light
The Works "風邪引きカルマとクラスメイト" includes tags such as "暗殺教室", "赤羽業" and more.
風邪引きカルマとクラスメイト/Novel by ロア

風邪引きカルマとクラスメイト

9,550 character(s)19 mins

暗殺教室分野では初めましてです。
冬!ということで早速風邪を引いてしまったところからネタが生まれ、ほとんど勢いで書いてしまいました。
クラスメイト、とありますが、もちろん出てこないクラスメイトもいます。うた担と修学旅行4班+αって感じです。
暗殺教室キャラではカルマ君が一番好きです!これからも気が向けば投稿したいと思ってます。
どうぞよろしくお願いします。2016/8/17追記*気がついたら100超えのブクマがされていて感謝でしかないです…!本当にありがとうございます‼︎あと、少し訂正しましたm(_ _)m
新作をゆっくりゆっくり製作中です笑また見ていただけると幸いです。

1
white
horizontal

【風邪ひきカルマとクラスメイト】

「えええええ⁉︎」
一週間の始まりの日。E組から朝一番に聞こえたこの驚きの声に、烏丸とイリーナは教員室で耳を塞いだ。
教壇に立つ担任の殺せんせーは、汗を垂らしながら、それでも予想はしていたという顔をして続きを言った。
「ですので、今日一日カルマ君はお休みです。最近寒くなってきましたし、乾燥もしてきました。みなさんも、風邪には十分気をつけてください」
はーい、という声がチラホラ聞こえるが、ほとんどが空返事だった。
みんなの思っていることはただ一つ。

“カルマって風邪引くんだ”

何をさせても卒なくこなす器用さ、物事を人とは少し違う視点から見る頭の良さを持ち、もちろん成績も暗殺における実技も優秀な彼には欠点など一つもないと思っていた人が大半であっただろう。
それがどうしたことか、今年E組で初めての体調不良での欠席者が彼だったのだ。
風邪を引くことは他の人にもあった。だが日頃の訓練のおかげもあり、みな体力が向上。休まなければならない程の風邪を引く者は誰もいなかった。
1時間目は英語です、イリーナ先生が来るまで座って待っていて下さい。と言い残し、殺せんせーは教室から出て行った。
殺せんせーが出て行くのをみな無言で見送り、チャイムでほぼ同時にハッとした。
クラス委員の磯貝が指示を出す。
「みんな驚くのは分かるけど、とにかく学校では勉強や暗殺に集中しろ。早く授業の用意しないとビッチ先生に怒られるぞ」
委員長の言葉にみな従い、ようやくクラスメイト達が動き出した。
「ね、渚」
横の席の茅野が、渚を呼ぶ。
「心配だね、カルマ君。土日の間に何かあったのかな?」
「うん…金曜までは普通に元気…だったと思うんだけど、どうしちゃったんだろう」
「所詮アイツも俺たちと同じただの人間だろ?そういうこともあるさ!」
後ろから声をかける杉野。
「てか、普通にサボりなんじゃない?月曜ダルいわー。今日の授業とか受けなくても俺分かるし休もー。みたいな?」
中村が横から笑いながら話しかける。
「いや…カルマ君、この前の期末以来、勉強に対する姿勢が変わったと思うんだ」
「そう?」
「うん。前より、本気の目をしていると僕は思うよ。それに暗殺するチャンスをわざわざ自分から減らすかな?」
「う…確かにカルマなら家にいるよりも暗殺の方が面白いとか言いそう…」
「だから、やっぱりカルマ君は風邪…なんだとおもうよ。意外だけど」
カルマのサボり疑惑も無くなったところで、始業のベルが、今日も鳴る。

「…じゃあこの文章を…誰に読んでもらおうかしら?って…」
ビッチ先生の表情が一瞬変わったのを、みんなは見逃さなかった。
「どうしたのー?ビッチ先生」
最前列の倉橋が聞く。
「教壇に立った時からなんだか違和感があると思ったのよ。色が無いわって」
「色?」
「いつも一番後ろで暑っ苦しい色を放ってるヤツよ。夏の暑い日なんて、何度殺してやろうと思ったことか」
暑苦しい色…つまり赤色のこと。このクラスで赤色と言えば…
「あぁ、カルマか。確かに夏は視界にも入れたくねーわ」
「その点渚は名前も色も涼しげで、夏に欠かせないクールアイテムよね」
「中村さん!僕はモノじゃないよ⁉︎」
「茅野っちは緑だから、一年中見やすいよね!目にいい色だし!」
「はは…そうかな」
クラスがザワつきだす。
イリーナは、しまったという顔をしてパンパン、と手を叩く。
「はいはい、アンタ達、静かになさい!じゃあこの例文を…有希子、読んで」

