生活保護なら体外受精が無料 外国籍の若者が最初から希望してくる現実 医師「やり切れない理不尽さ」
問題の核心は制度の構造 「正直者がバカを見る」政治の責任も
田中院長が強調するのは、外国人や生活保護受給者への批判ではない。問題の核心は、制度設計と、それを守ろうとする構造にあると主張する。 「生活保護受給者の医療費の窓口負担ゼロを廃止しようとすれば、最も強く抵抗するのは日本医師会です。生活保護受給者は自己負担がないため、開業医にとっては過剰な検査や投薬をしてもクレームになりにくい。ある意味、都合の良い患者さんになっています」 田中院長が日々、現場で感じているのは、とてつもない違和感だ。一般患者が不妊治療の過程の中でなんとか医療費を捻出しようとする姿を何度も目撃してきた。切羽詰まる状況が多々ある中で、いくら努力しても乗り越えられず、治療を断念する夫婦も多い。“生活保護であれば、すぐに体外受精を選択できる”という構図には、強い疑問を抱いているという。 「やり切れない理不尽さ」の真意について改めて聞いた。 田中院長は、「『正直者がバカを見る』ことに対する理不尽、その制度を自分たちの利益のために死守しようとする日本医師会の理不尽、そして、ちょっと考えれば、このようなことが必ず起こると想定できたはずなのに、保険適用化ありきで、穴だらけの制度設計に決めてしまった政治の理不尽」と説明。制度設計や政策判断の在り方について、国の責任にも言及した。 一部の外国籍の生活保護受給者が、最初から体外受精を受けるケースが相次いでいることについて、役所に対処法を問い合わせたこともある。担当者からは「断ってください」と言われた。しかし、「『市役所から、お断りするように言われましたので』と伝えて良いでしょうか」と重ねて聞くと、返答は濁った。 「単純に外国人が悪いのではありません。生活保護者の医療費をどうするのか、誰も真剣に議論しようとしないことに対して、やり切れなさを感じています」。その言葉の端々に、現場で積み重ねてきた葛藤がにじんだ。
制度の余波…43歳以上は費用対効果が見込めないのか?
一方で、制度には別のゆがみも感じている。体外受精への保険適用は、43歳未満であることが年齢の条件だが、そのことが患者にある変化を起こしているというのだ。 「43歳以上の方は激減しました。みんな諦めて行きました。私は、これも理不尽だと思います。みんな、サラリーマンは給料から天引きされて保険料を支払っているのです。にもかかわらず、国民皆保険のはずの、保険診療を受けられないなんて、あり得ないと思います」 厚労省は「妊娠率が低く、費用対効果が見込めない」と説明するが、田中院長はこう反論する。 「終末期医療で、意識不明の方が、人工呼吸器に何年もつながれるような治療がなぜ保険診療になるのでしょうか? この矛盾をどう説明するのでしょうか」 改善策として田中院長が提唱するのは、43歳以上の患者や制限を越えた多数回治療への「保険点数の減算」だ。点数を下げることで医療機関が無理に治療を勧めなくなり、医療費の削減にもつながるという。 生活保護受給者の医療費については、窓口負担を求めることは現実的ではないとしつつ、こう提案する。 「アメリカのチャリティーホスピタルのようなスタイルが解決策なのではないかと思います。生活保護の方は、自治体が指定した公的病院に集約して、そこで全て完結させるのです。そうすれば、税金を使った生活保護ビジネスは撲滅できます」 不妊治療の保険適用から丸4年。医療現場の最前線に立つ医師の言葉は、重く響いている。
ENCOUNT編集部/クロスメディアチーム