light
The Works "ぐだ男とカルデアの皆が色々すれ違ってる話" includes tags such as "Fate/GrandOrder", "ぐだ男" and more.
ぐだ男とカルデアの皆が色々すれ違ってる話/Novel by K斗

ぐだ男とカルデアの皆が色々すれ違ってる話

3,540 character(s)7 mins

ーーいってらっしゃいとは、随分可笑しなことを言う。



!注意!

・某ネ申曲を元に書いているので度々聞き覚えのある表現が入ります。
・ぐだ男の名前は「藤丸立香」。
・捏造あり。
・ぐだ男が死にたがり(だった)。
・ネガティヴぐだ男。

※作者は運命系列に手を出して一年にも満たず、口調や設定の違い、矛盾点や辻褄が合わないなど、知識が不足している可能性があります。あらかじめご了承ください。

以下は本編後に読むことをお勧めいたします。





****



先輩は、少し里帰りするだけだと聞いていた。
人理を修復して、だけど度々出現する特異点の修復があるからとカルデアから離れられず、休む暇もない先輩へのご褒美だと。
魔術協会からの提案だったのでダ・ヴィンチちゃんやキャスターのギルガメッシュさんを筆頭としたサーヴァントの皆さんは随分と怪しんでいたけれど、良い機会だからと最終的には承諾することに。
カルデアには人理修復を協力してくれたサーヴァントの皆さんが殆ど残ってくれていましたから、ダ・ヴィンチちゃんを筆頭としたスタッフとサーヴァントの皆さんが協力すれば、数日くらいなら先輩のいない穴を埋めることができると。だけどいつまた特異点が出現するか分からないから、魔術協会から数人代理のマスターが派遣された。サーヴァントの皆さんは先輩以外をマスターとして据えることをあまり良く思っていないようでしたが、先輩へのご褒美のために仕方のないことだと、一部の方を抜かして従ってくれました。
代理のマスターがやって来たのは先輩が里帰りをする少し前。先輩がいなくなる前に、ある程度環境に慣れさせるためだと言って、当初の予定よりも早く派遣された。とはいえ、サーヴァントの皆さんはもちろん、ダ・ヴィンチちゃんもスタッフもその時点では仮契約を結ぶつもりはなかったのに、いつの間にか先輩を説得していて、結局カルデアにやって来たその日に仮契約を結んでしまった。
それから戦闘に慣れるためだと先輩のいないレイシフトを数回繰り返し、これまでとは違う全く噛み合わないスタイルに苛々しながらも、サーヴァントの皆さんは先輩を心配させないために表向きは代理のマスターと仲良くしてるように見せた。
先輩も、そんな皆さんの様子を見て安心していて、これなら里帰りをした先で気兼ねなく羽根を伸ばすことが出来ると、思っていたのに。

里帰りする先輩に「いってらっしゃい」と言うのは可笑しいと後から思ったけど、それでも先輩が帰って来てくれると信じて疑わなかったから、私はそう言って見送った。
「いってらっしゃい」と言われた人は、必ず帰って来なくちゃいけないんだーーそう教えてくれたのは、先輩だったから。
それなのに。

一ヶ月、二ヶ月ーーどれだけ待とうと、先輩はカルデアに戻って来なかった。





(根底にあるぐだ男愛され)

1
white
horizontal

サーヴァントとは、一時的に契約を結ぶ相手であり、永遠を縛る存在ではない。もちろん例外はあるだろうが、どれだけ良好な関係を築けていたとしても、サーヴァントとマスターの関係には終わりが来る。そしてサーヴァントは座に還ってしまえば、その時感じた思いも記憶も全て記録に成り下がる。だから仮に生きていく内にかつて自分が召喚し契約を結んだサーヴァントと偶然の再会を果たそうと、そのサーヴァントは既に自分が契約した存在とは全くの別物なのである。