英語を終えると、次は数学。
「やっべー!今日当てられてた問題、カルマに聞こうと思ってたんだ!どーしよー!」
またもや、ここにはいない人間の名前が出る。
「岡島、どの問題当たってた?」
「磯貝ぃぃ…!頼む!カルマの代わりに問5を解いてくれぇぇ!」
「問5かよ…悪い岡島。俺も途中までしかできてないわ」
「磯貝!?」
「俺、問3なら完璧なんだけどなぁ」
「前原ぁぁ!」
「てかこの問5、あのK高校の入試過去問じゃない。こんなの解けなくても、殺せんせーも仕方ないって思ってくれるよ」
「片岡…。そうだよな。解けたところまで黒板に書くわ…」
トボトボと黒板に向かう岡島。
数学前の休み時間恒例、カルマ先生の数学解説を当てにしている人はかなり多い。
毎時間殺せんせーは、次の数学の授業の時に解説する問題を誰かに当てる。
解説が必要な問題なだけあって、それなりに難しい問題が多いため、家で1人で解くのは至難の業だったりする。
そこでカルマの出番だ。数学が得意なカルマには、休み時間の間質問に来る人の足が絶えない。最初は面倒くさそうに答えていたカルマも、最近では割と親切に教えてくれるようになってきた。
が、今日は本人不在のため、当てにしていた人たちはみなガッカリしていた。
「いなくなって初めて分かる、大切さね…」
「お、おい狭間!死んだみたいな言い方やめろよな!?」
「ふふっ今頃本人は家で死にかけてたりして…」
「なわけねーだろ?中学生の息子が酷い風邪引いてるってのに家に一人にさせておく親がどこにいるってんだよ」
村松の言葉に、渚はハッとする。
「多分、一人だ」
「渚?」
「カルマ君の両親、あまり家にいないって前聞いたことがあるんだ。…あ!そう言えば昨日から両親は3泊4日でインドに行ってるって聞いた。てことは…」
「えぇ!?学校来れない程酷い風邪なのに家で1人なの!?」
「た、多分…」
「それ本当か、渚」
磯貝と片岡が話に加わる。
「う、うん…」
「それは心配ね…」
「そ、そんなの可哀想です!」
側で話していた神崎と奥田も話に加わる。
「じゃあさ、今日の放課後、みんなで見舞いに行かね?」
渚の後ろから話を聞いていた杉野が提案する。
「いいねぇ!カルマの家とかちょっと興味あるし!」
中村も話に加わる。
「中村さん、見に行くのは家じゃなくてカルマ君だよ!」
「そうねぇ、渚、カルマの家、分かる?」
「う、うん。前に何度か遊びに行ったことがあるから」
「では、みなさんで行きましょう!」
「おう、何か美味いもん作ってやろうぜ!」
「おかゆとかがいいんじゃないかしら?」
「いいねいいね!あとは、プリンとか!」
「それ、茅野が食いたいだけだろ」
はははは、と笑い声が響く中、チャイムと共に殺せんせーが教室に入ってきた。
「じゃ、また放課後にな」
磯貝の言葉で、その場は解散となった。

1人欠けたE組。
それはもちろん、暗殺にも影響した。
カルマという冷静沈着且つ頭脳明晰な司令塔がいない分、片岡や磯貝に負担がかかるだけでなく、いつもよりも作戦の幅が狭まった。
彼に秘められたイタズラ心は暗殺にとても役立つ。
そして彼は高い戦闘スキルも併せ持つ。
頼れる者が1人減ったことで、みな少し不安げだった。
結果、いつもよりも暗殺に活気がなかったように見えた。

