2012年 読売ジャイアンツ(優勝・日本一)
長野久義選手、現役生活お疲れ様でした。
3度のドラフトでやっと巨人に指名され26歳と遅いプロ入りながら1500安打を達成したまさに安打製造機として知られる長野。2019年にはまさかの人的補償で広島移籍もありましたが22年オフに巨人にトレード復帰。巨人一筋とはいきませんでしたが巨人を愛し、愛された選手と言えるのでしょう。
長野は2010年からプロとしてのキャリアが始まりましたが入団2年はタイトルこそ獲れど優勝はなし。チームとしても3年ぶりの優勝をかけて臨んだのがこの2012年でした。
今回は長野と2012年の巨人を見ていきましょう。
現役生活お疲れさまでした。
3年ぶりの優勝・日本一へ
第2次原巨人では2年目の2007年から3連覇を達成していましたが、2010年から2年連続3位に終わってしまいます。
何が何でも優勝を狙いたい巨人はこの年大補強に打って出ます。
まずは横浜をFA宣言していたサードを守る右打者の主砲、村田修一を2年5億円の契約で獲得。ちょうどこの時期といえばサードを守る小笠原道大が統一球の影響もあって成績を落としていました。村田は7年連続20HRを打っていたのでコーナーの打力を上げるという面では良い補強でしょう(人的補償→藤井秀悟)。
これに終わらずソフトバンクをFA宣言していた杉内俊哉を4年総額20億円の特大契約で獲得。杉内といえば00年代以降のホークスを支えた不動の左腕エース。巨人は2006年の桑田真澄退団以降空き番となっていたエースナンバー背番号18を与えこれ以上ない待遇でパ屈指の先発を獲得しました。
まだ終わりません。同じソフトバンクからはこの年19勝を挙げ優勝に貢献したD.J.ホールトンも獲得。ソフトバンクとの残留交渉が難航していたホールトンに2年総額500万ドル(当時のレートから計算すると3.75億円)という金額を提示し獲得に成功。この年圧倒的な投手力を誇ったソフトバンクからその2枚看板をぶっこ抜いたわけです。さすが巨人。
外国人ではA.ラミレスが退団しますが(DeNAに移籍)、その代わりにジョン・ボウカーを獲得。エドガーが残留し野手助っ人は2人で臨みます。
投手では前述のホールトン、9年目のディッキー・ゴンザレス、そして守護神候補にWBCカナダ代表にも選ばれたスコット・マシソンを獲得し合わせて5名の助っ人でペナントレースに臨みます。
意中の菅野智之を外して英明高の松本竜也を獲得した。
「ああ…うん…」って感じのドラフト
野手陣
まずは本記事の主役である長野について。長野はこの年全試合出場すると、打率3割、14HR/60打点と活躍。173安打で最多安打のタイトルを獲得しています。また意外に思われる人もいるかもしれませんがこの年は20盗塁でチーム盗塁王です。長野は入団から4年連続2桁盗塁していて盗塁ではこの年がキャリアハイだったんですね。OPSも.800台に乗ってますし外野守備でも貢献していたためWAR7.0と凄い値を叩き出しています。
その長野と最多安打を分け合ったのが坂本勇人。24歳の坂本はリーグ2位の打率.311と高打率を記録。また二塁打数35はリーグトップです。実は長野と坂本、OPSが同じ.815なんですよね。この年OPSが.800以上なのが後述の阿部慎之助とこの2人ですからここだけでもこの年の巨人打線がどれほど強いか分かるでしょう。坂本もWAR8.7と素晴らしい貢献度ですね。
そしてこの年大活躍したのが阿部慎之助です。そもそも統一球で打低傾向だったこの年ですがこの成績だけ見るとそれをも感じさせない好成績。打率.340で首位打者、108打点で打点王の打撃2冠に輝いています。出塁率、長打率、もちろんOPSもリーグトップ。2012年にOPSが.900台なのは両リーグ通して見ても阿部ただ1人。そのためwRC+が200と凄いことに。
先ほどの坂本もそうですがセンターラインにこれだけ攻撃力がある選手がいるとやはり強いですよね。
FA移籍の村田は12HRと2桁HRはしますが7年連続続いていた20HRの記録は断絶。当然打低環境ですから12HRでも凄いっちゃ凄いんですけどコーナーとしては突き抜けた打撃力が欲しいところ。
