社会科学論文の26%、データ再分析で結論変わる 国際研究で検証
科学研究の透明性向上を目指す米国の非営利団体は1日、社会学や経済学などの研究論文のデータを再分析すると26%で結論が変わったと発表した。科学の基礎になる研究の再現性に関わる結果だ。成果をまとめた8本の論文を英科学誌「ネイチャー」の特集号などに掲載した。
研究グループは2009〜18年に社会学や経済学、犯罪学などの学術誌に掲載された計3900本の論文を精査した。新たに公表した1本目の論文では、143本の論文のデータを解析した。すると105本(74%)で元の論文とおおむね同じ結論が出た。著者がデータの分析に使ったプログラミングコードを添えた論文の場合は、同じ結論が出る割合が9割と高かった。
2本目の論文では、過去に学術誌に論文として掲載された100件の研究に関するデータを、専門性が近い研究者らが調べた。元の論文が導いた分析の結論を再現できるか検証したところ、同じ結論に達したのは74%で、2%は逆の結果になった。
3本目の論文では、調査対象の164本の論文の発表後に得られた新しい実験結果などのデータを分析した。すると元の論文と同じ結論を得たのは81本(49%)にとどまった。
一連の研究に取り組む米非営利団体「センター・フォー・オープンサイエンス(COS)」で研究員を務めるアンドリュー・タイラー氏は「科学の最前線では再現できない成果が発表されることがある。研究の主張を検証することが重要だ」と強調する。
研究に参加した日本女子大学の石井辰典准教授は「査読を経て学術誌に掲載された論文でも、誤りのない確定的な知見として捉えるべきではない。複数の研究結果を統合的に検討することが有効だ」と指摘する。
石井准教授は「社会科学や行動科学の対象である人の心や社会は複雑で、文脈や状況によって変化する」とも話す。物理学や化学、生物学と比べて測定のばらつきやノイズの影響を受けやすいという。
一般的に研究論文は実験や分析で得られたデータに基づいて新たな発見をしたと主張する。先行する研究と結論が同じだと論文を書きにくいため、研究者は実験や観測などで新たなデータを得たり、解析の方法を工夫したりする。その結果、時に結論を再現しにくい論文が出る。こうした論文が増えれば、研究の成果を社会で生かしにくくなる。