そんなこんなで、ようやく6時間目の終業のベルが鳴る。
「それではみなさん、今日の授業はここまでです。えー、先生はちょっと、カルマ君のところに今日のプリントやらを届けに行きますので…」
「待って下さい、殺せんせー」
「何ですか、磯貝君」
「それ、俺たちが持って行きます。丁度、見舞いに行くつもりだったので」
「おぉ、そうでしたか。それではプリントはお見舞いに行く皆さんに任せます。それでは私は遠慮なく、イタリアの本場スイーツでも食べに行きますかねぇ。それではみなさん、さようなら」
バビュンっとマッハ20で飛び去る殺せんせーにはもう慣れた。磯貝は受け取ったプリントを手に、招集をかける。
「そんじゃ、カルマの見舞いに行くか!」
「おお!」

集まったのは、渚、茅野、磯貝、前原、片岡、中村、奥田、神崎、杉野の9人だった。
「結構多いね」
「カルマのやつも好かれてんなぁ」
「カルマ君には日頃からお世話になっていますから!」
「おかげで今日はみんな大変だったけどねぇ」
「渚、まだ着かない?」
「そこの角を曲がれば…あった。あれだよ、みんな」
みんなが渚が指を差す方向を見る。
それは、隣り合う家々とは全く異なり、いやでも周りの人の目を引くものだった。
「…なんか、思ったより個性的な家ね」
「ここだけ異国情緒が漂っているわ…」
「カルマ君のご両親、インドかぶれなんだ。インテリアもほとんどがインドで買ったものらしいよ」
「何という徹底っぷり…!」
「息子にカルマなんて名前つける親が建てた家だもの。そりゃ普通なわけないわね」
「失礼だろ中村。さ、呼び鈴を鳴らそう」
ピンポーン
………
「あれ…?」
「もう一回鳴らしてみたら?」
ピンポーン
………
「寝ているのかもしれないわね」
「あれ、でも開いてるぜ?」
前原がドアノブに手をかけて捻ると、ドアは簡単に開いた。
「おい前原!やめろ!」
「そうよ、前原君、人様のお家を覗くだなんて!」
「えー!でもこんな不用心にしとく方が悪くねー?」
「でもじゃないの!早く閉め…」
「うるっさいなぁ、誰だよ全く…」
二階から聞こえるドアの開閉音。階段を降りる足音。そこから現れたのは、
「カルマ!」
「え⁉︎ちょ、何でいんの⁉︎」
驚いた拍子に足を滑らせて階段から落ちかけるカルマ。普段ならそんな不恰好なことは絶対にしない。相当フラフラなのだろう。
「カルマ!見舞いに来たぜ!」
「杉野…てか大人数すぎじゃね?」
「み、みんな心配してたんです!」
「奥田さんまで…」
「そうそう!じゃ、おっ邪魔しまーす!」
「中村!何勝手に入ってきて…」
「だってアンタどう見てもヤバイもの。家に誰もいないんでしょ?何か美味しいもん作ってやろうって委員長さんが!」
磯貝が手に持っているビニール袋を持ち上げて、カルマに見せる。
「何で知って…」
「へへ」
「渚君か!」
「そう言うわけでカルマ、悪いけど少し邪魔させてくれ。今日貰ったプリントも渡したいし、1人にしてまた階段で滑ったらヤバイからな」
「階段のはお前らのせいだよ…たく。いいけど、リビングにいてよね」
カルマのぶっきらぼうな言葉には、少しだけ嬉しさが感じられた。