外野陣では期待されたボウカーが打率2割を切る不調で散々な成績に終わりますが37歳を迎える高橋由伸が勝負強い打撃を武器に8HRながら56打点を稼ぎ貢献。新人王を獲った2009年以降不調も目立った松本哲也も打撃フォーム改造もあって7月以降に攻守走でチームを支えました。
セカンドは前年盗塁王を獲った藤村大介が定着するかと思われましたが相手先発が右投げなら藤村、左投げなら寺内崇幸とツープラトン併用。しかし藤村自身盗塁数が前年比半減し成功率も50%に落ち込み守備範囲も狭くなり致命的なミスも増えレギュラー定着はできずに終わりました。
それでも得点数はリーグトップ。ただ個人的には盗塁数に注目してほしいです。この年のチーム盗塁数は102とリーグトップで長野、坂本、鈴木尚広、藤村、松本、寺内と6人が2桁盗塁を達成。巨人は大砲揃いもその反面走れないイメージがありますがこの年は走塁面でもかき回していたことが分かりますね。
頼れる正捕手として素晴らしい活躍を見せた阿部
BB/K1.47と選球眼+相手も恐れるバッターだった。
投手陣
投手陣ですがこの年の巨人は防御率2点台前半という本拠地が狭い東京ドーム+統一球だとしても素晴らしいものでした。
まず先発陣では前年最多勝+防御率1点台の内海哲也がこの年も15勝で最多勝と防御率1.98の大活躍。特に交流戦では4戦4勝と巨人初の交流戦優勝に大きく貢献。
ソフトバンクから移籍した杉内とホールトンも素晴らしい成績を残しました。杉内はこの年12勝を挙げ、防御率2.04といきなり好成績を残しました。勝利数は内海よりは少ないですが質のいい投球をしていたのは杉内でWHIPは1を切る0.98、FIPは1.75と12球団で1番の投球をしていたといっていいでしょう。K%27.1%の172奪三振(最多奪三振)と高く、この年はノーノーも達成しており期待通りの活躍でした。
ホールトンも当初は勝ち負けを交互に繰り返す不安定さを見せましたが交流戦を境に調子を取り戻すと7月8日の阪神戦から6連勝とすると最終的には12勝、防御率2.45で終えました。
前年新人王の澤村拓一は堀内恒夫以来の新人から2年連続の2桁勝利を記録。そう聞くと良いように聞こえますがこの年は肉体改造に取り組んだのは良いものの交流戦以降は調子を崩すことが多く前年ほどは上手く行かなかったようです。
救援陣を見ると40登板以上を果たした5選手が全員防御率1点台以下という凄すぎるもので特に圧巻だったのが「スコット鉄太朗(ネーミングセンス)」と言われる勝ちパでした。
マシソンはキャンプ時は制球難を露呈しましたが2軍調整中に豊田清二軍投手コーチから投げ急ぐ癖とフォークの握りを修正されたことを機に復調。4月中旬に1軍昇格すると救援で11登板連続無失点の快投。セットアッパーとして好投を続け7月にはNPB4人目の160㎞を記録。ASまでに10Sを挙げたもののその後怪我で離脱。最終的には40登板で防御率1.71と安定していました。
山口鉄也はこの年72登板。5年連続60登板とかなり投げすぎとも言えますが壊れなかったのはさすが鉄腕。7月に4連投した際には村田が川口和久投手コーチに「(山口を)休ませてください」と直訴するほどでしたがとにかく投げ続けました。防御率は1点を切り0.84。47HPで最優秀中継ぎを獲得しました。
西村健太朗は右肘靭帯再建手術を受けた久保裕也に代わって守護神になると一時はマシソンに守護神を譲るもマシソンの離脱で再び守護神に返り咲き、山口と共に盤石な継投リレーを構成。最終的に69登板で防御率1.14、32Sを記録しました。セーブ王は岩瀬仁紀に譲りましたがこの防御率はリーグの他守護神を大きく引き離しています。
救援陣は前述の久保裕也が靭帯再建手術、また雷神とも言われた越智大祐が黄色靭帯骨化症になるなど厳しいと思われていましたが実際は「スコット鉄太朗」の活躍や他の福田聡志、高木康成の活躍もあって救援防御率1.80と圧倒的リーグトップでした。
めちゃくちゃ強い勝ちパなんですが名前(スコット鉄太朗)だけどうにかなりませんでしたか?
