朝鮮哲学
朝鮮哲学[3][4](ちょうせんてつがく、朝鮮語: 한국철학、英語: Korean philosophy)は、朝鮮半島における哲学。東洋哲学の一部。類語に朝鮮思想[4]、韓国哲学[5]。
伝統思想
[編集]朝鮮哲学の歴史は朝鮮神話や巫俗(シャーマニズム)にさかのぼる[3][6][7]。
朝鮮三国時代から高麗期には、中国から儒教・仏教・道教が伝来した(朝鮮の儒教、朝鮮の仏教、道教#韓国)。特に元暁・義湘・義天・知訥らの仏教哲学や、「花郎道」が栄えた[3]。
李氏朝鮮では、李滉(李退渓)の四端七情論、李珥(李栗谷)の理通気局説といった朝鮮朱子学のほか、徐敬徳(徐花潭)の気一元論、李瀷(李星湖)や丁若鏞(丁茶山)の実学が起こり[3][8]、陽明学[9]、清朝考証学[8]、西学(キリスト教)も受容された[10](朝鮮のキリスト教、李氏朝鮮の学問)。李氏朝鮮末期には開化思想や東学(天道教)が起こった[3]。
「中国哲学」や「日本哲学」と同様、伝統思想を西洋由来の「哲学」という言葉で呼んで良いのか、朝鮮に固有の哲学はあるのか、という議論もある[11][12]。
近現代
[編集]日本統治時代、安浩相ら欧米留学生や京城帝国大学、雑誌『開闢』などを介して西洋哲学が紹介された[13]。(西洋哲学の受容は李氏朝鮮末期の兪吉濬らにさかのぼる[13]。) また高橋亨・藤塚鄰・阿部吉雄ら日本人朝鮮学者が伝統思想を研究した[14]。
戦後韓国の代表的哲学者として朴鍾鴻が挙げられる[15][16][17]。朴鍾鴻はハイデガーや論理実証主義を研究するとともに[18][19]、京都学派の影響のもと「韓国哲学」の構築を試みた[15]。
韓国語の哲学用語は「哲学」「理性」「存在」など日本と同様の訳語(漢字語)が使われている[20]。一方、柳永模や咸錫憲は日常的な固有語による哲学を試みている[21]。
21世紀の韓国には、哲学科のある大学は50校ほどあるが、講義の過半数は西洋哲学であり東洋哲学・韓国哲学は少ない[22]。科学哲学からポストモダニズムまで広く研究されている[19][23]。
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)では、チュチェ思想(主体思想)が中核思想であり[24]、チュチェ史観・唯物史観により伝統思想が研究されている[25][26]。
関連項目
[編集]脚注
[編集]- ^ 金 2008, p. 126;153.
- ^ 小倉 2017, p. 416.
- ^ a b c d e ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典『朝鮮哲学』 - コトバンク
- ^ a b 小倉 2020, p. 223.
- ^ 金 2008.
- ^ 小倉 2017, p. 43.
- ^ 金 2008, p. 20.
- ^ a b 小倉 2020, p. 234.
- ^ 小倉 2017, p. 208.
- ^ 小倉 2017, p. 225.
- ^ 金 2008, p. 3.
- ^ 朝倉友海『「東アジアに哲学はない」のか 京都学派と新儒家』岩波書店、2014年。ISBN 9784000291378。「はじめに」
- ^ a b 姜 2005.
- ^ 李 2016, 第2部1-3章.
- ^ a b 郭旻錫. “《人物評伝》韓国哲学という未完の夢:朴鍾鴻考|韓国|アジア・マップ Vol.03|アジア・日本研究所|立命館大学”. www.ritsumei.ac.jp. 2026年3月27日閲覧。
- ^ 小倉 2017, p. 408.
- ^ 金 2008, p. 31.
- ^ 崎濱紗奈. “【報告】UIA THE LECTURE 第2回 | ブログ”. 東アジア藝文書院 | 東京大学. 2026年3月27日閲覧。
- ^ a b 姜 2005, はじめに.
- ^ 姜 2005, p. 178.
- ^ 小倉 2017, p. 404-407;417.
- ^ 金 2008, p. 17.
- ^ ゲンロン編集部. “韓国で現代思想は生きていた(1) 柄谷行人はいかにして韓国の知的スターになったか|安天”. webgenron.com. 2026年3月27日閲覧。
- ^ 小倉 2017, p. 334.
- ^ 姜 2012, p. 579.
- ^ 小倉 2020, p. 235.
参考文献
[編集]- 姜在彦『朝鮮儒教の二千年』講談社〈講談社学術文庫〉、2012年。ISBN 978-4062920971。
- 姜栄安 著、鄭址郁 訳『韓国近代哲学の成立と展開』世界書院、2005年。ISBN 978-4792720827。
- 金教斌 著、金明順 訳『人物でみる韓国哲学の系譜』日本評論社、2008年。ISBN 978-4-535-58516-4。
- 小倉紀蔵『朝鮮思想全史』筑摩書房〈ちくま新書〉、2017年。ISBN 978-4-480-07104-0。
- 小倉紀蔵 著「近代朝鮮思想と日本」、伊藤邦武;山内志朗;中島隆博;納富信留 編『世界哲学史 5』筑摩書房〈ちくま新書〉、2020年。ISBN 978-4-480-07295-5。
関連文献
[編集]- 李暁辰『京城帝国大学の韓国儒教研究』勉誠出版、2016年。ISBN 978-4-585-21031-3。
- 金哲央「解放後50年間、朝鮮南北における思想史研究の動向(上)」『東アジア研究』第37号、大阪経済法科大学アジア研究所、2003年。 NAID 40006029816。
- 小川晴久・張践・金彦鍾編『日中韓思想家ハンドブック 実心実学を築いた99人』勉誠出版、2015年。ISBN 978-4-585-20037-6。
- 川原秀城『朝鮮朱子学 退渓心学と栗谷道学』東京大学出版会、2024年。ISBN 9784130101592。
- 中純夫『朝鮮の陽明学 初期江華学派の研究』汲古書院、2013年。ISBN 9784762929946。
- 宮嶋博史責任編集『原典朝鮮近代思想史 1 伝統思想と近代の黎明――朝鮮王朝』岩波書店、2021年。ISBN 978-4000268158
外部リンク
[編集]- Korean Philosophy - スタンフォード哲学百科事典「朝鮮哲学」の項目。