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鉛のような重さのそれは、/Novel by はる

鉛のような重さのそれは、

3,559 character(s)7 mins

どこかの世界のどこかのふたりの話。
ひとりが一方的に喋ってるだけですが。
快活な槍が意外と重い男だったら素敵だなって。
FGOから始めたにわかがふわっとした解釈で書きました。ふわっと雰囲気で読んでくれると嬉しいです。えろはないですが一瞬だけ自慰の話が出てきます。

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 「君の好きは羽のように軽いな」
 呆れたような、諦めたような顔であいつが言ったから、俺はきょとんとした顔を晒してしまった。

 いいじゃねぇか、羽。ふわふわして手触りが良い。羽のような愛をいっぱいいっぱい積み重ねて、羽毛布団みたいにしてお前を包んでやるよ。
 塵も積もれば山となる。羽だって集めりゃお前ひとりを包み込むくらいわけないさね。そうしてお前は柔らかい羽の中で毎晩眠るんだ。ふわふわの羽に身も心も委ねて、安心しきって眠るお前はさぞ愛らしいだろうな。そういうところも好きだ。
 言ってなかったか?じゃあ今言う。普段のしかめっ面がほどけたときのお前は愛らしくて、好ましい。もちろん普段のお前だって好きだぜ?眉間に寄ったしわも、減らねぇ憎まれ口も愛おしくて仕方ねぇ。あ?そういうところが軽い、だァ?よかったじゃねぇか、また羽が増えたぜ。
 でもまだまだお前をまるっと覆えるには足りねぇな。ぺったんこの煎餅布団よりも体積のでけぇふかふかの布団のほうがいいに決まってる。
 …おいおい、本当に好きなら言葉に出せるはずがない?馬鹿なこと言うな。だったらこの世界に居る夫婦やカップルはみーんな本当に好き合ってる者同士じゃないことになっちまう。気持ちは言葉にしなきゃ伝わらねぇ。当然だろ?俺たちは超能力者じゃないんだから。
 ……友情や親愛を履き違えている、と来たか。まぁ好意が伝わってるだけ及第点ってところかね。
 じゃあこの際白状するがな、いいか、よく聞いておけよ。昨日お前で抜いた。昨日だけじゃない、ここのところ最近ずっとさね。俺の右手をお前のそれに見立てて、まぶたの裏にお前の痴態を描いてるんだ。妄想だがな。引いたか?引いただろ、俺も初めてお前で抜いたときは割と引いた。気持ち良く出しちまった俺自身に。
 でもな、そういうことなんだよ。友情や親愛の対象で抜けるか普通?無理だよな。だから俺のこの好きっつー気持ちはそういう類のものじゃねぇんだわ。お前に俺の欲を触ってもらいたいし、俺もお前の欲に触りたい。ふたりの境目が分かんなくなっちまうくらいぐずぐずに蕩けてしまいたい。お前の身体のすべてを丁寧に撫で上げて、口に含んで、舌の上で溶かして、飲み込んでしまいたい。
 ああ、でもそしたらお前がなくなっちまうな、悪い、今のやっぱナシ。お前とひとつになるのはいいが、お前が居なくなるのは困るからな。分かるか?俺はお前のことをそういう目で見てるんだ。
 なに?性欲を持て余しているだけ?現実逃避が上手だなお前さんは。いいぜ、とことん付き合ってやる。お前の逃げ場がなくなるまでな。あのな、ただ欲求不満が高じただけなのに男で抜くと思うか?お前俺の女関係の諸々知ってるだろ?そう、そんな俺が夜な夜なひとり寂しくマスターベーションだ。なぜか。
 女じゃ満足できねぇって分かってるからだ。お前には分かるか?分かってくれよ、頼むから。そのためにこんな話を延々喋ってんだ。分からねぇって顔だな。自分のことになると本当に鈍感だなお前は。そんなところも好きだ。好きだから、教えてやる。
 女の柔肌よりも、お前に触れたいんだよ、俺は。お前にしか触れたくない。俺が好きなのはお前だけだから。何度だって言う。お前が好きだ。好きがダメなら愛してるって言えばいいのか?
 同じこと?ああ、よく分かったな。ようやく分かってくれたな。いい子だ。そうだ、愛だ。これは愛に他ならない。この愛でお前を包んで、囲って、満たしたい。最初からそう言ってるだろ?言ってなかったか?まぁいいや。今言った。俺はお前を愛しているんだ。
 信じられねぇって顔してるな。疑り深いお前も好きだが、これを信じてもらえないのはちと困るな。どうすりゃお前に信じてもらえるんだろうな。誓いでも立てるか?いらない?そんな血相変えて拒否るこたねぇだろ、さすがの俺でも傷つくぜ?俺にとって誓いは大切なことだろう、って?そりゃそうさ。でなけりゃ意味がねぇだろうが。そんな大切なものを軽々しく扱うな、って、お前、お前なぁ。
