【FGO】立香と愉快な仲間たちの第五次聖杯戦争2
前作はたくさんのブクマありがとうございました。
今作も是非宜しくお願いします。
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「ここが…」
「旦那様のお屋敷…」
『いやマンションだけどね』
現在時刻は十時を少し回ったところであろうか、俺と清姫はあるマンションの一室のドアの前に立っていた。ちなみに何故ここが立香の家だとわかったのかというと、なんでも生徒手帳に記されてあったらしい。生徒手帳って便利。
入ってみればわかるが、一人暮らしをするには少々広めの部屋だ。他に家族のような同居人がいるのかと思った俺だが、靴箱を見ても靴は一人分しか無い。つまり、この世界では俺がここで一人暮らしをしている設定なのであろう。
取り敢えず目に入ったソファに腰掛ける。なんだかんだで今日は疲れた。一気に疲労感が襲ってくる。
俺が一息つくと、隣に清姫がちょこんと座る。可愛い。
「こっちに来てる他の奴らが心配だな…」
「そうですわね…。無事だといいのですが」
普通であれば、「私はマスターと二人きりで云々」と言っているであろう清姫だが、他の五人はいつもレイシフトの際一緒に戦っているメンバーだ。彼女たちの間にもしっかりとした絆があって安堵する。
まあ心配するくらいなら令呪を使って呼び出せばいいんじゃないかとは思うが、いくら回復するとはいえ今は令呪は三つ。できるだけ温存したいというのが本音であった。
何気なく右手の令呪を眺めていると、久しぶりに聞く後輩の声が部屋に響いた。
『それよりも先輩。さっきのことで一つ』
「どうしたの、マシュ」
ちなみに今までマシュが連絡してこなかったのは、こちらに他の六人が召喚され自分が召喚されなかったことに対して拗ねていたからだそうだ。可愛い。
『はい。先程、遠坂さんと言う方が衛宮さんと言う方に何かしてましたよね?』
「何か…?」
『あの赤い光と呪文のことです』
「ああ、あれね」
あの赤い光は何だったのだろうか。先程はその気持ちが強くなってしまい遠坂に見つかってしまった訳だが。
『あの赤い光の正体がわかりました』
「おお」
『あれは強大な魔力によって生じた光ですね』
「強大な魔力?」
『ええ。その証拠に、ほぼ死に体であった衛宮さんの体はみるみるうちに回復され、傷も完全に塞がっていました』
「じゃあ、衛宮は」
『はい。無事でしょう』
『いや~衛宮君にとって遠坂さんは正真正銘の命の恩人だね』
遠坂はあの後、恐らくだが衛宮をその場に放置したであろう。なぜなら衛宮は聖杯戦争に無関係の人間だ。そんな彼を遠坂が保護しても衛宮は混乱するだろうし、何の傷もない彼を病院に連れて行っても門前払いだ。
いや、待て。だとすると
「…やばくね?」
「どうかなさいましたか?旦那様」
清姫が目の前で首を傾げる。通信機の向こうからはロマンとマシュも同じように、俺の言葉に疑問を持つ雰囲気が感じられた。
そんな彼らに説明する。
「クー・フーリンはあそこで衛宮を刺した。それは間違いない」
『ああ、そうだな。即死ではないと言え、彼は致命傷を受けた』
「そこだ」
『え?』
クー・フーリンは確かに衛宮を刺した。だがその直後、彼は俺たちと相対し、誰か――恐らくマスターであろう――と話したような素振りを見せ、あの場から姿を消した。
そう、姿を消したのである。
「あいつは衛宮が死んだところを目撃していない」
『た、確かに!』
「つまり、クー・フーリンさんは」
『恐らく学校に戻るだろうね。彼の死体を看取りに』
「うーむ…」
別に衛宮が死んでしまったところでこっちに損は無いのだが、一応顔見知りではあるし、遠坂の時と事情は似ているが、俺たちはこの土地についてほぼ知らない。まあ早い話が彼に恩を売っておいてもいいのでは、という話だ。
そうなれば話は早い。あとは行動に移すのみ。
「清姫」