ーーという認識を俺はしていた。魔術やら聖杯戦争やらの知識はまだよく分からない部分もあるけど、その認識に間違いはほぼないだろう。サーヴァントにとって、マスターとはたった一人を指す言葉ではない。だから俺がカルデアを離れると言った時、彼らは名残惜しそうにしつつも新しいマスターの存在を受け入れ、今現在良好な関係を築いている筈だ。
彼らは人理を守るためにカルデアに召喚され、カルデアと契約を結んでいる。共に人理を救うために一年間駆け抜けたけれど、別にマスターは俺じゃなくても良かった。ただ、たまたま俺だけしかいなかったから戦闘をスムーズに行う上で俺とパスを繋いでいた。仮に他のマスターがいれば、魔力の欠片もなかった俺なんかより既に収集されていた優秀な魔術師と正式な契約を結んでいたと思う。その証拠に、新しいマスターに替わってから何の問題も起きていない。所詮俺は一時凌ぎの存在でしかなかったというわけだ。


別にそれで良いのだけど。


ようやくだ。ようやく、俺は解放される。本当はいつ終わっても良かった。いっそあのとき終わってしまえば良かったとすら思う。そうして終わりに着いた先であの子に逢えたなら、それで良かったのに。
あの子に恥じない生き方をしなくちゃいけなかった。後を追うなんて以ての外。きっとあの子が怒るから、せめて胸を張れるようなことをして、その過程で終わりにしようとしていた。だからスカウトされた時、危険だと分かっていながらも二つ返事で頷いたのだ。レイシフト適正が百パーセントと言われても、肝心の魔術関連においてズブの素人であれば、物語でいう登場数秒で死んでしまう脇役モブのようにあっさり終われるのではないかと。実際爆発が起きた時は不謹慎ながら喜んだものだ。人類史がどうなるかなんて知ったこっちゃなかった。多分自分以外の誰か、所謂主人公とも呼べる存在が何とかするのだろうと。予想以上に早く終われることに喜んで、たまたま近くにいた、何故か出会ったばかりの自分を「先輩」と呼ぶ彼女からの小さなお願いを叶えてやって、これならあの子にも怒られないだろうと満足して目を瞑った、のに。

それがまさかまさかの大どんでん返し。人類最後のマスターになってしまって、一年という期間の中で焼却された人類史を取り戻さなければいけなくなった。嘘だろ、と絶望したさ。よりによって一人きり。せめてあと一人、自分以外にレイシフト出来る人間がいれば、そいつに全部任せて途中で離脱することも出来ただろうに。俺がマスター候補の中で唯一の生き残りだったから、拒否することは許されなかった。だけど最初はまだ希望を捨てていなかった。レイシフトに危険はつきもの。いくら頼れるサーヴァントが側にいようと、バックアップが完璧だろうと、魔術のまの字も知らない素人の采配ではいずれ限界を迎える。他の人には悪いけど、早く終わらないかと思っていたのに。
危険な場面は何度もあった。それこそ、もう駄目だと皆が諦めるようなことだって。それなのに、運命の女神とやらはいつだってこちらに微笑んだ。冬木でも、オルレアンでも、セプテムでも、オケアノスでも、ロンドンでも、アメリカでも、キャメロットでも、バビロニアでもーー最後の戦いの時だって、天は俺の味方をした。
ここにいては、終わる機会はどんどん遠ざかっていく。
電子の世界に行った時、一度自分が死んでいると聞かされて、その結果が納得できなくてもう一度やり直したのだと言われた時、俺がどれだけ絶望したか。
人類を救うという大役を果たしたのだから自分で終わらせてもあの子は怒らないのでは、とも思うが、カルデアにいる限り、俺がこのカルデアの唯一のマスターである限りそれは叶わぬ願いだろうと諦めていた。

