江戸時代から明治にかけて、蝦夷地(えぞち)と上方を結んだ北前船は白い帆をあげ、日本海や瀬戸内海を走り、立ち寄る港に物資のみならず、経済や文化まで運んだといわれています。そんな北前船になぞらえた「客船ぱしふぃっくびいなす 令和の北前航路 神戸×金沢連携記念」クルーズが9月に行われました。
■連載「クルーズへの招待状」は、クルーズ旅の魅力や楽しみ方をクルーズライターの筆者がご紹介します。
神戸の夜景、そして瀬戸内の架橋くぐり
出発は神戸港。羽田から飛行機で神戸空港に飛び、乗船前には、今年の4月に誕生した「リムジンリキシャ」に乗り、神戸のウォーターフロントを散策。神戸港中突堤旅客ターミナルでPCR検査を受けたのち、ぱしふぃっくびいなすに乗船しました。19時30分、宵闇が迫る港には、きらびやかなポートアイランドのライトアップに加え、神戸のシンボル・山麓(さんろく)電飾も灯(とも)りました。その一つは、堂徳山に浮かび上がる北前船のイルミネーション。かつて兵庫の港の振興に寄与した北前船の電飾に見送られて、ぱしふぃっくびいなすは令和の北前航路にこぎ出したのです。
今回のルートは、瀬戸内海を通り、関門海峡を抜け、日本海を走り金沢へと向かうコース。加えて、令和の北前航路クルーズでは、現代ならではの演出もバラエティー豊か。たとえば、海にかかる近代建築・大橋をたくさん通過するのも趣向の内で、出航した夜には、まず光り輝く明石海峡大橋をくぐり、早速その醍醐(だいご)味を味わいました。
翌日は、抜けるような秋晴れの中、瀬戸内海航行を楽しみました。700以上の島が浮かぶ多島美でも有名な瀬戸内海は、よく「日本のエーゲ海」とたとえられますが、今日は本場に勝るとも劣らない麗しさ。岡山県と香川県を結ぶ瀬戸大橋は、世界最長級の鉄道併用橋でもありますが、ちょうど列車が橋を通過するところを海から見上げ、車窓に向かい手を振りました。
広島県と愛媛県を結ぶしまなみ海道は、七つの橋で構成されています。その中で一番愛媛県側の来島海峡大橋も通過しました。来島海峡大橋は総全長約4.1キロ、世界初の3連つり橋で、橋脚のたつ馬島の横を通る時は手の届きそうな近さに興奮しました。
瀬戸内海を航行すると、大橋の存在が、本州と四国、その間に浮かぶ島々を結ぶ「架け橋」であることを実感します。
船上で神戸と金沢の文化や食を満喫
実は、このクルーズは今年3月に締結された「神戸港と金沢港のクルーズ振興に関する連携協定」を記念した船旅でもあり、船上では、両港の魅力を伝えるイベントも盛りだくさん。J.S.A.認定ソムリエ齋藤廣太氏による「神戸ワインレクチャー」では、神戸で生産されたブドウ100%で作るメイドイン神戸のワインがあり、そのなかの「ベネディクシオン2016」はG20大阪サミットで採用されたことを知りました。
金箔(きんぱく)生産量日本一の金沢からは、金箔職人寺本健一氏が乗船し「金沢金箔レクチャー」。さらに、私は「金箔貼り体験」にも挑戦し、兼六園のことじ灯籠(とうろう)が金色に輝く丸皿を作りました。
夜のショーは、ジャズの町神戸から「杉山悟史カルテットfeaturing末元紀子」のジャズライブ。杉山氏は朝の連続ドラマ「カムカムエヴリバディ」にも出演したピアニストで、ドラマにちなんだ「On the Sunny Side of the Street」などを演奏し、エキゾチック港町神戸にふさわしい粋なジャズナイトに酔いしれました。
一方、金沢からは、和楽器ユニット「いのあ」。藤舎眞衣(とうしゃ・まい)氏の笛、北村雅恋氏の箏、岩城博之氏の鳴物演奏によるみやびな調べを聴きながら和の世界に浸りました。
2日目の夕食は、神戸×金沢連携記念の特別ディナー。「瀬戸内協奏曲 金の調べ」と題し、乗客には食用金箔の小箱が配られました。これを料理に振りかけると、小豆島産ハモのコンソメも、香川産オリーブ牛のローストも黄金色に輝き、一段とゴージャスに。何より、竹製ピンセットで金箔をつまみ、パラパラ振りかけているとだんだん「金満家」になっていくような不思議な気分が面白く、注文した神戸ワイン「ベネディクシオンルージュ」にも振りかけると、深いワインレッドにきらめくゴールドがちりばめられ、その美しいコントラストに見とれました。令和の北前航路を行くぱしふぃっくびいなすでは、神戸と金沢が食や文化を通しても連携したのです。
レザーアートミュージアムと北前船ゆかりの美保神社
3日目の朝は、隠岐諸島周遊。船上から赤く色づいた知夫里島(ちぶりじま)の赤壁(せきへき)を眺め、西ノ島の絶壁・摩天崖を見上げ、波穏やかなカルデラを航行。島々の織り成す絶景を楽しみました。