「調子はどうだい?」
コツコツと。
いっそ清々しいくらいに嫌味な高級感の靴音は次第に近づいてくる。
『調子はどうだい?』そんな事を聴きに来るほどこいつは暇なのだろうか?いや、それとも『余裕』を持っているからなのだろうか。
「そうだね。こうもきつく縛られてはさすがの私も、文字通り手も足も出ない。」
「それはそれは。悪いね………でも、君を縛るにはそれぐらいじゃないと効き目がない」
私の体に巻きついている物。『天の鎖』は神霊クラスの怪物でさえ動かさないほどの遺物。
『冠位』を持つキャスターの私でさえ、完璧に封じ込み自由を許さない。この鎖が外れるのであれば私は目の前の敵を殺すだろう。
『感情』など持たない私だが、この人間だけは許して置けない。
「それにしても………君は本当に強いな。俺の術が効かない英霊なんて数える程しかいないのに。」
「私は仮にも『グランドキャスター』だからね。この鎖は外さなくても君の呪術を跳ね返すぐらいは簡単にできるのさ。」
それでもここから動けないのだけれども。
「はっ!笑わせるね。…………楽しみだよ」
「………」
「僕の令呪が君を服従させた時、君はどういう顔をするんだろうね?」
そう、微笑みながら話す男の顔はとても醜かった。
見慣れたはずのその笑顔はとても気味の悪い笑顔になってしまっている。
ニタニタ、と。
心の底から愉快でたまらない、とでも言いたそうな顔と態度でこちらの神経を逆撫でして来る。
こちらに気に入られようとは微塵も考えていないのが分かる。
「君は確かに世界最大にして最強クラスのキャスターだ。だがね?」
目の前の男は続ける。
「君は『令呪に逆らえない英霊』の一人でもあるんだよ?」
それこそが君の唯一の弱点だ。
男はそう言うと、足取り軽くスキップでこの部屋から去っていった。
アレの令呪は未だ私を従えるほどの力は持っていない。
恐らくだが『グランドアサシン』も彼には従わないだろう。
それでも。懸念すべきことは山ほどある。
例えばそれは『アレの体がマスターのものだったり』。『殺してしまえばマスターの居場所がわからなかったり』。
『カルデアの八割のサーヴァントは既に操られてしまっていたり』。
マスターの居所は特定できず。
マスターの居場所は守ることができず。
アレがマスター『藤丸立香』として生活このカルデアで。
私は後悔を噛み締める事しか出来なかった。
魔神王?メリオダス?