「わ〜!広〜い!」
茅野が、リビングに響く大声を出す。
「っ…!お願いだから大きな声出さないで茅野ちゃん…頭に響くから…」
「あっ!ごっめーん!」
小声で謝る茅野。
「ほうほう、中はもーっと変なデザインのものがいっぱいあるねぇ!」
「中村、人の話聞いてた?」
「中村さん、カルマ君が可哀想じゃないですか。頭に影響が出て、また"この前の期末みたいに"大失敗を犯したらどうするんですか」
「ゴフッ」
「奥田さん、それ禁句」
何が禁句なのか分からず、ひたすらカルマに謝り続ける奥田の甲高い声は、結局のところカルマの頭にガンガン響いていた。
「…て、適当に座っていいから。てか静かに座ってて、頼むから。何か飲みたかったら冷蔵庫から持ってけばいいよ」
「私たちが勝手に来たんだから、そういうわけにはいかないわ。カルマこそ、早く座って楽にしてて」
「ちょ、わ、片岡!力強っ…」
頭を押さえていたカルマは、片岡に腕を引っ張られて床に打ち付けられてしまった。
「ご、ごめんカルマ!まさか倒れるなんて思わなくて…」
「いくら片岡さんが強く引っ張ったからって、倒れるなんて…カルマ君、熱は測ったの⁉︎」
「いや…測らなくても熱あるの速攻で分かったし…せんせーに電話してからずっと寝てたから…」
頭を抑えて、いてて、と言いながら起き上がるカルマ。
「ダメよ、ちゃんと測らないと」
「神崎さんの言う通りだ。カルマ、体温計は?」
「あー…確か…そこの引き出しに…」
カルマの指示がいつもより曖昧だ。
「分かった、探しとくからお前はソファで寝てろ。前原、杉野、カルマを支えてやれ」
「分かった」
「りょーかい!」

「さ、39度8分…」
「おいおいっ!お前マジかよ!」
「ずっと寝てたって言ってましたよね!」
「っはは、通りで世界が回ってると思った」
「笑い事じゃないよ!病院行こう!」
「落ち着きなって渚君。へーきへーき。家で1人の時に風邪引くのなんて、ガキの頃によくあったから慣れてんだ」
「薬は?」
「あるけど…」
さっきの引き出しの一つ下、と指を差すカルマ。来た時よりもダルそうに見えるのは気のせいではないだろう。
「薬飲むなら、何か食わないとな!カルマ、お前、食欲は?」
「えー…特にない…」
「今日は何か食べた?」
「いや…水と薬飲んだくらいだわ」
「ダメじゃないですかカルマ君!ちゃんと栄養を摂らないと!」
「奥田さんの言う通りだよ!磯貝君、買ってきた食材で何か作ろう!」
「おう、そうだな!カルマはそこで寝てろ。俺たちが何か作って来てやっから」
「お台所、お借りするわね」
ヒラヒラと手を振るカルマ。もう返事をする元気もない程グッタリとしている。
「とりあえず、カルマを寝かせておこう。俺たちが勝手に来て騒いだせいで熱が上がったのかもしれない」
「余計なことしちまったかな」
「けど、あのまま1人でいても危なかったわ」
「ね、早くお料理してあげよ!」
カルマに自分達の上着を被せ、リビングと繋がっているキッチンに向かった。

「さて、指示された通りに具材買ったけど…磯貝、何を作るつもりなんだ?」
「さっき神崎さんがおかゆって言っていたのを聞いておかゆにしようと思っていたんだけど、もっと栄養のあるやつにしてやろうと思って…だから、雑炊を作ろうと思う」
「おぉ!さんせー!」
「いいですね!」
「とりあえずお米を炊かなきゃだな。俺が米を研ぐから、渚は1人用の土鍋がないか探してみてくれ。前原と杉野は出汁作り、女子達は具材を洗ったり切ったりして、下準備を頼む。みんなで手分けして、カルマが驚くくらい美味いの作るぞ!」
クラス委員長の頼もしい指示が聞こえる中、カルマは夢の中へと徐々に引き込まれていった。

金曜日の放課後。家に帰ったカルマは自室へ直行し、即勉強を始めた。
期末テストまで時間が無い。
脳裏に浮かぶのは自分が未だ嘗て一度も勝てていないアイツだけ。
生徒会長だか理事長の息子だか知らないけれど、絶対に打ち負かしてやる。
カルマはその執念だけを頼りにひたすら勉強していた。
どれくらい経ったろうか。
ふと、時計を見た時だった。
気がついたら朝だった。
無論、寝落ちしてしまったわけではない。つまり、家に帰ってからずっと勉強し続けていたのだ。
カルマは疲労感よりも達成感を感じていた。
そして徹夜明け特有の倦怠感を引きずりながらも更に勉強を続けた。
さすがに食事抜きは辛かったので、台所から適当にスナック菓子やら煮オレやらを持ってきて、飲み食いしながら勉強した。