3年ぶりの優勝へ
開幕カードのヤクルト戦、開幕投手は内海でしたが打線が沈黙し0-4で敗戦。その後の巨人は開幕ダッシュに大失敗しヤクルト、広島、阪神の3カードを終えて2勝7敗と大きく負け越し。
10日からの中日とのカードで今季初の3連勝も18日からの中日戦で5連敗を喫してしまいます。22日には借金が7に到達。このときスポーツ記事では今年の巨人の優勝確率を0%だとする記事が書き立てられました。というのも2008年にメークレジェンドした際でも借金6だったのでそれ以上は厳しいだろうという理由でした(とはいえまだ春先で悲観しすぎるのも…)。
3・4月は9勝13敗2分で終わりました。
しかし5月になると打線も奮起しだし、6日の阪神戦で勝利してから3つの引き分けを挟み10連勝を記録。16日から交流戦に入るのですがそれでも勢いは落ちませんでした。
特に30日の楽天戦、この日先発の杉内は序盤から調子が良く楽天打線を無安打に抑えます。巨人打線は楽天先発・田中将大の前に6回まで無得点も7回に高橋の2ランで先制。援護をもらった杉内は26人目までパーフェクトピッチングで完全試合を賭けて中島俊哉と対戦します。ところがその中島に対して四球を与えてしまい完全試合終了。その後は聖澤諒を三振に仕留めノーノー(史上75人目)、準完全試合を達成したのでした。
5月は16勝4敗3分で大きく勝ち越し、2位に浮上しました。
6月の巨人も好調で16日の楽天戦で初回に阿部の2点タイムリー、暴投の間に2点が入り合わせて4点を先制。2回にも谷佳知のタイムリー、坂本の2ランで4点を追加。序盤に大量点を取った巨人は10-1で勝利。巨人は初めて交流戦で優勝を果たしたのでした。MVPには内海、日本生命賞には杉内が選ばれました。
なんとセの球団が優勝したのはこれが初。
交流戦後も27日広島戦から5連勝。特に29日からの中日3連戦では3連勝して7月1日の勝利で遂に中日を抜き首位浮上。
巨人の勢いは止まらず5日DeNA戦から5連勝するなど絶好調。オールスター前にちょうど貯金20に到達して2位中日に4.5ゲーム差付けました。
オールスターには長野、坂本、阿部、村田、高橋、内海、杉内、山口が選出されました。
後半戦開幕後も4連勝でこれでオールスター前から引き分け挟み6連勝。
8月も3日DeNA戦から7連勝、17日広島戦から6連勝と大型連勝を記録。17日広島戦では高橋由伸が通算300HR、先発内海も完封で11勝目をマークしました。さらに23日ヤクルト戦では2点ビハインドで高橋由伸・古城茂幸のタイムリーで追いつくと長野・坂本の押し出し四球で逆転。この試合の勝利でM30が点灯しました。
7月8月共に貯金10と調子に乗っている巨人ですが勝負の9月でもそれは変わらず。2位以下を大きく突き放しながらマジックを順調に減らしていきます。そしてM1で迎えた21日本拠地でのヤクルト戦。5回終わって4-4の同点。そんな6回に3つの四死球を奪い取り満塁となった場面で打席には長野。長野はレフト前へのタイムリーで2点を追加。均衡を破ります。
9回には西村が登板。2アウトでランナー一塁の場面でヤクルト・田中浩康が空振りをするのですがカウントを間違えた一塁走者・雄平が飛び出してしまいこれをタッチアウト。なんとも締まらない気もしますがこの瞬間3年ぶり34回目のリーグ優勝を成し遂げたのでした。
10月7日のシーズン最終戦では坂本が3安打を放ちシーズン171安打。当時最多安打争いをしていた長野も171安打だったのでこれで最多安打を同時受賞となります。この試合は代打矢野謙次のサヨナラHRで勝利しています。
シーズン成績は86勝43敗15分で優勝。貯金43、勝率.667でした。
交流戦でも圧倒的でしたがセ4位以下の広島・阪神・DeNAに対し好相性を示していました。何せ2位中日とは10.5ゲーム差離れていました。春先の優勝確率0%ってなんだったのか。
CS・日本シリーズ
CS
CSでは2位中日との対決に。早々と決着を付けたいところでしたがなんといきなり中日に3連敗。土俵際に追い込まれてしまいます。
ただ中日側も高木守道監督と権藤博投手コーチの間で選手起用で揉めてしまいます。
