light
The Works "気が付いたら最高だった" includes tags such as "腐向け", "槍弓" and more.
気が付いたら最高だった/Novel by 最中

気が付いたら最高だった

5,541 character(s)11 mins

hollow設定な槍弓バカっぷる話。細かい設定の差異はご容赦を。 ■タグにブクマコメありがとうございます!

1
white
horizontal

 

その日の釣果はすこぶる良かった。

良かったとは言え、ただ単に型の良いアジが大量に釣れただけだったが。
その大量のアジを勝手知ったる遠坂邸に持っていけば、アーチャーは迷惑そうな顔をしながらも、見事な手捌きで大量のアジを南蛮漬けへと変身させてくれた。
あまりに大量のアジの南蛮漬けは二人で消費しきれるものではなく、自分達の夕食分を除いて衛宮邸へはアーチャーが、柳洞寺へはランサーがおすそ分けに持って行った。

「貴方もようやくイイ人が出来たのねぇ」
「ぶっ!!」

しみじみと呟かれたキャスターの言葉に、柳洞寺の縁側でランサーは麦茶を盛大に吹いた。その様子にキャスターから汚いわよと嫌な顔をされるが今は構ってられない。

「何だよそのイイ人って…」
「だから言葉通りよ」

濡れた口元を手で拭うランサーを白い目で見つつ、キャスターはため息をついた。

「こんな気の回るお嬢さんなんて滅多にいないわよ」
「だから何のことだって」

訳が分からず首を傾げるランサーに、キャスターは綺麗にたたんだ萌黄色の風呂敷と、南蛮漬けが入っていた容器に添えられていたというピンク色に花柄が可愛くあしらわれた一筆箋を差し出した。
風呂敷は南蛮漬けを入れた容器を包んでいたものだが、その一筆箋はどうみても女性が使うようなもので、それには "あと2~3時間後に漬かりごろになります。夕食時にでもお召し上がり下さい。容器の返却は無用です。" と、丁寧な文字で用件がしたためられていた。
これを書いたのは勿論アーチャーだろう。ピンクの一筆箋は恐らく適当なメモが見当たらなかったので凛のものを拝借したのだろうが…。

「季節柄を考えた風流な風呂敷にこの一筆箋の気遣い、そして完璧な料理の腕…。貴方、こんな優良物件なお嬢さんなんて滅多に居ないわよ」
「はぁぁ!?」

アーチャーはお嬢さんではなく立派な男の子です!!と喉から出掛かったが、ランサーは必死にそれを飲み込んだ。
風呂敷の萌黄色は暑すぎない今の季節に仄かな涼やかさを運ぶようで確かに似合っている。
季節とか風流とかにとんと縁のないランサーにはあまり分からない感覚だが、あの細かいアーチャーならそんな気遣いくらいしそうなものだ。
その気遣いと巻き込み事故のようなピンクの一筆箋。それらを見てキャスターは、南蛮漬けを持たせてくれた相手が女性でランサーの恋人だと勘違いしているらしい。
これは妙な勘違いをされたなとランサーは頭を抱えた。
確かに、アーチャーとの関係を一言で言うなら恋人同士なのだろう。だが色事に慣れていないアーチャーは、男同士と言うこともあり、それを素直に受け入れることが出来ないらしく、未だ二人の関係は公にしてはいない。
色事の形に拘りの無いランサーは、まぁそんな関係もアリだろうとアーチャーの望むまま秘密にしていた。
関係を持つのはアーチャーひとりだし、アーチャー以外とは持ちたいとは思わない。そこまでアーチャーに入れ込んでいる自覚はあるものの、公にしていない以上、特に今までの生活を変えることなく、街で可愛い娘を見ればナンパもするし、美人な女を見れば素直に褒める。
表向きの生活自体、ランサーはなにひとつ変えていなかったせいか、キャスターにいらぬ誤解を受けてしまったようだ。
確かに自分のイイ人であるのは間違いないが、この誤解をどう解くべきかと悩んでいると、キャスターが無駄にキラキラした目で身を乗り出してきた。

「で、どんな娘(こ)なの?」

あ…イカン。これはワイドショーを観る女の目だ。
恐らく生半可な返事では自分は柳洞寺から出して貰えないだろう。
最速の足で逃げることも考えたが、その前に寺の周りに張り巡らされた結界に阻まれて袋の鼠なのは目に見えている。
ランサーは更に頭を抱えて観念したようにため息をついた。