「はい」
「俺を担いでこのマンションの屋上に行ける?」
「ええ。お易いご用です」
そう言って清姫は俺をお姫様だっこする。もうこれはデフォなのであろうか。清姫は実に軽やかな動きでベランダに出て、上のベランダを伝い上へ上へと昇っていく。
やがて屋上へと立った清姫は、俺を優しく地に下ろす。普通こういうのは男女逆ではないかと思うがこんなことカルデアでは日常茶飯事なのである。大事なのは慣れなのだ慣れ。
清姫に立たせてもらった俺は、柵の近くに立ち、街を見渡す。
「旦那様、何を?」
「いや、ここからなんか見えないかと思って」
「そうなのですね。それで何か見えましたか?」
「……いや、何も見えない」
冷静に考えれば当たり前の話である。ただの人間がマンションの最上階に来れば地上の物で見える物などほぼほぼない。
「清姫は、どう?」
「私もだめみたいですわ…。こういう時に弓兵の方がいれば」
「う~ん、今いないし、もう令呪で…」
瞬間、妙に既視感のある魔力の放出を感じる。ハッと顔を上げる俺に清姫が声を荒げる。
「旦那様!十一時の方向で、莫大な魔力の放出です!」
清姫が指す方向に顔を向ける。あの禍々しい魔力の放出には見覚えがある。
「刺し穿つ死棘の槍……!」
だがその魔力の放出を感じられる場所は、間違いなく学校ではない。だが、そこに家に帰る途中である衛宮がいる可能性も十分感じられる。脳内情報には衛宮は徒歩で通学していると記されていることもその考えを助長させる。
「清姫!俺をダッシュであそこまで運んで!」
「わかりました!」
清姫は瞬時に俺をお姫様だっこし、器用に民家の屋根の上を走って行った。
……もうつっこまない。
目まぐるしく視界に映る景色が変わる。こうしてみるとやっぱり清姫って足が速いなぁと思う。敏捷Cというのは英霊たちと比べると平均よりちょっと速いくらいではあるが、俺みたいな普通の人間と比べるとやはり速い。
ちら、と清姫の顔を見ると、こちらの視線に気付いたのかニコ、と微笑みかけてくれる。惚れる。
俺が両手で顔を隠していると、清姫が急に止まる。
「旦那様、まだクー・フーリンさんが先程の場所にいるとすると、これ以上近づくとあちらにこちらの存在が露わになってしまいます。どうなされますか?」
「突っ込んじゃお。出たとこ勝負だ」
『相変わらず君は迷いがないよね』
「わかりました」
清姫は一際大きく跳躍し、薄暗い道の真ん中に立つ。その瞬間、自分たちの落下地点にいた者は大きく後ろに跳んだ。
左を見れば尻もちをついている少女、遠坂がいた。
「あなた…さっきの……なんで…?」
右を見れば先に続く道の左手には武家屋敷のような大きい門。その手前には先程まで遠坂の目の前にいた、剣を構える金髪の少女、アルトリアが立っていた。
双方とも訝しげな表情で俺たちを見つめる。まあいきなり上空から女子にお姫様だっこをされている男子が着地したらそうなるであろう。俺だってそうする。
状況を考えるに、恐らく遠坂は目の前にいるアルトリアに殺されかけていたのであろう。だが、それは困るというもの。先程から言っているが、彼女は俺たちの情報提供者に成り得る人物なのである。
「貴様、何者だ」
アルトリアが敵意を滲ませる言葉で問う。遠坂が一瞬怯んだ様子を見せるが、こちとら死地を幾度も通って来たマスターだ。そんな視線はもう慣れっこである。
「それに答える義務は、俺には無いかな」
「…そうか。隣にいるのはサーヴァント。………特に武器を持っている様子もないし、魔力もあまり感じられない。バーサーカーか。サーヴァントを連れて私の前に立つことが、どういう意味を孕んでいるかわからない訳ではなかろう」
言って、アルトリアは剣を構える。別にここで戦いを始めても構わないのだが、その間に遠坂に逃げられたら面倒だ。
「少し待って欲しい。こちらに戦う意思は無い」
「では、何用か」
「さっきまでここにクー・フーリンがいなかったか?」