 …………………………いや、いい。お前はそういう奴さね。そういう奴だって分かった上で惚れたんだ。誓いを立てるのはナシにしてやる。しかしそうなるとお手上げだな。自分の一番大事なものを捧げるって、信じてもらうのに有効な手だろ?それを封じられちまうってなるとなぁ。
 …あ?ああ、一番大事なもの、確かにそう言った。お前が最初に言ったんじゃねぇか、誓いは大切なものだろうって。『なんで私なんぞにそんなものを捧げようとするんだ』って、うわ、まじ?お前、まじ?まだ伝わってなかったのか?俺がお前のこと好きだからに決まってるだろ?俺、徹頭徹尾その話しかしてなかったよな?
 お前が好きなんだよ。誓いという、俺にとって一番大事なものを捧げてもいいくらいに。
 はは、顔真っ赤。ようやく通じたか?俺の気持ちが。…んん?同情?誰が。俺が、お前に?不思議なことを言うんだな。愛と同情は別モンだぜ?似てはいるがな。しかし俺の愛を同情と履き違えられるのは解せん。どうして俺がお前に同情する必要がある?
 『私が君のことを好きだから、同情で私に合わせてくれようとしたのだろう』?
 え、待て待て待て、お前俺のこと好きなのか?あーあー、そんな赤い顔で睨んだって可愛いだけだぜ?好き?そうかそうか。てことはなんだ、俺たち両想いじゃねぇか!キスしていいか?駄目?まぁこれから先いくらでもできるもんな。焦る必要はないわな。
 んん?俺の好きとお前の好きは違う?そりゃあそうさ。まったく同じ気持ちの人間なんていてたまるか。クローンじゃねぇんだから。重要なのは違う者同士がどうやったら一緒に居れるか考えることだ。なぁ俺はお前と一緒に居たい。少しでも長くお前と共に在りたい。お前はどうだ?
 同情で一緒に居られても嬉しくない?オーケーオーケー、俺が悪かった。焦りすぎたな。焦る必要なんかないって言ったばっかなのにな。まずはそこの誤解を解くところから始めさせてくれ。
 いいか?俺はお前に同情したことなんざ一度もない。俺がお前のこと好きっつーのも今知った。だから今俺はハチャメチャに舞い上がってる。だって好きな相手と両想いだったんだぜ?これにはしゃがずに何にはしゃげっつーんだ。今ここでお前をだき抱えて走り回りたいのを必死に我慢してる。この我慢続けたほうがいいか?そうか。がんばる。できる限りな。
 話を戻すが、そういうわけで、俺がお前のことを好きなのは同情でもなんでもないってことは分かってもらえたか?よかった。誤解が解けたようで何よりだ。これで俺たち晴れてめでたく恋人同士だな。
 なんだよ、その腑に落ちないような顔は。言いたいことがあるならはっきり言え。
 …俺の言葉は軽い?さっきも聞いたな、それ。ああ、軽いだろ?羽のように。当たり前だ。そう聞こえるように言ってんだから。軽い言葉なら、軽い気持ちで受け取れるだろ?そうして俺からの言葉を受け取り続けて、俺の言葉で、俺の愛で、お前を全部埋め尽くしてやれたらなって、ずっと思ってたから。薄めて伸ばして軽くした俺の愛を少しずつお前に与えていけば、俺だけのお前になってくれるんじゃねぇかなって。
 お前は好意を受け取るのが下手くそだから。重いもんは渡せねぇから。だから俺は、俺の気持ちを、俺の愛を、軽く見えるように加工したのさ。お前が受け取りやすいように。お前を追い詰めてしまわないように。
 それが裏目に出て、お前の不信感を育てちまったってのは、何ともかっこつかねぇ話だけどよ。いい加減分かってくれたか?まだ分からないか?
 俺は、そんな風に薄く希釈してからじゃないと渡せないくらいにデカくて重たい感情をお前に抱いてんだ。
 優しくて柔らかい世界でお前を甘やかしたい。どろどろに溶かして身も蓋もなく喘がせたい。俺の愛を当たり前みたいな顔で享受してほしい。俺の愛がある世界を当たり前だと思ってほしい。俺がいない世界なんて想像すらできないくらいになってほしい。
 こんな気持ちをどうしてそのままお前に渡せる?だから軽い言葉に乗せようとしたんだ。お前を怯えさせないように。お前が逃げ出しちまわないように。
 でももうそんなまどろっこしい真似はやめる。お前は俺を好きだと言った。俺もお前が好きだと言った。なのにお前は俺の言葉を信用しやがらねぇ。だったらもう隠す必要はねぇ。俺のこの膨らみつづける感情を、隠す必要はもうないんだ。
 覚悟しろ。享受しろ。認知しろ。その目でしっかり確かめろ。羽のように軽い俺の言葉が、どれほど重たい感情から生まれたものだったのか。
 
 
 
 
 

Comments

  • ツキ影
    May 2, 2019
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