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Conversation

奇跡って本当に起こるんだなあ。 いつものようにスタバで作業をしていると、高齢の女性がすぐ横に立ち止まった。 なんだろうと思って振り向くと、彼女はぼくの目をじーっと覗き込んでいた。 「あなた・・・旅行の?」 「え?」 「あなた以前、旅行のお仕事をされてなかった?」 「はい・・・。え、もしかして」 「やっぱり! 中村さんでしょう? えー、なんてこと! 私あなたと昔、オーストリアのインスブルックへ行ったのよ! 私も中村です、あなたと同じ」 「あ~! あのときの中村さん! 覚えてます! なんという・・・!」 それは2012年8月、入社2年目の夏のことだった。ぼくは添乗員としてなかなか良い結果を出せずにいたため、前年の秋にバルト三国へ行って以来、しばらく添乗に出してもらえずにいた。そんななか、10ヶ月ぶりの添乗が決まった。 行き先は、オーストリア西部のチロル州。アルプスに抱かれた古都、インスブルックに長期滞在する旅だ。 「もう失敗はできない。とにかくお客さんに楽しんでもらえるよう全力を尽くそう」 そういう強い覚悟で臨んだツアーだった。 朝から晩までお客様のケアに必死だったが、大きなトラブルや失敗もなく順調に日数は過ぎていった。22名のグループにも和気藹々とした雰囲気が漂っていた。なかでも、中村まりこさんともう一組のご夫妻が、ぼくのことをよくかわいがってくれた。 現地での最終日、帰国の準備をしているとき、中村まりこさんとご夫妻がやってきて、ぼくに素敵なシャツをプレゼントしてくれた。そこには手紙も添えられていた。 「いよいよ残すところ一日となりました。中村さんの頑張りにはおばさん達は時には心痛め、又感心しています。本当によーく毎日朝から晩まで働いて頑張りました!! お蔭様で楽しくインスブルック旅行が出来ました。感謝を込めてささやかなプレゼントですが、受け取って下さい。サイズが合わなかったらどなたかに差し上げてくださいネ!! では、これからも身体に気をつけて」 添乗員という職業に就いて、初めてお客様からいただいたプレゼントで、本当に嬉しかったのをよく覚えている。 「どうしてこちらに?」 「今日は人に会うためたまたま来たのよ。あなたは? 」 「ぼく今はこの近くに住んでいるんです」 「そうだったの。前は二子玉川の近くだったわよね。だから二子玉川へ行くとよくあなたと会わないかなって思ってたのよ」 「そうでしたか」 「あなたが退職したあとも、ブログを読んでいたわよ。まさかこんなところでお会いするなんて、神様はいるのね」 「本当に奇跡ですねえ」 ぼくはインスブルックでの思い出話や、退職後に行った旅のことについて、少しだけ話をした。 「お会いできて良かったわ。写真もありがとう」 「こちらこそ、ありがとうございました! お身体に気をつけて。お元気で!」
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