「あー…なんというか…カワイイ?」

その返答にキャーッ可愛いですって!! と黄色い悲鳴を上げながらキャスターが身をくねらせた。
他は!? 他には!? と矢継ぎ早の質問に、明日にはきっと関係者みんなにこの話が伝わってんだろなーとランサーは遠い目をするも、キャスターは構うことなく興味津々にランサーの次の言葉を待っている始末。
どうせ全て答えるまでこの魔女は自分を柳洞寺から出してはくれないだろうし、要は相手がバレなきゃいいんだバレなきゃ、とカラドボルグくらいは覚悟を決めてランサーは開き直ることにした。

「ものすごい照れ屋で可愛くて口下手で可愛くて口を開けば皮肉しか言わない捻ねてる奴なんだけどそれがまた可愛くて捻ねてるクセに根っからのお人好しな所も可愛くて自分を省みずに他人に尽くしすぎる所とかも庇護欲をそそってまた堪らなく可愛い」
「…ノンブレスでありがとう。貴方のことだからもうその娘には手を出しちゃったんでしょ? そっちはどうなの?」

その娘という言葉にポリポリ頭をかきつつも、ランサーは質問の答えに想いを馳せた。
ランサー的には毎晩でも致したい所だが、恥じらいの勝るアーチャーは3日に一度程度しか許してくれない。なのでその貴重なチャンスの際、ランサーは己の持てる技と力全てを注いでアーチャーを愛しつくすのだが…まぁ、なんと言うか、もともとの相性が良かったのだろう、とにかく快いのだ。
初めは気丈に抵抗しつつも段々と快楽に溺れていく貌も、拒みつつもぐずぐずに蕩けてランサーを銜え込んだまま離さないその身体も、とにかく全てが快いのだ。今その痴態を思い出すだけでも下肢が重くなる。
男同士だから確かに致すまでの準備は大変だが、その準備すら己を煽る糧にしかならず、何度貪っても足りない相手などアーチャーが初めてだった。

「あー…最っっっ高…」

少し恍惚の入った表情で心の底から吐かれたランサーの言葉に、キャスターは若干引きつつ、ふと気づいたことを口した。

「貴方そのアロハシャツ…綺麗にアイロンかけてあるわね。それも彼女が?」
「へ? あ、そうそう、アー…じゃなくてその彼女ってのがいつも洗ってピシッとアイロンまでかけてくれる」
「もう完璧じゃないその娘。これはもう年貢の納め時ね」
「年貢ってなんの…」

訳の分からない会話に困惑しているランサーの鼻先に、キャスターはビシリと指を突きつけた。

「キャ…キャスターさん?」
「これからする質問に簡潔に答えなさい」

据わった目で指を突き付ける魔女に、ランサーは蛇に睨まれた蛙のごとくホールドアップの姿勢で慌てて顔を上下に振った。


「彼女の料理は?」
「プロ級」
「家事は?」
「完璧」
「性格は?」
「可愛い」
「身体は?」
「バッチリ」
「つまり相性は?」
「最高」

なら決まりじゃない、とキャスターは徐に立ち上がると何処ぞのあかいあくまよろしく、両手を腰に当てランサーを見据えた。

「貴方その娘と結婚すべきよ」
「結婚!!??」

?マークを周囲に飛ばして素で驚いているランサーの様子に、キャスターは呆れるように溜め息をついた。
ランサーは思考回路が追いついていないらしく、未だに目をぱちくりさせている。

「家事も性格も身体も完璧…そんな娘が過去にあなたの周りにいたことがあって?」

そう言われてふと考えてみると…いない。確かに女でも男でも性格も身体も相性がここまで好い相手はいなかった。これに家事の腕前まで付いてくるとなれば、まさに完璧としかいいようがない。

「…まぁ多分、この先もそんな良い娘は現れないでしょうね」

キャスターの言葉にランサーは目を見開いて固まった。
自分の相手など既にアーチャー以外に考えられないのだ。後にも先にもアーチャー以上の相手など現れようがない。

「身近すぎるあまり、こんな目の前にあった幸せにオレは気づかなかったなんて…!」
「そうよ、今頃分かったの? でも、そんな良い娘なら、狙ってる人なんて山ほどいるでしょうよ。傍にいてくれるからって安心して間男に横から掻っ攫われても知らないわよ」
「間男!!??」
「考えてもみなさいよ。そんなイイ娘、他が放っとくわけないじゃない」

アーチャーはイイ娘ではなくイイ男なのだが…と思いつつも考えてみれば、あかいあくまを筆頭に騎士王は勿論のこと、間桐の嬢ちゃんもアインツベルンの嬢ちゃんもアーチャーに熱い視線を送っている気がする。
視線と言えば衛宮邸の隣の虎の姉ちゃんも怪しいし、怪しさで言えば英雄王なんざ、あざとく薬で小さくなってしょっちゅうアーチャーに抱き付いてる…しかも腰あたりに。
外道神父あたりは違うと思いたいが、衛宮家を眺めるあの嘗めるような視線がいつ化けるとも分からない。