やばい。そういえば聖杯戦争において、真名は隠されるべきであったはずだ。
「!?」
「それが、なんだというのか」
後方で未だに腰が抜けている遠坂からは、驚愕の感情が伝わる。そして目の前のアルトリアは案の定、更に敵意をつ読ませる。
アルトリアの問いにどう答えようか迷っていると、その時間をどう解釈したのか、アルトリアがこちらに一歩、踏み出す。
「やはり貴方達は少し怪しい…。ここで倒させていただきます…!」
「おっと、ストップストップ。こちらに戦う意思は…」
「ミツ…、ケタ…」
「きゃあ!?」
「何者!」
アルトリアと遠坂が声を荒げる。だが、その声はこちらには聞き覚えがあった。
「フラン!」
「ウゥ…」
バーサーカー、フランケンシュタインであった。彼女、フランは凛の後ろの影からゆっくりと現れた。ぱっと見幽霊に見えなくもない。遠坂が驚くのは無理のない話であった。
「フラン!そこにいる少女を取り敢えず守っといてくれ!」
「ウゥ!」
「他のサーヴァントと協力…!?同盟関係を結んでいるのか…?いや、しかし彼女も見たところバーサーカー。貴様!何者だ!」
「ここでそれを言って、何の意味が?」
つい癖で、挑発気味な言葉が零れ落ちてしまう。いや、悪い癖だとは重々承知なのだが、生まれつきな癖の故、一向の治る気配が無い。
そして、目の前の可憐な少女は、姿からは想像できないが、王である。つまり
「それは私に対する挑戦、と受け取ってもよいのだな」
こういう言葉はよく効いてしまう。
「やっべ。清姫。怒らせちゃった」
「大丈夫ですわよ。旦那様には私の許した方しか触れさせません…!」
アルトリアがこちらへ疾走する。それに備え、清姫が俺の前で構える。
両者がぶつかり合おうとした、その瞬間、アルトリアの無防備な背中目掛けて三本の矢が穿たれる。
「っ!?」
アルトリアが振り向きざまに二本の矢を剣で弾き、残りの一本を小手で弾き返す。
「何者だ!」
「慌てて射た矢だから勢いが弱かったとはいえ、そう簡単に弾かれると少し悔しいな」
そう言った者の姿は良く見えないが、ぼんやりと見える特徴的な耳、そしてその声には馴染みがあった。アーチャー、アタランテにして、
「無事か、マスター」
「姉さん!」
「だから私は汝の姉ではないと言っているであろう!」
俺のお姉さんキャラである。だから姉弟のスキンシップを行っても問題ではない。そう、肉親のスキンシップは健全であり、純潔の誓いに反する事はないのだから。
「マ、マスターって貴方、一体何人ものサーヴァントと契約してるの?いや、そもそも同じクラスが二人…?」
「その話は後で。取り敢えず今はこの状況を…。さて、セイバー」
「…なんだ」
「俺はお前の真名を知っている」
「…そんな虚言、信じられるものか」
「別に俺はここでお前の真名を言っても構わない。だが、そうなればここにいる敵マスターにも真名はばれてしまうけどね」
「………」
「ふむ。あくまで信じないと…」
台詞がどことなく悪役っぽくなってしまうが、この状況を打破するためには仕方ない。
「まず、息子の名前はモから始まる」
「!?」
「目に見えて狼狽したな。じゃあ次は…」
「何者だ!」
唐突に、アタランテが門に弓を構える。そこにいたのは、
「衛宮…?」
「衛宮君?」
「シロウ!」
俺だけでなく、遠坂も驚愕の声を上げる。そして、アルトリアの狼狽っぷりから、彼が彼女のマスターであることが窺える。
だが、これは絶好の機会と言えよう。
「…セイバー。矛を収めてくれないか」
アルトリアは歯を食いしばりながらも、戦闘態勢を解く。
「これは…?」
衛宮は混乱している。まあ無理もないことである。目の前にはサーヴァントが幾人もいるし、クラスメイトやら学校の憧れの的がいるのだ。取り敢えず、今俺はとるべき行動は
「取り敢えず衛宮。お前の家で話を聞かせてくれないか?」
『この状況でそんなこと言えるのは君くらいだと思うよ』