その結果がコレだ。
睡眠不足による肉体・精神の疲労、栄養の偏り…
土曜日の夕方頃からの不調は夜中になって更に悪化。そしてついに日曜の昼に爆発し、それからずっと立てない程に意識が朦朧としていた。
だが、慢心から失敗が生まれることをカルマはよく知っていた。ここで手を抜いたら、最後の最後まで浅野に勝てない。そんなのは自分のプライドが許さなかった。もう2度と、あのタコやクラスメイトの前で無様な失態をさらしたくない。そんな気持ちから、カルマはどんなに辛くても勉強をやめなかった。
そして目が覚めたのが月曜の早朝。
どうやら気持ちに身体がついて行かなかったようだ。机に突っ伏して、眠ってしまったらしい。
しまった、という気持ちの後に、グラリと世界が歪む。
ぼーっとした意識の中、悔しいが学校を休まなければいけないという解答だけは導くことができた。
こんな酷い風邪、期末前のクラスに蔓延させるわけにはいかない。
何よりボロボロの自分をみんなに見られたくなかった。
そして、床を這うような姿勢でスマホを手に取り、やっとのことで担任の連絡先をタップした。
3コール程で繋がる。
「…あ"ー…ころ"せんせ"ぇー?」
久々に出した声はなかなか酷かった。
弱々しくも、喉の奥で別人が唸っているような声。
殺せんせーも流石に慌てた。
「ど、どどどどーしたんですかカルマ君!」
電話の向こうでタコがアタフタしている様子を想像したが、笑える程元気ではなかった。
「風邪だよ風邪ー。ね"ーせんせー、今日俺学校休む"わ"ー」
言い終わった瞬間、今度は咳が出てきた。
喉の奥で血の味を感じる。
「風邪ですか…。分かりました。今日一日、ゆっくり休んでください。くれぐれも無理して勉強したりしないように」
どこまで見透かされてんだ。
風邪の原因を突かれ、ギクッとする。
「分か"ってる"よ。じゃーね、せ"んせー」
電話を切って一息つくと、また咳が出てきた。喉の渇きを覚え、なんとか壁を伝って台所へ移動する。
冷蔵庫から水を取り出し一気飲み。流石に大好きな煮オレでも、飲めるほどの余裕は無かった。
薬を棚から取り出す。喉が一番酷いので、それ用の薬を適当に取り出して水で流し込み、そして自室に戻って寝た。
そのおかげで、起きた後声の方はかなり良くなったようだ。
あんな酷い声をクラスメイトに聞かせるなんて死んでも嫌だと思っていたカルマは本当に助かった。

女子達の甲高い声で目が覚めた。
台所の方で何やら騒いでいるようだ。
「できたー!」
「美味しそうです!」
台所から漂う出汁のいい匂いが食欲を唆る。
先ほどは食欲が無いなんて言ったが、日曜からろくに何も食べていなかったわけで、カルマはいつの間にか腹が空いていたようだ。
「おいカルマ!起きてるかー?」
「うんー」
何とか1人で起き上がる。
「よかった、寝たら少し元気になった?」
「まぁねー。それよりめっちゃいい匂いすんだけど、それ何ー?」
「ふっふっふ、驚いて熱上げんなよー?」
中村の言葉を合図に、赤羽家のミトン(熱いものを掴む時用の手袋)をはめた神崎が蓋を開ける。
白い蒸気がぶわっと溢れ出る。
湯気が薄れると、野菜、肉、卵などが一斉に現れた。
「…すげ。鍋?」
「ただの鍋じゃあないのよ!さ、オタマで掬ってみ?」
中村にオタマを渡され、底からグッと掬い上げる。
「米?てことは雑炊だね」
「あったりー!」
「うわ、すげー美味そう。これ、マジでお前らが作ったの?」
「あったり前じゃんよ!」
「食後にはプリンもあるからね!今冷蔵庫で冷やしてるの!」
「プリンならツルンと喉に入っていいかと思って。食べられそうかしら?」
「食欲無いって聞いてたのに、何だかんだ作り過ぎちまってよ」
「どうかな、カルマ君」
雑炊にプリンに…それらを作ってくれたみんなの笑顔に、カルマは初めての感覚を覚えた。
小さい頃から熱があろうと怪我をしていようと、両親は家にいないことが多かった。そんな孤独に慣れてしまっていた彼は、こんなにも温かい突然の出来事に頭がついていかなかったのだ。
だから彼はこう言った。みんなにこの気持ちを悟られないよう、精一杯の…
「…食うに決まってんじゃん、こんなの」
笑顔で。