それもあったのか第4戦では先発澤村が6回無失点で阿部が2打点で勝利すると、第5戦には代打石井義人がサヨナラ打、この勢いに乗った第6戦は2回に集中打を見せて逆転の3連勝でアドバンテージ含めて4勝で日本シリーズ進出を決めたのでした。
日本シリーズ
日本シリーズではこの年栗山英樹新監督の下、就任1年目にして優勝を果たした日本ハムと対決。
東京ドームでの第1戦は巨人内海、日本ハム吉川光夫の両先発。
巨人は4回に阿部のタイムリー、ボウカーの3ランで4点を先制。5回にも阿部がタイムリー、7回にはまたもやボウカーのタイムリーで得点を重ね内海も7回無失点の好投で8-1で勝利。
第2戦は巨人澤村、日本ハム武田勝の両先発。
この試合、澤村は陽岱鋼と中田翔に死球を与え牽制球のサインを見落とし阿部にマウンドで頭をはたかれる場面もありましたが8回無失点投球。打線は長野が初回先頭打者HRの1点のみでしたがスミ1で先に2勝しました。
札幌ドームに移った第3戦はホールトンが先発しましたがホールトンが3回持たず5失点KO。巨人打線も3点の反撃に留まりさらに阿部が走塁中の違和感で途中交代、第4戦でもベンチ入りしませんでした。
第4戦は巨人宮國椋丞、日本ハム中村勝の平成生まれ同士の投げ合い。
この試合なかなか点が入らず0-0で延長へ。西村が登板した12回裏に1アウト一塁になると大野奨太がバント。これを処理しようとした西村が一塁に投げうrもベースカバーをしていた藤村大介が落球。更なるピンチを招くとその後飯山裕志のサヨナラ打で敗戦し2勝2敗になってしまいました。
第5戦は第1戦と同じく内海と吉川の投げ合い。
この試合ではボウカーが2回に2ランを放ち先制。そこから4イニング連続で点が入り8点を取り最終的には10-2で勝利しました。
ただこの試合で話題になったのが加藤健の頭部死球疑惑。4回、日本ハム先発多田野数人が投げたボールは加藤の頭部付近に向かいました。そのまま打席で倒れ込んだ加藤ですが原監督はこれを「危険球ではないか」と柳田球審に抗議。するとこれを危険球と認め多田野は退場処分に。納得がいかないのは栗山監督。栗山監督は数分猛抗議をしますが覆らず。翌日の新聞では「誤審」の見出しが並び翌日以降の加藤の打席のたびにブーイングが行われました。当たった加藤は「前にも頭に当たったことがある。何が起こったのかなという感じだった」とコメント。一方多田野は「騙す方も騙す方、騙される方も騙される方」とコメントし球場を後にしました(後に和解)。
東京ドームでの第6戦は巨人澤村、日本ハム武田勝の両先発。
1回に矢野の2点タイムリーで先制、2回には長野がHRを放ち3点を先制しました。しかし6回に中田の3ランで同点に追いつかれてしまいます。
7回には日本ハムがチャンスを作りますが3番手の高木京介がそれを凌ぐとその裏には2試合の欠場を経て試合に出場した阿部のタイムリーで勝ち越しました。そして9回、山口がピンチを作りますが最後のバッター・糸井嘉男をしっかり抑えてゲームセット。巨人は2009年以来となる22度目の日本一を達成したのでした。
最優秀選手には第1戦と第5戦で好投をした内海、優秀選手には阿部、長野そしてボウカーが選出。ボウカーはシーズンでは打率1割台に低迷しますが第1戦と第5戦で吉川相手に2本のHRを放ち打ったヒットは全て得点に繋がりました。
ノイジーもそうでしたが日本シリーズは爆発力ですよね~
まとめ
このように攻撃力・投手力どっちも抜けていた巨人が2012年の日本一を掴みました。その一方で巨人はここから13年連続で日本一を逃しており、かつての巨人=日本一という時代を知るファンからしたら少し物足りない期間ではあると思います。(事実虚カス気味の俺の祖父がそうです。)
それはさておき2012年オフの巨人の動きも積極的。まずドラフトでは巨人入りを熱望していた菅野智之が2度目のドラフトで念願の巨人1位入団。
みなさんご存じの通り菅野にとって原辰徳監督は叔父に位置しています。
さて、そんな菅野の活躍、そして2連覇に向けて巨人は翌年どのような戦いを見せるのでしょうか。
一方で菅野をかつて強行指名した日本ハムは大谷翔平を強行指名していた。



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