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【FGO】立香と愉快な仲間たちの第五次聖杯戦争/Novel by ハヤブサ

【FGO】立香と愉快な仲間たちの第五次聖杯戦争

5,927 character(s)11 mins

何番煎じかわからないけどどうしてもやりたかった。後悔はしていない。

■この作品が2017年07月14日付の[小説] 女子に人気ランキング 15 位に入りました。ありがとうございます。

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 ハッと目を醒ます。いや、この言い方は少し語弊があるかもしれない。何しろ今俺は、どこかの学校の教室でしっかりと授業を受けているからだ。これはアレだ。よくドラマとかアニメの探偵がよくやる『その時脳内に電流が走る――!』とかいうやつだ。
 辺りを見渡す。教壇に立つ先生の顔には心当たりがないし、座っている生徒の顔も初めて見る顔しかない。しかし、不思議なことに、生徒の顔を見ると、各々の名前や性格、個人差はあるが人間関係のような情報が脳内に流れ込んでくるような感覚を覚える。大体十人目の生徒の顔を見ると、途端に頭痛が起き、気持ちが悪くなってくる。どうやら脳内がキャパオーバーを起こしたようだ。
 その頭痛に耐えかね、頭を抱える。そもそもここは一体どこなんだ、俺はカルデアにいたはずだ、と考えていると、チャイムが教室に響き渡る。先生が授業の終わりを告げると、先程までの静寂はどこへやら、教室内は喧騒に満たされる。

「おい、藤丸。顔色が悪いぞ」

 あまりの混乱ぷりに呆然としていると、後ろから知らない声で名前を呼ばれる。振り返ると、顔の整った赤髪の男子生徒が心配そうな面持ちで立っていた。 授業中は俺の後ろに座っていただからであろう。俺はこいつの名前を知ら――

「ああ、衛宮」

 ない、と思ったが、俺の口からは躊躇いもなく、目の前の男子生徒の名前が零れた。
 なんだこの現象は。そもそも俺はちょっと前までカルデアにいたはずだ。何故こんな平和な学校で平然と授業を受けていたんだ。
 俺が無言で考えていたことを不審に思ったのか、衛宮は表情をさらに険しくする。

「本当に大丈夫か?保健室に行った方が…」
「いや、大丈夫だ。でもまあ、ちょっと顔洗ってくるよ」
「あ、ああ…」

 衛宮に軽く礼を言って、廊下に出た俺は、トイレや水道があるフロアとは逆の方向に。
 ともかく、今は情報収集が先決だ。
 しばらく歩いたところにある階段を上に昇る。屋上のドアの前で念のため誰もいない事を確認してからドアをくぐる。そこでも人目のない事を確認し、左手首に装備してある通信機の液晶を見る。『立香君早く出て』とか液晶に表示されていることから、あちらも大分混乱しているようだ。俺は一際大きいボタンを押し、口を開く。

「もしもーし。ロマーン」
『あー立香君でないね。これやばいね。もう立香君死んじゃってるかも。ああごめんなさい生きてます大丈夫ですほら見て生命反応はきちんとあるからだから清姫さん!?燃やさないで!?オルタちゃんも「竜の魔女」わざわざ使わなくて良いからああああ』
「ローマーン」
『こ!この声は!立香君!?立香君なのかい!?』
「ああ、早速で悪いけど今の状況教えてくれる?」
『あ、ああ…。それは構わないんだけど、君、何も覚えてないのかい?』
「うむ」
『そんな自信ありげに言われても……。じゃあ説明するよ?』




 カルデア内の時刻十四時二十六分。
 一人の青年が聖杯片手にカルデアの廊下を歩いていた。彼こそがカルデア唯一のマスターにして最後の希望、藤丸立香である。神経が図太く、基本何事にも動じない。ふと姿を目にするとバーサーカーと戯れて遊んでいるという、カルデア職員にとっては胃痛の原因を量産している人物だ。
 彼がカルデアの廊下を歩いていると、前方に、和気藹々と遊ぶ少女二人の姿が見える。ジャック・ザ・リッパーとナーサリー・ライムである。二人は外見を見る限り、年が近いと思われ、最近は良く一緒にいるところを目撃する。
 そんな二人を見て、立香は、ここ、カルデアに来る前は平和な学校生活を送っていたことを思い出す。ともに青春を謳歌した友、懐かしくもある教室、そしてちょっと気になってた女の子……そんなことを考えていると、自然に口から言葉が零れた。

「はぁ。もう一回学校行きたいなぁ」

 そう言うやいなや、前にいる二人がこちらを驚いた様子で見る。なにか変な事を言っただろうかと思った立香は首を傾げる。よく見ると、二人の視線は彼自身ではなく、彼の手元に集中していることに気付く。二人の視線を追うように下を見ると――

 ――聖杯が光り輝いてた。

「ええええええええええええええええええ!?」

 自分のそんな声が聞こえると同時、立香は意識を手放した。




『これが事の顛末だけど』
「て、事は聖杯は…」
『うん。一個無くなってるね』
「ちくしょう…」
『いやいやいやいや!今悔やむのはそこじゃないでしょ!?今君が大問題に巻き込まれるんだけど!?』

