特別評論・福島第1事故15年 元原子力規制委員会委員長代理 島崎邦彦 「私たちは薄氷を踏んでいる」安全性、厳しく見ているか
15年前に起きた東京電力福島第1原発の事故で、私たちは地震と津波の大きな力を見せつけられた。原発は元々、大地震があまり起こらない欧米諸国などで建てられたが、よく起こる日本にも同じように建ててしまった。大地震のない米・ニューヨークのような地域なら心配は不要だが、日本では原発が地震で破壊される危険性がある。
現在、日本では原発15基が稼働している。私たちは薄氷を踏んでいるのではないだろうか。
私は福島事故の翌年に発足した原子力規制委員会で委員を2年間務め、地震や津波についての原発の安全性を調べる審査を担当した。何人も委員が入れ替わり、今では発足当初よりも原発を厳しく見なくなったように思えて心配している。
地震学は役立たずと思われてしまうかもしれないが、私たちが生きている日本では、どこで、いつ大地震が起こるのかは分からない。ガッチリとした大地に住んでいると思うのは大間違いで、あす大地震が目の前で起こっても不思議ではない。
例えば2011年3月11日、今は「3・11」と呼ばれているあの日。東北地方の太平洋沖で東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生し、福島第1が事故を起こした。
政府の地震調査委員会が「大津波が起きるかもしれない」と警告していたので、東電は計算を行い、最高15・7メートルの津波が来る恐れがあることは分かっていた。
だが、それがいつなのかは分からない。原発の敷地は高さ約10メートルと低く、危険は分かっていたのに、津波が襲ってくるまで東電は何も対策していなかった。
大地震の多くは海の溝(海溝)で起こる。地球の表面はプレートと呼ばれる十数枚の薄皮に分かれている。この薄皮の下は溶けていて、プレートはそれぞれ勝手な方向に動く。そして、その境がずれると地震が起こる。
1923年の関東地震(関東大震災)では、相模湾に延びた海溝で地震が起こり、10万5千を超える犠牲者があったと言われている。
また、東北地方の東海岸は過去に何度も大津波に襲われてきた。昔の津波で運ばれた土砂などが、海から遠く離れた地区の地下に残っていることから、それが分かる。
プレートの境は線のように細くはなく、広い幅がある。そして、日本列島全体はこの幅の中にある。この境目で、地震は集中して起きている。
もちろん、海溝だけではない。陸上で大地震が起こることもある。そうなれば、被害は大きい。10年前に起こった熊本地震では、熊本県内で死者約270人、負傷者は3千人近くに上った。
原発は危険物であり、日本では地震対策を考えなければならない。
地震が起こって原発が壊れると、放射能を持つ雲が空中に浮かび、風と雨で放射性物質をばらまく恐れがある。3・11の時は、東北地方の東海岸から海の方に雲が多く出たようだ。国内では実際に避難した人もいた。
もし、原発の立つ地面のすぐ近くで大地震が起きたら、どうだろうか。
文字記録が比較的多く残る500年間で、震源が浅く規模が特別大きかった地震を挙げようとすれば、少なくとも7回はある。すぐ近くで起きたら、これらよりずっと小さな地震でも原発の破壊を起こすかもしれない。
1923年関東地震のような大きさであれば、壊れた原発から飛び出す放射性物質はどこまで及ぶのか恐ろしくなる。地震は「いつ」「どこで」に加え、「どんな規模」かを正確に予測することも非常に難しい。