「………周りは間男と間女だらけじゃねーか…!!」
「ま…間女??? えっと…何か違うような気がするけど、それはいいとして。まぁそうならないうちに、自分だけのものにして周りに知らしらしめる意味でも結婚を申し込むべきってことよ。どんな愛にも障害が付きものだけど、愛があれば超えられるわ!!」

私達みたいに! とキャスターは頬を赤らめながら身悶えている。
ランサーは決意を固めたように立ち上がると山門へと足を向けた。

「よし…! ありがとよキャスター。きっぱりケジメつけてくるぜ!!」
「がんばるのよランサー!! 愛は勝つよ!!」
「よっっっしゃぁぁぁっっっ!!! 待ってろよアーチャーぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

そう雄叫びを上げつつ最速のサーヴァントは山門を駆け抜けて行った。その姿が見えなくなるまで手を振っていたキャスターは、手を止めてふと気付いた。

「は? ……アーチャー…?」






衛宮邸では桃のタルトをお茶請けに、皆で3時のお茶をしばいていた。
凛達が揃っているだろうことを配慮して、アーチャーがアジの南蛮漬けと共に持ってきたものだ。もちろん手作りなのは言うまでもない。

「相変わらず上手よねアンタ」
「流石アーチャーさんですね。台がサクサクしててすごくおいしいです」
「アーチャーのお菓子は……んぐっぐっ……最高です」
「シロウ、お砂糖はどこ?」
「凛、桜、ありがとう。セイバー、慌てなくても沢山ある。ゆっくり食べてくれ。イリヤ、シュガーポットはここだ」

にこにことおいしそうに食べる面々に、まんざらでもない様子でアーチャーは紅茶を給仕して行く。
和気藹々とした居間のその様子を庭先で微笑ましく眺めながら、士郎は洗濯物を手際よく取り入れていた。
と、不意に玉砂利を踏みしめる音がして、士郎が洗濯物越しにそちらを見やると、見慣れた派手なアロハの男が門をくぐってこちらに歩いて来る。

「ランサー、どうし…」

士郎は声をかけようとして、ランサーのあまりの鬼気迫る表情に思わず口をつぐんだ。
ランサーは士郎のことなど視界に入っていないかのように横を通り過ぎると、まっすぐに居間へとつながる縁側へと歩いていく。
ランサーが現れたことに気付いた居間の面々は、セイバーを除いて皆タルトから顔を上げると不思議そうにランサーへと目を向けた。

「どうしたの? ラン…「アーチャー!!!」

凛の言葉を遮るように名を叫ばれ、アーチャーは何事かとティーポット片手に台所から顔を覗かせた。

「一体どうしたんだランサー」
「…アーチャーこっちへ来てくれ」

いつにない真剣な表情でそう言われて、アーチャーは何事かあったのかと慌ててティーポットをテーブルへと置くと、ランサーへと歩み寄った。

「ランサー何があった?」

声をかけてもランサーは黙ったまま、真剣な表情でアーチャーの瞳をじっと見つめている。
逸らすことを許さないような熱のこもった視線にアーチャーが幾分居心地の悪さを感じ始めたころ、ランサーはアーチャーの左手を両手で包み込み口を開いた。

「オレは長いこと生きて…いや、もう死んでるんだが…まぁサーヴァントだし、とりあえず大まかに言って生きてるみたいなもんでいいだろ。それで長い時間の中でようやく自分に大切なものを見つけたんだ」
「…ランサー、言っていることの意味が…」
「まぁいいから聞け。身近すぎてオレは目の前の幸せに気付かずにいた。それはなアーチャー、オマエだ」
「??? …だから言ってることの意味が…」

困惑するアーチャーの手を離さないとばかりに握りしめ、そしてランサーは男前な笑顔で言い放った。



「アーチャー、結婚しよう」




その瞬間、凛は手の中のティーカップを粉砕し、セイバーは顔面で分厚いテーブルを叩き割り、桜の周囲には黒いウネウネが生え、イリヤは点けようとしていたテレビのリモコンを真っ二つにへし折り、士郎は持っていたシーツを思わず引き裂いた。

「身体の上では、オレ達はもう既に夫婦も同然だ。だから男としてきっちりケジメをつけさせてくれ。結婚しようアーチャー」

「…………っっこんのっったわけがぁぁぁぁぁぁーーーーーーっっ!!!!」




この日、衛宮邸は全壊した。


Comments

  • わんわんお
    July 30, 2024
  • November 18, 2023
  • March 27, 2022
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
© pixiv
Popular illust tags
Popular novel tags