 ロマンが右手を左右に忙しなく振っている様子が目に浮かぶ。
 そこで、授業開始を告げるチャイムが鳴った。ここで授業を受けずに、名も知らぬクラスメイトたちに何か言われるのは面倒だ。

「ごめんロマン。一回戻る。あとで詳しい話を聞くから色々調べといて」
『うーん、この状況で立香君との通信を切るのは危険なんだけど……。まあ、わかったよ。任せといて』

 俺はロマンとの通信を切り、階段を一段飛ばしで駆け下りた。




 時は流れ放課後。空を見上げると空は朱色に染まっている。屋上から下を見下ろすと、帰路につく生徒の数がちらほらと見受けられた。辺りを見渡し、屋上に生徒の姿が無い事を確認すると、通信機の電源を入れる。

「もしもし、ロマン?」
『ああ、立香君。学校は終わったの?』
「うん。いやぁ結構楽しかったよ」
『この状況で普通に学校生活楽しめる君の神経は本当にすごいよね…。まあいいや。取り敢えずわかった事を話すよ』
「たのむ」

・ 


「え~と。状況を整理しよう」

 何分ほど彼の話を聞いていただろうか。ずっと屋上に立っているのも疲れるし寒いしで、今は校舎に入り、人気のない階段に座っている。
 屋上で話をするのはなんかかっこいいとか思ってた自分が馬鹿らしく思えてくる。


「俺が図らずとも聖杯に学校生活を願ってしまったせいで、俺は今、所謂平行世界にいると。そして、この状況を作ったのは聖杯だから、この状況を覆すのもまた――」
『――聖杯ってわけだ。調べてみたらそこは特異点Fと同じ年代、同じ場所だ。つまりそこで近いうち、もしくは今、聖杯戦争が行われているのかもしれない。で、あるならばそれはチャンスだ。立香君は聖杯が現れる時、そこにいてほしい』
「聖杯自体は回収しないのか?」
『うん。そこの歴史が狂ってしまうかもしれないからね。聖杯が現れたらそれはこっちでなんとかするさ』
「何とかなるのか…」
『何とかしてみせるよ。……え?……あぁ、やっぱりか…』

 ロマンのひどく暗い声を聞いて、何か悪い予感を覚える。そして、大概こういった予感は的中するものだ。

『うん。どうやらマシュを除く君との絆が最も強い六人のサーヴァントが、君を触媒としてそちらに召喚されたようだ』
「え、ええええ」
『うん。気持ちはわかる。だってあの六人だもんね。いや、常識人はいることはいるんだけど。大体問題児だよね』

 これはこの先どうなるかわかったことではない。空を染める暗闇が、不安となって俺の心も染めているように感じた。

『まあ出来るだけ早く合流してくれ。最悪、令呪をつかっ……待って。近くにサーヴァント反応が三つ。…一つが君のすぐ後ろにあるぞ!?』
「っ!?」

 ロマンの言葉に釣られ勢いよく後ろを振り向く。そこには

「ま・す・た・ぁ」
「なんだ清姫か……」
「はい。貴方様の清姫でございます」
『清姫ちゃん相手に「なんだ…」はないと思うんだ』
「最初に見つけたのが清姫で安心したよ」
『まあそれは同意するけどね。清姫ちゃん手放しにしてたらなにするかわかったもんじゃ』
「近くにいると一番安心するからね」
「まあ、旦那様ったら」
『嘘だろ……と、もう二つのサーヴァントは前方にいるようだ。危険にならない程度にちょっと見てみてくれ』
「前…?」

 前と言われたらもうそこは校庭だ。未だに電気のついている弓道場は若干気になるものの、校庭に目をやる。そこにいるのは――

「クー・フーリンとエミヤ…?」
「そのようですわね。あの二人はカルデアにいる御二方ではないのでしょうか…」
「ああ、おそらく。もうこの地での聖杯戦争は始まっているようだ」

 エミヤの後ろには人影があった。この人もまた見覚えは無いのだが、視界に入った瞬間、情報が頭に流れ込む。

「遠坂、凛……?」
「旦那様……浮気ですか…?」
「そんな馬鹿な。俺には清姫とあと数名しか目に入ってないよ」
「ウフフ。そうですかそうですか」
『……え、今のでいいの?』

 クラスは異なるにも関わらず、濃い情報が頭に入ってくるという事は学校内でもかなりの立ち位置にいる人物なのだろう。現に脳内ステータスには学園中の憧れの生徒と表記されている。
 ふむ。確かに良く見れば顔も整っているし、勝気そうな立ち振る舞いだ。納得できる。
 俺が顎に手をやりうんうん唸っていると、下でけたたましい音が鳴り響く。
 エミヤとクー・フーリンが激突したようだ。ロマンの話では聖杯戦争とは一般人の目の届かないところで行われるらしい。しかし、このような近隣騒音苦情不可避の爆音を鳴り響かせてたら、普通に一般人にばれるのではないか。そう思っていると、案の定、校庭の隅にある植木の陰に人影を発見する。