「…ごっそさん」
「何だかんだ完食かよカルマ」
「せっかく作ってもらったんだし、残すの勿体無いからね」
「素直じゃないねぇ、食べる時すごく嬉しそうな顔してたくせに」
「あは、そう見えた?」
「えぇ!あんなに美味しそうに食べてくれたんですもの!作り甲斐がありましたよ!」
「…奥田さんにも見抜かれるなんて、俺もまだまだだねぇ」
「分からねーわけねーだろ。あんなに無言でがっつくカルマ見たことねーもん」
「…そんなに?」
「うん」
「…仕方ないでしょー。腹減ってたんだし…」
「みんなの温かさに感動の涙とかねーのかよ?」
「はっ、俺の涙を拝むには100億年早いよ前原」
ぐっすり寝たことと、たくさん食べたこと、あと人の温かさにたくさん触れたこともあってか、カルマの体調は随分よくなったようだ。
「さてと。じゃあ片付け終わったら俺らはそろそろお暇しようかな」
「じゃあ私食器片付けてくるね。神崎さん、茅野さん、手伝ってくれる?」
「はーい!」
「女子ばかりじゃ悪いよ、僕達も…」
「渚達はカルマを部屋まで連れてってあげて。また階段でこけたら大変だもの」
「だからさっきのは…」
ヒュオッという風を切る音と共に窓の向こうに突然現れた黄色いタコ…もとい担任に、みな驚いた。
「殺せんせー!」
「どうしてここに?」
窓からフレームアウトし、ドアが開けられると思った瞬間、
ピンポーン
「あ、意外と律儀なんだ」
「こんな時にそこ拘るか普通…」
「開いてるよせんせー」
ガチャッと開けられるドア。
「ヌルフフフ…いやぁ、家庭訪問ですから、担任としてきっちりとしておこうかと…」
「「「生徒しかいないのに!」」」
「おぉ、カルマ君、調子はどうですか?」
「んー…まぁまぁ良くなってきたと思うよ?飯も食ったばかりだし」
「ふむふむ、何やらいい残り香が漂ってますねぇ。もしや、みなさんが?」
「はい、まぁ」
「素晴らしい!クラスメイトのために手料理まで!先生が来る必要はなかったようですね」
「どういうこと?」
「言ったでしょう、渚君。先生、イタリアまで行くと」
殺せんせーが触手を眼前に出すと、そこには沢山の食べ物の入った袋がぶら下がっていた。
「わぁ!」
「イタリアンだけじゃ物足りないかと思って、フランス、中国、インドにオーストラリア、世界中の身体にいい食べ物を集めて来ちゃいました」
「それもうただの世界旅行じゃない?」
「ヌルフフフ…野菜、肉、魚…ありとあらゆる分野の食材を集めて来ましたからね。何でも作れますよ!と言いたかったのですが、一足遅かったようです」
「いいよいいよ。日持ちするやつで今度何か作れば。ついでにみんな食べに来いよ。こんだけたくさんあったら俺一人じゃ消費しきれないし」
「おお!カルマの手料理!」
「にゅや!そ、その時は先生も是非…!」
「いいけど、食材と間違えて殺して食っちゃうかも。俺、タコのカルパッチョとか食いたいんだよねー」
「お、いつものカルマだ」
「ヌルフフフ…殺れるものなら殺ってみなさい!カルマ君!」
そんなこんなで、E組クラスメイト+担任によるカルマのお見舞いは終わった。
その後のカルマの手料理には、聞いたこともないようなスパイスが散りばめられ、(特に殺せんせーのが)めちゃくちゃ辛かったとか。


end








Comments

  • りんご飴
    March 28, 2025
  • m0w0m
    June 4, 2022
  • リーフ♪
    September 18, 2021
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
Popular illust tags
Popular novel tags