そんな時だ。魔術協会からマスター権限の譲渡の話が届いたのは。




「これで良し、と」

少し大きめの鞄に必要なものを詰め込んで背負う。元々持ってきていた物が少なかったし、本当に必要なものはあの子とお揃いのシュシュだけだから鞄なんていらないけど、どうせ終わりにするのだから最後にあの子との思い出の場所を巡ろうと思い、何日か分の衣服と食料、それから魔術協会に渡された通帳を持って行くことにした。この通帳の中身は、人理修復を行なった報酬という名目の口止め料兼契約料である。そんなことをしなくても下手なことは言わないし、スムーズにマスター権限を明け渡すんだけどなあ、と思っていたが、断らなくて良かったと今は思う。何せほとんど身一つの状態でカルデアに来たから、金目のものはおろかお金自体持っていなかったのだ。あの子との思い出の場所はそう何個もあるわけじゃないけど、行くのにはそれなりのお金がかかる。特にあの教会がある島は本来立ち入り禁止で、ある程度のお金を積まなければ近づくことさえ出来なかった筈だから。

「あの線路はまだ残ってるかな……随分赤錆びていたから、壊されてるかも。それから三日月島の教会に……」
「先輩?」

どこから見て回ろうか、悩む俺に背後から声がかかる。間違える筈もない、あの子には及ばずとも大切な、今一番聞きたくなかった、後輩の声。ゆっくりと振り向けば、案の定マシュが何かの書類を抱きながら俺を見ていた。

「随分大きな鞄を背負ってますが……ああ、今日行かれるのですね」
「うん、そうだよ」
「先輩がいらっしゃらないのは寂しいですが、このマシュ・キリエライト、デミ・サーヴァントの力はなくともしっかりカルデアを守ってみせます!なので安心して先輩は行ってきてください!」

書類を片手に拳を握ってみせるマシュは嬉しそうな笑顔を浮かべている。
安心しろ?何に対して?俺はもうカルデアとは関係がないのに。もう此処へ戻って来ないというのに。嬉しそうに、楽しそうに。なんだ、そんなに俺がいなくなることが嬉しいのか。あんなに先輩先輩と慕っていたくせに、結局それも上っ面だけだったのか。
そんなことを考えてしまう自分が嫌で、そっと目を逸らした。
ーーああ、だから会いたくなかったのに。


「じゃあ、もう行くね」
「はい!いってらっしゃい、先輩!」

手を振ってくれるマシュに振り返すことなくその場から立ち去った。


早く、早く、これ以上誰にも会わない内にカルデアから抜け出したい。もう、これ以上惨めな思いなんて、したくない。
本当は、少しだけ嫌だった。彼らが俺以外の人間をマスターと呼ぶことが、俺以外の人間がカルデアのマスターになることが。頭ではサーヴァントの特性も、マスターとの関係も理解しているつもりだった。だけど、それを受け入れられるかと言われれば話は別だ。あの爆破が起こらず、最初から何十人ものマスターがいたならきっとこんなこと思わなかっただろうに。閉鎖された空間で一年間も共に過ごしたせいで無駄な感情を持ってしまったのだ。俺の特別は、あの子だけで良かったのに。
でも、こんな葛藤ももう終わりだ。ここを離れれば、こんなことで悩む必要も誰かを的外れに妬むことだってなくなる。自分をこれ以上、嫌わないで済む。その一心で歩き続けた。

気づけば出入り口の前に来ていた。扉の横にある認証システムが作動し、データを読み込むことで扉が開く。外は奇跡的にも吹雪が止んでいて、一年前に来た時と比べれば随分楽に山を下れそうだ。ここから足を一歩でも外に出せば、もう俺がカルデアと関わることは二度とない。それで良い。それで良い、筈だ。なのに足が動かないのは何故だ。まさか、まだ未練があるとでも言うのか。違う。違う。未練なんてない。俺はここを離れて、それで、ようやく終わらせに行くのだから。迷いを断ち切るように首を振って、気持ちを切り替える。
そうだ、俺はあの子に会いにいくのだから。


「…………さようなら」

誰かが聞いているはずもないのに、そう呟いて今度こそ足を踏み出した。


ーーああ、それにしても。

Comments

  • family Fukumoto

    これってみんなは帰ってくると思ってる?

    July 11, 2024
  • たき
    May 20, 2024
  • 停止
    April 17, 2024
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
Popular illust tags
Popular novel tags