「あれ、衛宮じゃないか?」
「お知り合いですか?」
「いや、知り合いって言うか……クラスメイト、か?」
「まあ。でしたら旦那様のお友達でございますね」
「そうなのかねぇ……。……ッ!?」

 瞬間、とてつもない威力の魔力の放出を感じる。この感覚には覚えがある。

「刺し穿つ死棘の槍……!」

 その魔力の強さに思わず一歩後ずさりをする。そしてそれは、普段魔術とは縁もゆかりもない衛宮も同じのようで。

「誰だ!」
「っ!」

 衛宮が一歩後ろに下がった際、靴が何かを蹴ったのだろうか。やけに大きい音が響く。そしてその音をサーヴァントが聞き逃すことはなかった。
 クー・フーリンが猛スピードで衛宮を追う。遠坂に何か言われたエミヤもそれに続く。

「あ、赤髪の殿方はこの建物内に逃げていかれましたわね」
「な~んで建物内に行っちゃうんだ……」
「どうなされますか?」
「うむ…」

 一瞬思案し、決断する。

「ロマン。ごめん一回切る」
『え、ちょ、立香く』
「行くぞきよひー」
「はい」


 清姫と急いで階段を下る。二階分程下っただろうか、俺たちの他の激しい足音が聞こえる。清姫と視線を交わし、陰からそっと、廊下の方を窺う。
 そこには、膝に手を付き息を整えている衛宮と、
 ――背後で槍を構えているクー・フーリンだった。

「衛宮!後ろだ!」
「え……?」

 瞬間、崩れ落ちる衛宮。

「一足遅かったか……」
「ついてねぇな。一晩にガキを二人殺さなきゃいけないだなんてよ」

 そう言うと、クー・フーリンは弾丸さながらの速さで俺の懐に肉薄し、槍を突きさす――

「旦那様には指先一つ触れさせません…」
「ちっ、マスターか!」

 だが、そんなことは清姫が許さない。鋭い勢いで突き出された槍を右手に持つ扇で受け止める。清姫筋力Eだよねとは思うが、狂化EXは伊達ではない。 

「旦那様、下からサーヴァント反応です」
「う~む…。悪いなクー・フーリン。ちょっと急いでるから撤退してくれないか?」
「てめぇ。どこで俺の真名を……!あぁ?ちっ、わーったよ。…命拾いしたな、坊主。次あったら覚えとけよ」

 すごい剣幕で俺を睨んだクー・フーリンであったが、一言呟くと捨て台詞と共に霊体化した。なんだかよくわからないが僥倖。この隙に先程と同じ廊下からは陰になる場所へと隠れる。
 しばらく経って、一人分の足音が聞こえてくる。よく聞き取れなかったが小さな声が聞こえる。

「旦那様、サーヴァント反応が一つ消えました」
「こっちには気付かなかったのか…?」
「どうでしょうか……。一応、警戒はしておいた方がよろしいかと」
「おっけー。……何の光だ?」

 廊下の先から赤い光が目に入る。遠坂に気付かれないようにそっと見てみると、どうやらその光は彼女が手に持つペンダントから発生しているようだ。
 遠坂が何やら呪文のようなものを呟くが、それは光が消滅すると同時に終わった。ここからでは何がおこっているのかわからない。もうすこし詳しく見ようと身を乗り出すと、遠坂と目が合ってしまう。

「ねぇ。そこにいるんでしょう?こそこそせずに出てきたら?」

 これはどうするべきか。撤退の二文字が頭に浮かびあがるが、自分は聖杯戦争についてあまり知識がないし、そもそもこの街のことも良く知らない。そのため、強力な情報提供者が必要だ。エミヤを連れていたことから彼女は魔術師。おそらく、この街でもそこそこの有力者であろう。
 よって、ここは彼女に敵対の意思が無い事を伝え、どうにかこちら側に引き寄せるのが得策。
 そう考えた俺は、廊下に出て、両手を上げる。

「はいはい。えーと遠坂サン?ちょっと話を聞いて…」
「あなた衛宮君と……いえ、そんなものは関係ないわ…ガンド!」
「おわっ!?」
「ちょ!避けんな!?」
「避けるに決まってますよね!?……ガンド!」
「くっ!」
「清姫!一旦撤退だ!あの娘人の話聞くタイプでは無い!」
「かしこまりました」
「ちょ、お姫様だっこはちょっと」
「くっ!逃げる気!?」
「違う戦略的撤退だ」
「同じじゃない!」
「いいか、遠坂。これだけは言っておくが、俺は聖杯戦争に介入する気は無い。だから一回頭を冷やしておいてくれ」
「…どういうことよ」
「それはお前が頭を冷やしてからな!」

 俺がそう言うと、清姫は廊下の窓を壊し、外へ出た。

Comments

  • 残酷な天使のたじ

    清姫のお姫様抱っことか羨ましい

    January 6, 2019
  • meichi
    November 17, 2017
  • 刹月花
    July 22, 2017
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