委員会は一連の不祥事のうち臨床カンナビノイド学社会連携講座を巡る不祥事について、東大が自浄作用を発揮できず評価を落としたことが問題だったと評価した。

 

 特に、警察の要請に従って東大が内部調査を中止し、報道陣の取材にもノーコメントを貫いた対応を問題だと評価した。報告書によると、東大は2024年9月に事案を把握した後、警察に関係者へのヒアリング調査などを中止するよう要請を受け、同年11月には関係する全ての調査を停止した。以降東大は、テレビ番組での報道を受けて25年6月に対策本部を設置するまで、調査を再開しなかった。また、24年12月に週刊現代がこの事案を報じた後、東大本部の法務課職員が報道機関の取材対応について警察に相談したところ、コメントしないよう要請されたため、東京大学新聞社を含むメディアからの取材に対し「現在、事実確認中であり回答できない」などと説明を拒んでいた。法務課長は、要請に従うべき法的根拠はない旨を警察から確認をしていたというが、東大は調査も取材対応も長い間行わなかった。

 

 委員会は、刑事責任の追求を目的とする警察の捜査と、自浄作用を発揮しステークホルダーからの信頼を回復することを目的とする大学の調査とでは目的が違うと指摘。警察の捜査を理由に調査を停止するのは「自浄作用と説明責任の放棄に他ならない」だけでなく、大学の自治を自ら毀損(きそん)する危うさもあると厳しく批判した。警察の要請の背後にある、捜査の秘匿性を守りたいなどとする警察の意図は、例えば大学側が直接聞き取りを行うのではなく外部弁護士を通して医学部の関係者に聞き取りを行うなどの代替策を取れば達成できたなどとして、警察との協議の余地があったとも指摘した。

 

 委員長の山口利昭弁護士は、弁護士会内で弁護士の懲戒を行い国家の介入を許さない弁護士自治を例に出した上で、自浄作用を発揮できず自律権を行使できない東大には、大学の自治を語る資格はないのではないかと持論を語った。

 

背景には官僚的な「無謬性」の病理か

 

 委員会は事案に対する一連の対応の全てが、世間的に見れば後手に回っていたと評価した上で、その原因を公務員組織に特有な「無謬(むびゅう)性」の感覚に起因する想像力の欠如にあると指摘した。

 

 報告書では、東大の法人化以前に由来する「公務員は悪いことをしてはならないし、しない」などといった無謬性の意識が残存していると指摘。不正の予防には熱心だが、危機意識が低く不正の早期発見や危機管理の意識が低い風土が東大にあると指摘。報告書によると公式の会議の場で南學正臣・医学系研究科長が「(教員が性風俗店に行ったのは)性感染症の調査のためだったと聞いている」「通報者にも問題があったと聞いている」などと教員を庇うような発言をした際にも異議の声が上がらなかったという。

 

 懲戒手続きのスピード感についても指摘された。報告書によると、現在懲戒処分の全プロセスを通して、平均で852日かかっているという。委員会は学問の自由の確保の点から慎重に懲戒を進めるべきとしつつも、特に今回の収賄の疑いのような、学問の自由と直接関わらないものはもっと迅速にプロセスをすすめるべきだとした。

 

 委員会は、科所長会議(学部長などによる会議)など公的な会議でも議事録を残さず、食事会などで意思決定を行う慣行があるなど、意思決定のプロセスを軽視する組織風土があることも指摘した。議事録を作らない理由について、国民からの情報公開請求に対する組織防御のためではないかなどとする声もあったという。

 

上層部の危機意識 総長は「思考停止」に

 

 報告書は、今回の事案について総長の危機意識の低さも問題だと評価した。総長は24年11月に事案の報告を受け、警察の要請でヒアリング調査が停止したことを認識していた。25年に入り他の理事から何も対応していないことの是非を問われても「警察も動いている」旨の情報を得ていたことから、何も行わず、思考停止に陥っていたと評価されている。

 

 総長が報告を受けた24年11月─12月ごろには別の教員の懲戒案件が進んでいたほか、学費値上げに関する抗議活動で複数の学生が無断で安田講堂に侵入したとされる案件の対応にも追われており、こうした他の事案の対応に追われていたことも危機意識が下がった一因ではないかと報告書は分析している。

 

提言 チェック機能を実効的に

 

  委員会は、東大はガバナンスの形式とそれを運用する実態が大きく乖離していると分析。ガバナンスが実効的に作用しているか、仲間内ではなく外部の目でチェックしなければいけないと指摘した。

 

 東大が改善策として掲げた3線モデルについても、より実行的になるような方策を提言した。部局間で相互に関心を持たない現状を改善するために、所属者の帰属意識が高まるような行動をとるべきだとした。




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